アンバー:「・・・・・・叩いたら元に戻らないかな?」

冷静になったアンバーがそう呟くと、突然ドアがノックされた。

アンバー:「あ、はーい どーぞー」
セラフィ:「お邪魔しま〜す、ちょっと変わったモノを作ってみたので、アンバーさんもどうかと・・・」
アンバー:「あら、なんでしょぅ?」
セラフィ:「ファル兄さんが隠し持っていたマステラとローヤルゼリーでスープを作って、
      イグ種をやわらかくなるまで煮込んでみたんですよ。」
アンバー:「おいしそーですねー、早速ー」

言うが早い 皿を手に取り一口

アンバー:「・・・・・んー徹夜する人にはうってつけですねー」
セラフィ:「徹夜させるともりなんて、ありませんけどね。
      これはすでに、アンバーさんだけの問題でもありませんから。」
アンバー:「あ、アルさんってまだ起きてます?」
セラフィ:「はい、起きてると思いますけど・・・呼んできますね。」

そう言うとセラフィは足早に部屋を出て行き、アルを呼んできた。

 アル :「・・・呼んだか?」

さっきまで寝ていたのか、少し寝ぼけ気味である。

アンバー:「落ち着いてきたので、少しお話があります」
 アル :「なんだ?」
アンバー:「ジェイドちゃんの原石を割ったときなんですが、手ごたえはひとつでしたか?」
 アル :「・・・一つしか感じ取れなかったが・・・
      まさか、他にも石が埋め込まれてるのか・・・?」
アンバー:「ジェイドちゃん自体の素質もあってか、実は2つ埋め込まれているんです
      ただ、それが何の効果をもたらしているのか解明できていないんですよ」
 アル :「だが、戦闘中に確認できた石は一つだろう・・・?」
アンバー:「はい、ですから魔力に反応するものではないのです。今の今まで何の反応も示していません」
 アル :「魔力に反応しない・・・? 効果もわからない石とは・・・
      埋め込まれている場所もわからないのか?」
アンバー:「はい・・・あいにくと・・・」
 アル :「手の施しようがないな・・・せめて場所さえわかれば、取り出すなり壊すなり・・・
      アンバーが機関で読み漁った資料にも、書いてなかったのか?」
アンバー:「もうひとつの原石に関してはまったくシークレット扱いでしたので、データが存在しませんでした」
 アル :「そうか・・・機関の上層部も居ない状況では・・・
      くそっ、何もできないのか・・・!」
アンバー:「・・・・・・あれ?アルさんちょっとちょっと!!」

ジェイドのそばに寄っていたアンバーがアルを呼ぶ

 アル :「ん? なんだ、どうした?」
アンバー:「ジェイドちゃん・・・明らかに血色よくありません?」
 アル :「たしかに、顔も赤みががってるし・・・ただ寝てるだけにも見える。」
アンバー:「・・・色々やりすぎてどれが原因かわかりませんねぇ・・・」
 アル :「イグ湯の治癒力向上が効いたのか・・・それとも、魔力を送り込んだのがよかったのか・・・」
アンバー:「なんにせよ反応はあったと・・・いえますかね」
 アル :「だな・・・しばらくはイグの煎じ湯を飲ませつつ、時を見て魔力供給も織り交ぜていくか・・・」
ジェイド:「・・・・・・ん」

その時ジェイドにわずかな反応があった

 アル :「ジェイド!? 気がついたのか?」
アンバー:「ジェイドちゃん!?」
ジェイド:「アル・・・さま・・・・・・ごほっごほっ!!」

咳き込むと同時に吐血も混じっていた

 アル :「ジェイド! まだ内臓の傷か癒えきってないんだ。無理はするな。」
ジェイド:「・・・・・・いえ自分でもわかります・・・正直長くないなと・・・」
アンバー:「ジェイドちゃん・・・」

起き上がるジェイドの状態を支えるアンバー 支える手はかすかに震えていた

 アル :「そうだジェイド・・・お前の体に埋め込まれている、もう一つの石に関して、なにか知らないか?」
ジェイド:「ええ・・・知っています・・・」
 アル :「知っているなら教えてくれ・・・それがどこにあって、どんな効果なのか・・・」
ジェイド:「・・・・・・これを使えば、おそらく命を拾うことも出来るでしょう・・・・・・
      ・・・・・・ですが・・・かはっ!!」

おびただしい量の血を吐くジェイド

 アル :「ジェイド!? ・・・これ以上しゃべらせると、ジェイドが危ないか・・・」
アンバー:「ジェイドちゃん、もう横になろ・・・ね?」
ジェイド:「はい・・・・・・」

