熾亜「はぁ・・・」

美央「私達、これからど〜なるんだろう・・・」

ミカ「ふ、二人とも・・・そんな悲観せずに・・・(汗」

熾奈「きっと・・・きっともうすぐだからっ! ・・・たぶん・・・」

熾亜「お姉ちゃんに任せたの間違いだったかも・・・」


私達は今、姉"熾奈"の運転する車の中にいる。
事の起こりは、終業式にさかのぼる。


美央「夏休みどうする〜?」 熾亜「どうするって?」 美央「いやさ、せっかくの休みなんだし・・・」 ミカ「課題もやらなくては・・・」 美央「ダメ! 今は言わないでっ!」 美央がミカさんを制止する。 熾亜「ん〜・・これといって・・・」 美央「そうだ!」 美央が何か思いついたみたい。 美央「せっかくなんだし、みんなで旅行なんてどう?」 熾亜「旅行か〜・・・でも、中学生だけで?」 ミカ「危険だと思いますけど・・・」 美央「ちょっとくらい大丈夫よ。社会勉強の一つってコトでw」 熾亜「まぁ・・・いっか。うん、行こう!」 美央「ということで、このあと熾亜の家に集合ね。」 熾亜「え? ウチ!?」 美央「うん。だってミカさんも居るんでしょ? だったら、私が出向いたほうが効率的じゃないw」 ミカ「たしかにそうですね・・・」 美央「熾亜の家で旅行の計画立てよっ♪」 熾亜「わかった。 じゃぁまた後でね〜」 美央の一言から始まった、私達3人の旅行計画。 その美央はというと、たくさんのガイドブックやパンフレットを持って家に来た。 "どうする〜"なんて言ってたくせに、はじめから行く気マンマンだったみたい。 美央「でね、この海がね〜、すっごい穴場なんだって〜w」 熾亜「でも、これだけ大々的に載ってたら、穴場じゃないんじゃ・・・」 ミカ「こちらのパンフレットは・・・?」 美央「あ〜・・・そっちはパスッ! ツアーだと自由に動けないでしょ?」 ミカ「はぁ・・・」 3人でわいのわいのやっているところに、ヒョッコリ顔を出した人が一人・・・ 熾奈「お〜っす、なんか騒がしいな。」 熾亜「あ、お姉ちゃん」 美央「お邪魔してま〜す」 熾奈「はいよ〜」 私の姉、"熾奈"。 すでに結婚して家を出てるんだけど、里帰りってことで2〜3日前から家に来ている。 大雑把な性格で、ミカさんのことに関してもほとんど何も聞いてこなかったので、 適当にごまかしておいた。 熾奈「で、なんだい? 旅行?」 熾亜「うん。みんなで行こうってw」 ミカ「このバスを使うより、こっちの電車にしたほうが融通は利きそうですね。」 美央「でも、そうすると高くつくし・・・ホテル代も考えなきゃ。」 熾奈「ぁ〜、横から口出すようで悪いけどさ。」 姉が首を突っ込んでくる。 熾奈「いいアシがあるよ。」 美央「アシ・・・?」 熾奈「移動手段! ほれ、ココにw」 自分を指差す姉。 そういえばマイカー持ちだ。 熾亜「え? 車出してくれるの?」 熾奈「そーゆーこと。中坊3人じゃ何かと不安だしねぇ・・・保護者も兼ねてw」 熾亜「見張り役・・・?」 熾奈「大丈夫だよ。アンタらのやることにはチャチャ入れないって。    せっかくの旅行だろ〜?」 熾亜「さっすがお姉ちゃんw」 熾奈「まぁ、アタシもここ何年か旅行なんて行ってないしねぇ・・・    混ぜてもらうついでに、さw」 美央「そういうことなら、大歓迎ですよ〜♪」 ミカ「これで、少しいい宿が取れますねw」 美央「そうだね〜w」 熾亜「じゃぁさ、いっそ海近くのココにしちゃおっかw」 美央「いいねいいね〜w それ賛成っ!」 