私は”天仲 熾亜”(あまなか しあ)。
どこにでもいる中学生。


美央「熾亜、また明日ね〜」

熾亜「またね、美央〜」


いつもどおりの帰り道・・・


美央「!? 熾亜!!」

熾亜「え・・・?」


キィィイィィィ・・・ドッ


美央「熾亜〜〜〜!!」


信号のない交差点、不注意による飛び出し。 全身・特に頭部を強打。
薄れ行く意識の中で、私は暖かい不思議な感触に包まれた。
そこから先は、なにがどうなったのか覚えてない。
気がつくと、目の前には病院の院長をしている私のお父さんがいた。
お父さんは、"目立った外傷もなく、脳波・身体機能に異常はない"って。
念のために何日か入院しろとも言われたけど、無理を言って家に帰った。

次の日、いつも通り目を覚ますと、ベッドの横に一人の女性が立っていた。
長い金髪に青色の瞳。女の私から見ても、すごくキレイ。
背中には白い翼が・・・って、翼?


??「目が覚めましたか?」

熾亜「えと・・・あなたは?」

ミカ「私ですか? そうですね・・・ミカとでも呼んでください。」

熾亜「そう、それじゃミカさん?」

ミカ「はぃ?」

熾亜「その・・・背中の翼みたいなモノは?」

ミカ「翼ですよ?」

熾亜「あ、やっぱりそうなんだ・・・って、そうじゃなくて!」

ミカ「??」

熾亜「人間・・・じゃないの?」

ミカ「そーですねぇ・・・私は俗に言う"天使"というものですけど・・・」

熾亜「・・・天使?」

ミカ「はぃ、そうです。」

熾亜「へぇ〜・・・今までずっと信じてなかったけど、居るトコロには居るモノなのねぇ・・・」

ミカ「そうみたいですねw」


自分のことを天使だって言い張るミカさんは、私の言葉をかる〜く受け流す。


熾亜「って、時間!!」


時計を見る。 まだ少し余裕がある。


熾亜「私、学校行くから。」

ミカ「はい、行ってらっしゃい。」


ミカさんはにっこりと微笑んだまま、私の後をついてくる。


熾亜「・・・・・・」

ミカ「・・・・・・?」

熾亜「・・・・・・あの・・・」

ミカ「はい? なんでしょう。」

熾亜「なんで後ついてくるの?」

ミカ「ダメ・・・ですか?」

熾亜「変な人だと思われちゃうよ?」

ミカ「大丈夫です。 目に見えなくできますから。」

熾亜「・・・そう。」


玄関を出るとス・・・と、ミカさんの姿が消えた。
でも、ゼッタイ付いてきてるんだろうなぁ・・・

学校に行く途中で、親友の美央を見つけて、声をかける。


美央「・・・え? 熾亜?」

熾亜「そーだよw」

美央「・・・私、夢でも見てるの? それとも、あなたは熾亜の亡霊?」

熾亜「・・・本人で悪かったわね・・・」

美央「・・・・・・」

熾亜「・・・」

美央「・・・・・え?」

熾亜「・・・・・・?」

美央「なんで!? なんで熾亜がいるの!!? 熾亜は昨日、交通事故で・・・」

熾亜「運がよかったみたいねw」

美央「それで済むようなこと!? あれだけモロにぶつかっておいて・・・」

熾亜「だって、実際そうなんだもん・・・」

