美央「熾亜〜、今日の帰り、ちょっと寄り道しない?」

熾亜「いいよ〜? でも、ドコ行くの?」

美央「駅前! こないだ新しい店が開店したばかりみたいなのよ。」

熾亜「へぇ〜・・・でも、オープンしたばっかなら、混んでるんじゃない?」

美央「そうでもないよ?」

熾亜「そーなんだ。 じゃぁいこっかな。」

美央「そうこなくっちゃw」

熾亜「ミカさんも行くよね?」

ミカ「そうですね、面白そうですしw」


・・・このとき、私は重大なコトを忘れていた。
美央とは中一からの付き合いで、趣味の方向性も知っているのに・・・


美央「じゃ〜ん!ココでぇ〜っす!」

熾亜「・・・ここって・・・」


美央がそう言って立ち止まった所は、いかにも怪しげな看板を掲げた店の前だった。


美央「じゃ、はいろっか。」

熾亜「いや、私はちょっとエンリョしようかな〜・・・なんて・・・」

美央「い〜じゃない、せっかく観神さんも来てくれたんだしさw」

熾亜「そ、それはそーだけど・・・」
  (そーいえばミカさん、天使なのよね・・・こういうトコロ大丈夫かなぁ・・・)


そのミカさんはというと、不思議そうな顔で看板を見上げていた。


ミカ「ここは・・・どういったお店なのでしょう?」

美央「入ってみればわかるってw」

熾亜「ミカさ〜ん、やめといたほうが〜・・・」

ミカ「面白そうなので入ってみましょうw」

美央「そうこなくっちゃぁ! いざ、店内へ〜〜!!」

熾亜「あ・・・あははははは・・・」


美央に背中を押され、店内に入る。
一歩踏み入れたとたんに、駅前とは思えぬ異様な雰囲気が出迎えてくれた。
そう、ここはいわゆる"オカルトショップ"
美央はオカルトグッズ集めが趣味だったのだ。
なぜ今まで忘れていたんだろう・・・