ミカ「海に近いに越したことはないですしね。」 熾奈「おいおい、ちょっとハシャぎすぎじゃないかぁ? あんまハメはずすなよ?」 熾亜「そんなコト言ってぇ、実はお姉ちゃんもワクワクしてるんじゃないの〜?」 熾奈「そ、そりゃそうだけどさ・・・ホラ、いちおう保護者って役割もあるんだし・・・」 熾亜「はいはい、そーいうことにしておきますかw」 熾奈「そーいうことって、あのなぁ・・・ったく。」 姉が加わったことで後ろめたいものも無くなり、予算にも幅がきくようになった。 ここまでは、怖いくらいにイイカンジだった。 それがまさか、こんな落とし穴があるなんて・・・ 旅行当日の朝、予定時間より早くみんなが集まったので、ちょっと早目に出発した。 熾奈「お〜し、準備いいな〜? 忘れモンないな〜?」 3人「は〜いっ!」 熾奈「じゃ、出発〜!」 快調な出始めだったけど、さすが夏休み・・・道路は渋滞。 美央「ちっとも進まないね〜・・・」 熾亜「しょうがないかぁ・・・」 ミカ「そうですねぇ・・・」 渋滞を予想していなかった私達の予定は、早くも崩れかけていた。 姉もシビレを切らしたらしく・・・ 熾奈「っしゃ、ちょっくら抜け道〜!」 熾亜「お姉ちゃん! 大丈夫なの!?」 熾奈「なんとかなるって!」 ・・・その結果・・・ 美央「ここドコ・・・?」 熾奈「いや〜・・・例のホテルの近く・・・のハズなんだけど・・・」 ミカ「地図は・・・ないのですか?」 熾奈「ない!」 熾亜「お姉ちゃん・・・ここさっきも通ったよ〜?」 熾奈「こっちだ! こっちに行けば元の道に出るハズ!!」 ・・・姉は方向音痴だった・・・
結局、近くのコンビニで道を聞いてホテルにはついたものの、旅行一日目の予定は丸つぶれ。 美央「はぁ〜・・・」 熾亜「ぅ〜・・・」 ミカ「ふ、二人とも元気出してください・・・(汗」 元気を出せというほうがムリである。 熾奈「いや〜・・・悪い悪い。」 熾亜「お姉ちゃん・・・」 悪びれない姉の口調に、苛立ちを感じる。 しかし・・・ 熾奈「お詫びと言っちゃなんだけど、宿代1日分オゴるよ・・・」 美央「・・・えっ?」 ミカ「いいのですか・・・?」 熾奈「元はといえば、アタシのせいみたいなモンだしねぇ・・・」 熾亜「お姉ちゃん、そんなお金あるの?」 熾奈「アタシを誰だと思ってんだい?」 熾亜「おね〜ちゃん、ありがと〜〜!!」 熾奈「あは、あははははは・・・」 カウンターで姉はサイフを開けてため息をついていた。 こうして、"1日ずれて"予定どおりに行動することができた。 姉もヘタしたら私達以上にはしゃいでおり、気がふれたかと思うほどだった。 それが予定外出費の憂さ晴らしなのは、言うまでも無い。 熾奈「よっし、そんじゃ帰るよ〜? 忘れモンないね〜?」 3人「は〜い!」 帰りも渋滞に飲み込まれ、車は思うように進まない。 熾奈「っちゃ〜・・・」 美央「動かないね〜・・・」 熾亜「そうだね〜・・・」 熾奈「・・・っしゃ! ここで抜けみ〜・・・」 熾亜「ダメ〜!!」 ミカ「や、やめておいたほうがよろしいかと〜・・・(汗」 美央「今度は家に帰れなくなっちゃいますよぉ・・・」 熾亜「そーなったらお姉ちゃん、誘拐犯だね。 ウンウン。」 熾奈「チェ・・・わぁったよ、もう。 ハァ・・・」 そんな、私達の夏のひとときだった。

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