美央「病院に担ぎ込まれたと思ったら、ソッコー検査してスグ退院なんてありえないよ?」

熾亜「だってだって、私のお父さんの病院だし・・・」

美央「それこそ、そーゆー問題じゃないでしょっ!」

熾亜「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない! 偶然に偶然が重なったのっ!」

美央「はぁ・・・わかったわ。」

熾亜「理解できればイイノデス☆」

美央「でもさ・・・」

熾亜「ん?」

美央「無事でよかったね、熾亜。」

熾亜「・・・そうねw」

美央「みんなオドロクよ〜?」

熾亜「事故ったコト自体知らないんじゃない?」

美央「それもそうね・・・」

熾亜「それより美央、時間!」

美央「わ、やっば! ギリギリじゃな〜い!!」

熾亜「ダッシュ!!」

美央「うんっ!」


私はいつもどおりに生活していた。
ただ一つ、みんなに隠し事をして。

その日の授業も滞りなく終了し、みんな家に帰っていく。
いつもは美央と一緒に帰るけど、美央は用事があるとかで早々と帰ってしまった。
一人で帰るの、すごく久しぶり。


熾亜「ふぅ・・・」


自分の部屋に入って、大きく息をつく


熾亜「・・・ミカさん」


背中に白い翼のあるキレイな女性が姿を現す。


ミカ「呼びましたか?」

熾亜「イキナリだけど説明してもらっていい?」

ミカ「はい。 実は・・・アカシックレコードに狂いが生じ始めたのです。」

熾亜「・・・なぁにそれ?」

ミカ「え?あ、すみません・・・アカシックレコードとは、万物の過去から未来永劫まで
   すべてを記録してあるものでして・・・」

熾亜「つまり、この世のすべてのものはそれのとおりに動いてるってコト?」

ミカ「えっと、はい。そうなりますね。
   それで、昨日のあなたの事故はそこに記録されていないものでして・・・
   つまり、あなたの死というのは全くもって想定外の出来事になるわけで・・・
   えっと・・・そのせいで今後の歴史が大きく歪む可能性もありましてそれで・・・」

熾亜「それで、ミカさんが私を助けた・・・ということなのね?」

ミカ「はぃ、飲み込みが早くて助かります。」

熾亜「その、アカシックレコードの狂いとかって私にはわかんない話だけど・・・
   私が死ぬっていうのは、歴史的にそんなに影響があるの?」

ミカ「わかりません・・・」

熾亜「ちょ、わからないって・・・」

ミカ「予測できないんです・・・一つ一つの狂いはたいしたことではなくとも、
   それが引き金になって大きな狂いが生じる可能性もありますから・・・
   あ、でも熾亜さんの命がたいしたことないという意味ではなくてですね、
   もっとこう、全世界的・歴史的に見て・・・あうぅ・・・」

熾亜「・・・なんとなくわかったわ。 で、ミカさんはなんで私のそばにいるの?」

ミカ「それはですね、私の力で熾亜さんの一命は取り留めたものの、まだ生命活動が
   不安定なんです。
   私が近くにいれば、力の共鳴現象で安定するんですけど、離れたらどうなるか・・・」

