担任「よ〜し、全員に回ったな? まだ見るなよ〜」


いよいよ試験当日。
泊まり込みでしっかり勉強したんだから、きっと大丈夫。
とはいえ、いざ直前ともなると、かなり不安なわけで・・・


熾亜(お願いします お願いします お願いします・・・)

担任「よし、始め!!」


ザッ!

みんな一斉にプリントをひっくり返す。


熾亜(うあぁぁぁぁぁ・・・)


あれだけしっかり勉強した。
テスト前に見直しもした。
だけど・・・どうして始まると同時にコロっと忘れてしまうのだろう・・・

テスト期間中、ずっとこんな調子だった。
結局、不安要素が消えないままテスト返しも終わり、一人ずつ点数一覧表が手渡された。


熾亜「美央〜、どうだった?」

美央「思ったより良くなかったよ〜・・・」

ミカ「あらあら・・・」

熾亜「む・・・なんかミカさん余裕ねぇ・・・」

ミカ「そ、そんなことは・・・!」

熾亜「美央・・・!」

美央「うん・・・!」

ミカ「私もですかぁ〜〜!?」

3人「いっせ〜の〜でっ!!」


バンッ!


熾亜「・・・・・・」

美央「・・・・・・」

ミカ「あの・・・」

熾亜「なんで! どーしてぇ!?」

ミカ「どうして・・・と言われましても・・・」

熾亜「ミカさん、私達と一緒に勉強したよね? そうよね?」

ミカ「はい、たしかにそうですけど・・・」


結果・・・私と美央は平均点。
ただ、ミカさんだけは飛びぬけてよかった。


美央「同レベルだと思ってた数学ならまだしも、ミカさんがあれほど苦手だった
   語学系まで完敗とは・・・」

熾亜「・・・納得いかないわぁ〜・・・」

ミカ「たまたま・・・そう、たまたまですよ(汗」

熾亜「たまたま・・・ねぇ。」

ミカ「それに、通知表はテストだけで決まるわけではありませんし・・・」

美央「それはそうだけど・・・ミカさん、生活態度もいいからなぁ・・・」

ミカ「あぅ・・・」

熾亜「ま、落ち込んでてもしょうがない!」

美央「それもそうね。」

熾亜「夏休みまであと少し! それまでマジメにやろ。」

ミカ「良い心がけですねw」

熾亜「とりあえず今日は・・・パーっと遊ぼっ!」

美央「そうね!」

熾亜「もちろん・・・」


私と美央はゆっくりミカさんの方を向く。


2人「ミカさんのオゴリで・・・ねw」

ミカ「え、えぇぇぇぇ!? 私ですかぁ!?」

美央「なにかご不満・・・?」


美央の視線が、いつになく怖い・・・


ミカ「いや、その・・・やはりここは公平に・・・」

熾亜「あぁ、天よ・・・この学力の不公平を、他のことで埋めて公平化をはかろうという
   私は、愚かなのでしょうか・・・」


私は天に祈るような格好で、そう言ってみた。


ミカ「あぁ、もう・・・わかりましたっ!」


私と美央はニヤけ顔を突き合わせて


2人「いぇ〜〜〜いっ」

熾亜「さっすがミカさん。 話がわかるぅ♪」

美央「で、ドコ行く?」

ミカ「・・・お任せします。 私はこの土地はあまり詳しくないので(涙」

熾亜「じゃぁさ、駅前のドーナツ屋で軽く腹ごしらえした後、ボウリングなんてどう?」

美央「いいねいいね〜♪ ボウリングなんて久しぶり〜w」

ミカ「あの・・・それぜんぶ私の・・・?」

熾亜「かわいそうだから、ドーナツ屋はワリカンにしてあげる。」

美央「熾亜、やっさしぃ〜〜!」

ミカ「はぁ・・・ありがとうございます・・・」


ミカさんの顔が、いつになく沈んでいたのは言うまでもない。


美央「しっかし、アレよね〜・・・」


美央が、ドーナツを頬張りながら喋る。


熾亜「ん〜?」

美央「ミカさんって、完璧超人?」

ミカ「え・・・?」

美央「だってさ〜、ゲームほとんどやったことないのに、私達より強いし・・・」

熾亜「カラオケだって思わず聞きほれちゃった・・・」

美央「で、テストもコレでしょ?」

ミカ「あ、あははははは・・・」

熾亜「まさかボウリングも・・・なんてことないよね?」

ミカ「ボウリングというのも初めてなので、とても楽しみなのですが・・・」

美央「ですが?」

ミカ「いえ、なんでもないです・・・ハァ・・・」


"ミカさんのオゴリ"っていうのが、相当効いてるみたい。


美央「よっし、じゃぁそろそろ行きますか〜!」

熾亜「行かれますか〜!!」

ミカ「はい。」


かくして3人でボウリングに行ったんだけど・・・

ミカ「それでは・・・!」

熾亜「がんばれ〜!!」

ミカ「え〜〜い!!」


ゴッ!

おかしな音が聞こえたと思ったら、ミカさんはその場にうずくまっている。
ボールはというと、弱々しく転がってガーターに落ちた。


美央「ちょ、ミカさん・・・?」

ミカ「・・・・・!!(涙」


投げるときにすっぽ抜けて、自分の足の上に落ちたらしい。


熾亜「だ、大丈夫!?」

ミカ「はいぃ・・・なんとか・・・はぅ・・・」


ミカさんの回復を待って、ゲーム再開。


美央「うりゃぁぁぁぁ!」

熾亜「美央〜! ナイススペア〜!!」

美央「えへへへへw」


そこそこ順調に進んでいた。
・・・ミカさんがたまにやらかすコト以外は。


熾亜「ミカさ〜ん、しっかり〜!」

ミカ「はい、行きます!!」


ぶぉん!


美央「・・・え? きゃぁぁぁぁっぁ!!」


なんと、ミカさんの投げたボールは私達に向かって飛んできた。


ミカ「あぁぁぁぁっ す、すみませんんんん!!」

美央「ここここ・・・殺す気!?」

熾亜「ミカさん・・・今のはかなりコワいから・・・」


その後も、足がもつれて転んだり、ボールが手から離れなくて一緒にレーンを滑って行ったり、
力みすぎてふたつ隣のレーンに投げ込んだり(これはガーターだったからまだいいけど)
などなど、ミカさんは今までとは打って変わって波乱の展開を見せてくれた。
あまりにヒドいミカさんを見かねて、結局ボウリングもワリカンにした。
その帰り道・・・


美央「・・・もうミカさんとボウリングは遠慮するわ・・・」

ミカ「す・・・すみません・・・」

美央「まさか1ゲーム中に4回も殺されかけるとは・・・」

熾亜「まぁまぁ・・・私なんて6回は直撃コースだったよ・・・」

美央「ま、生きてるからいいけどね。 それにしても・・・」

ミカ「?」

美央「完璧超人なんて、そうそう居ないものね。」

ミカ「そ、そうですよ! あはははは・・・」


その笑い方で私は思った。
ミカさんは"わざと"大失敗を繰り返したんじゃないか・・・って。


美央「じゃ、私の家こっちだから〜」

熾亜「うん、またね〜!」

ミカ「さようなら〜」

熾亜「でもミカさん・・・ほんとアブナいからあーいうミスはやめてね・・・?」

ミカ「すみません・・・どうしても力の制御がうまくいかなくて・・・
   次までにちゃんとコントロールできるように・・・」

熾亜「・・・マジだったんすか・・・」



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