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Come Si Conserva(保存と管理)

     ”Annata 2000(2000年収穫)”

 という表記が、オイルのボトルに見られる時、どう言う反応を示しますか?ワインのように熟成をさせるため納戸に飾りますか、それともあまり意味のないものだろうと、タカを括りますか。そう、つい最近まで、記入される事なく(何処かしらに賞味期限は書いてありましたが)、商品化され続けていた項目なので、多少の困惑を生むものですが、本来なら必須事項であったことです。
 オリーヴ・オイルとは、ワインに例えるならば、フレッシュな仕上がりを愉しむフルーティー・タイプの白ワインのようなもので(多少の瓶内熟成は必要とされますが)、決して、カンティーナの奥にしまい込む事で、その風味を高めたりはしません。むしろ、日に日に酸化していってしまうために、色は薄れ、香りが飛び、最後にはなんの変哲もないオイルに成り下がってしまうのです。オイルのタイプによって若干の差はありますが、実際上の賞味期限は2年以内とされ(その後も決して毒付くものではありませんが)、更に、本来の風味を愉しむ為の理想的な観点から言うと、1年以内に消費すべきと云われています。イタリアでは毎年、その収穫を迎える11月になると、各地のフラントイオからは、咽返るほどの”オリーヴ香”が漂い、田舎では、絞りたてのまだ澄み切っていない乳白色を帯びたエメラルド色のオイルを、トーストしたパンと共に愉しみますが、それは現地ならではの特権。正しい商品化を行うには、フィルター作業を行い、澱等の沈殿物を除去する必要があって、小売メーカーや輸入業者に流れるのは、早くても年明けの2,3月になります。ところが、収穫時のフレッシュ感を祀り上げることによる”濁ったオイルは絞りたて”という誤解が時折消費者の意識に見られるため、それに付け込む業者がある悲しい事実もあり、フィルター作業をしていない、沈殿物まみれのオイルを未だに市場で見かけます。こうしたオイルは、その沈殿物が品質の低下を早め、酸化、そして風味の曖昧さを及ぼしてしまうために、その購入は避けるべきであり、本来なら、売られるべきではない商品です。”フレッシュ感が大事”とは言え、冷暗所に保存していれば品質の低下は遅いので、各種フレッシュ・チーズのようにうるさく固執すべきものではありませんし、実際リストランテでも、調理用には古い物(つまり前年)があれば、それから使用しています。しかし、ここで述べたことは、この世界に誇るオリーヴ・オイル生産国イタリアでは、当たり前のことで、問題は、そういうオリーヴ・オイルの特性と言うものが、生活文化と共に馴染んでいない文化圏の市場へ流れるときに、注意が必要ということ。それが、近年やっと、オリーヴ・オイル産業の悪質業者や低品質商品を防ぐための革命的な新体制”DOP・IGP・BIOL指定”により、生産期日の記入が義務付けが行われるようになりつつあり、文頭に記したような”Annata 2000”という見慣れぬ数字が、ボトルを飾るようになったのです。色、香り、そしてテイストを愉しむ”ただの油分”を超えた芸術的作品”エクストラ・ヴェルジネ・オリーヴ・オイル”。生産者の意識、意欲、そして消費者の理解がその品質の向上を成し遂げる大事な要素であり、”ただクチに入れば良い”物ではなく、”文化交流を愉しむ為の”アーティスティックな料理を彩る魔法の調味料として、その真価が現れてくるのでないでしょうか。