美央「うふふふふw 予想通り、いい品揃えね〜♪」


美央は満面の笑みで店内を見回っている。


熾亜「ミカさん、こういうお店平気?」

ミカ「あ、はい。 それらしい形にしてあるだけで、力はまったく無いようですから。」

熾亜「そ、よかったぁ・・・」

ミカ「心配してくださったんですか?」

熾亜「あたりまえじゃない・・・もし苦しみだしたりしたら大変だし。」


結局美央は1時間以上も騒ぎ続け、私がなんとかなだめて店を後にした。


美央「・・・でも、やっぱアレは買いよねっ! そう思わない?」

熾亜「そ、そーね・・・あはははは・・・」


美央の興奮は収まらない。


ミカ「空野さんは・・・」


ミカさんがつぶやく。


ミカ「空野さんには、魔力はあるんですか? あの類の置物で、
   何をしようとしてるんですか?」


いつになく真剣な表情である。


美央「ちょ、そんなコワい顔しないでよぉ・・・ただのインテリア!
   なんの効果もないのは知ってるし、何かしようともしてないってば・・・」

ミカ「そう・・・ですか。 安心しましたw」

美央「ほ・・・」


ミカさんがいつもの笑顔に戻って、美央も安心したみたい。


美央「でも観神さん、なんでそんな真顔で・・・?」

ミカ「あ、いえ・・・友達がおかしな道に走っているのではと・・・心配で・・・」


ミカさんは、天使であるという素性を隠すためにあわてて取り繕う。


美央「トモダチ・・・かぁ。」

ミカ「あの、迷惑・・・ですか?」

美央「・・・とんでもないw」


美央は困った表情のミカさんに笑顔で返す。


美央「逆にうれしいわよ、観神さんもそう思ってくれてて。」

ミカ「そうですか〜♪」


ミカさんも嬉しそうだ。


熾亜「でもホント、美央も変わってるわよねぇ・・・」

美央「そぉ?」

熾亜「ただ集めて飾るだけが趣味なんて・・・」

美央「いいじゃない、別に。」

熾亜「ま、否定はないけどね〜。 人の趣味なんてそれぞれだし。」

美央「そうそうw ところで、観神さんはどんなモノが好きなの?」

ミカ「私は・・・まだこちらに来てあまり経ってないので、目にするものすべてが新鮮でw」

美央「ここに来たばっかりって・・・留学生?」


金色の長い髪、きれいな青い瞳・・・やっぱミカさん、そう見られるのが自然かなぁ。


ミカ「いえ、実は熾亜さんの従兄弟にあたりまして・・・」

熾亜「そ、そうなのよ! 従兄弟っていっても私にとってはお姉さんみたいなモンで、
   小さい頃からたまに一緒に遊んだりしてて・・・」

美央「熾亜と違って、シッカリしてるしね〜w」

熾亜「よ、余計なお世話よ!」

ミカ「くすくすw」

美央「でもさ、熾亜って変わった呼び方だよね〜」

熾亜「え? 私?」

美央「うん。 だって、観神さんのこと"ミカさん"って呼んでるじゃない?」

熾亜「それが・・・どうかしたの?」

美央「いやさ、普通は名前で呼ばない? 観神さんも熾亜のこと名前で呼んでるしさ。」

熾亜「ん〜、それはそうだけど・・・ミカさんがそう呼んで欲しいって。」

美央「そうなの? 観神さん。」

ミカ「そうですね、たしかにそう言いました。 ミカって呼んでくださいって」

美央「ふ〜ん・・・じゃぁさ、私もそう呼んでいいかな?」

ミカ「えぇ、かまいませんよw」

熾亜「ぇ〜・・・でもそうすると私と美央の見分けが・・・」

美央「ん? 何か言った?熾亜。」

熾亜「えっ? ううん! こ、こっちの話!」

美央「そ、ならいいわw それとミカさん。私のことも名前で呼んで。」

ミカ「では、美央さん・・・でいいですか?」

美央「うんw」

熾亜「ただでさえキャラ被り気味なのに、呼び方まで・・・ブツブツ・・・」

美央「なんかブツブツ言ってる熾亜は置いといて、帰ろっか、ミカさんw」

ミカ「え、でも・・・」


ためらいを見せるミカさんを美央は引っ張って行こうとする。


熾亜「ブツブツブツ・・・って、こら〜〜!! 私を置いて行こうとするんじゃな〜〜い!!」

美央「キャー、熾亜が怒った〜! 逃げろ〜w ほら、ミカさんもw」

ミカ「え? えぇえ!?」

熾亜「待てコラ〜!!」

美央「あははははははw」

ミカ「熾亜さ〜〜ん;;」


ミカさんの手を引いたまま走る美央、追いかける私。


美央「あ?」

熾亜「え?」


不意に、美央がこっちを振り返って、ゆっくり歩き出す。


美央「今度の土日って、予定ある?」

熾亜「ん〜、特にないけど・・・」

美央「じゃあさ、3人で勉強会しない? テスト直前だしw」

熾亜「さんせ〜いw」

ミカ「3人というと・・・私もですか?」

美央「トーゼンじゃないw」

熾亜「で、美央? どこでやるの?」

美央「私の家でどう?」

熾亜「美央の家で?」

美央「そw し・か・も、泊まり込みで〜w」

熾亜「と、泊まり込み〜〜!?」

美央「なによ、何かご不満?」

熾亜「いや、不満はないんだけど・・・」


チラっとミカさんのほうに視線を送る。


ミカ「楽しそうですね〜♪」

熾亜「・・・問題ないみたいね。」

美央「じゃぁ今度の土曜、何時でもいいからウチに来てよw」

熾亜「おじさんやおばさんは大丈夫なの?」

美央「それが、なんか結婚記念日らしくてね? 旅行に行くんだって。
   私を置いてくなんてねぇ・・・いいトシこいてラブラブなんだから。」

熾亜「あ、あははははは・・・」

美央「そういうことで、何も心配ないわよw」

熾亜「うん、わかった。 それじゃぁ今度の土曜にお邪魔するねw」

ミカ「よろしくお願いします。」

美央「ど〜んとこい!」


こうして、私・美央・ミカさんで勉強会をすることになった。
ミカさんがどのくらい勉強できるかを知る意味でも、いい機会なのかもしれない。



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