熾亜「ふぅん・・・じゃぁ、ちょっと離れてみてよ。」

ミカ「だ、ダメですよぉ! あぶないですっ!」

熾亜「すぐに近寄ってくれれば平気でしょ?」

ミカ「あうぅ・・・わかりました・・・」


ミカさんが部屋から出て行く。


熾亜「・・・ん〜、なんともな・・・ぁっ!?」


とたんに襲い来る寒気と激しい痛み。
特にどこというわけでもなく、全身が引き裂かれるように痛む。


熾亜「はぁぅっ・・・ミカ・・・さっ!!」

ミカ「熾亜さ〜ん、大丈夫で・・・ 熾亜さんっ!!」

熾亜「ミカさん・・・」

ミカ「大丈夫ですか!?」

熾亜「痛かった、苦しかったよぉ・・・」

ミカ「だから言ったじゃないですか・・・」

熾亜「うん、わかった・・・」

ミカ「熾亜さんの生命活動が安定するまでは、私がずっとついてますから。」

熾亜「うん、お願い。 でも、人前で姿を消すのって、疲れるんでしょ?」

ミカ「えと、姿を消すって言うのはちょっと表現に誤りが・・・
   でも、すでに手は打ってありますから〜w」

熾亜「ならいいけど・・・」

ミカ「とりあえず、コレつけててください」


ミカさんが取り出したものは、一見なんの変哲もないブレスレットだった。


熾亜「なに、コレ・・・」

ミカ「それには、少なからず私の力が込められています。
   それさえつけてれば、私とちょっとくらい離れてもへっちゃらですよ〜w」

熾亜「・・・最初に渡してよね。」

ミカ「あうぅ・・・すみません・・・」

熾亜「とりあえず、ありがと。」


ミカ「はいw あ、あとそれ・・・熾亜さんの生命活動が安定したら自動的に壊れる仕組みになってます。
   それ以外では壊れないように頑丈に作ってありますから、もし壊れたら私と離れても全然OKですよw」

熾亜「へぇ・・・便利ねぇ・・・で、手は打ってあるって・・・これのこと?」

ミカ「それだけでは、遠く離れたらあぶないですから・・・」

熾亜「そうよね・・・ってことは、他にも?」

ミカ「はい。 それは明日になってのお楽しみで〜すw」

熾亜「明日・・・ねぇ。」


私は、ありきたりなパターンを予想した。
-そして翌日-


担任「よーし、今日はまず転校生を紹介するぞ〜!」


ザワザワ・・・


熾亜「転校生ねぇ・・・」

担任「静かに! よし、じゃぁ入って。」

??「は、はいぃ」


ガラガラガラ

入ってきた人物を見て、私はガクリとうなだれる。予想的中であった。


熾亜「・・・やっぱり。でも、昨日より・・・」

美央「? ど〜したの熾亜、元気ないよ〜?」

熾亜「あはは・・・ちょっとね・・・ハァ・・・」


それはあきらかにミカさんだった。
でも、昨日より背も低くなって、スタイルも・・・


担任「じゃ、自己紹介して。」

ミカ「はぃ。えっと、"観神 絵梨"です。初めての土地でわからないことだらけですが、
   よろしくお願いしますっ」

担任「観神さんは天仲の家に居候してるそうだ。 ということで・・・
   席も天仲のトナリでいいかな?」

ミカ「はぃ、そうしてもらえると助かります。」


そう言って、転校生は私の隣に座る。


熾亜「ミカさん、どーしたの? その格好・・・」

ミカ「あら? 似合ってないですか?」

熾亜「制服のことじゃなくてっ! 体型!」

ミカ「あぁ、これですか? えぇと、どう説明しましょうか・・・」


ミカさんは少し困った顔をしたが、すぐに小声で説明に入ってくれた。


ミカ「私は本来、実体のない存在なんですよ。つまり、自分の思うままに姿形を変えれるというか、
   皆さんに幻覚に近いモノを見せているというか・・・」

熾亜「じゃぁ、こうして触れるのはなんで?」


ミカさんの腕をつかんでみる。


ミカ「それはですね、粒子の密度を高めて、あたかも実体がそこにあるかのように
   触れるということなのですよ。」

熾亜「・・・粒子って・・・なんの?」

ミカ「そこは説明に困ります・・・」

熾亜「・・・えっと、つまり私が今つかんでるのは、単なる粒子の集合体で、
   ミカさんの実体ではなくて、ミカさんは幻覚を使ってその粒子の集合体が
   ミカさんであるように見せてて・・・あぁもう! ワケわかんない!」

ミカ「そ、そんなに大声出さないでくださいっ!
   今話してることは、他のみなさんにはナイショなんですよね?
   カンタンに言えば、みなさんに"私がここにいる"という錯覚・・・
   つまり、すごく強い思い込みをさせてるんですよ。」

熾亜「あぁ、なんかもうホントにカンタンに済ませられちゃったわね・・・まぁ、いいわ。」

ミカ「ともあれ、今日からはこちらでもよろしくお願いしますねw」

熾亜「こちらこそw 私もミカさんいないと困っちゃうし。」


ひょんなことから、"天使の憑いた中学生"になった私・・・でも、それはみんなには秘密。
こうして、私とミカさんの"ちょっと変わった日常"が始まった。



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