横になると、目を閉じ、死んだかのように眠るジェイド

アンバー:「・・・アルさん・・・正直いやな予感がします」
 アル :「俺もだ。 顔色はよかったというのに、あの吐血・・・
      それに、”使えば命さえも拾える”という言葉が異様にひっかかる。」
セラフィ:「過ぎた薬は生命を脅かす・・・ということでしょうか?
      もしかして、その石がグレイトフル・デッドの源となっているのでは・・・?
      もう一つの魔石を失って力が暴走し、ジェイドさんの体を蝕んでいるとか・・・」
アンバー:「・・・・・・それならもっと早く、最悪の状況になっていたでしょう。
      まず判ることは残った原石に現在害はないことですね」
 アル :「とすると、だの吐血は単に内傷によるモノ・・・と」
アンバー:「傷がふさがっていなかったか、あるいは残留したものか・・・
      少なくとも、回復剤やヒールを受けられる身体になっているのは間違いないでしょう
      でなければ血色がよくはなりませんし」
 アル :「残った石に害はない。傷も魔法などで治癒できる。なのに、ジェイドの先は長くない・・・
      やはり石の魔力や破片が残っていて、それで蝕まれているのか・・・?」
ジェイド:「・・・いえ、そうではありません」
 アル :「ジェイド!? 大丈夫なのか?」
ジェイド:「どうにかは・・・それで原因なのですが おそらくは損傷の多大さが原因でしょう」
 アル :「・・・俺が攻撃しすぎたか・・・」
ジェイド:「肉体の損傷を修復するのに、今まで半自動的に修復してましたからね。
      強制修復の機能のない今、元々の肉体に修復するだけの力がないのでしょう。
      アル様のせいではありません、今までの蓄積というだけです・・・・」
アンバー:「・・・・・・ムリしてきたからね、今までの逃亡生活とか・・・」
 アル :「そうか・・・」
ジェイド:「先ほども言った事ですが、石の力を使えば命を拾えます。正常な肉体へ戻すのですから」
 アル :「そう、その続きだ。なにかウラがあるんだろう?」
ジェイド:「・・・・・・・・・いえ、長くも持ちませんし、力を使わせていただきます・・・」
 アル :「・・・肉体と一緒に、記憶までリセットされる・・・というオチはないよな・・・?」
ジェイド:「・・・そのくらいだったらよかったんですけどね
      ・・・では・・・外へ・・・でます・・・うっ・・・ごほっ・・・・・・」
アンバー:「ジェイドちゃん、一人じゃムリだって・・・」

ジェイドの身体を支え一緒に外へ
外へと出るジェイドとアンバー、そして遅れてアルとセラフィ

アンバー:「ジェイドちゃん・・・どーするの?」
ジェイド:「要領はそんな変わりません、意識を集中させるだけですから」

 アル :「それで、石の力を使えるのか・・・?」
ジェイド:「ええ、グレイトフル・デッドも同じ要領でしたからね」
アンバー:「ねぇジェイドちゃん、ほんとに大丈夫なの?」
ジェイド:「・・・・・・ええ、大丈夫です。体の損傷をなくして、人として生きていくことが出来ます」
アンバー:「・・・・・・・・・」
アンバー:「アルさん、アルさん」

ジェイドから離れ小声でアルのそばへ

 アル :「ん?」
アンバー:「ジェイドちゃん、ウソついてます間違いなく」
 アル :「俺もそんな気がしてならない・・・あの石を使うと、なにかとんでもない事態を引き起こすような・・・」
ジェイド:「アル様・・・わたくしは、あなたと一緒に生きていたい・・・・・・初めて心から思っています
      ・・・わたくしは、何があっても生きていたいんです・・・犠牲を伴っても・・・」

そういってジェイドは意識を集中させていった

 アル :「ジェイド、その犠牲ってのは何なんだ! 代償に何を失うって言うんだ!」
ジェイド:「・・・・・・・・・」

アルの言葉に耳を傾けず意識を集中させる
両手を下腹部へ置きさらに集中をかける

ジェイド:「・・・・・・・・・んっ!!」

何かの砕ける音がかすかに聞こえた。
目もくらむような光がアル、セラフィ、アンバーを襲う

アンバー:「キャッ!!なにっ!?」
 アル :「っ・・・なんだ・・・?」
セラフィ:「きゃぁっ!?」

激しい光から視力が回復してその先に見えたものは、倒れこんでいるジェイドであった

アンバー:「ジェイドちゃん!?」

ジェイドを見かけるなり、そばへ駆け寄るアンバー

 アル :「大丈夫か! ジェイド!!」
セラフィ:「なにが起きたんですか?」

アンバーに一瞬遅れて、アルとセラもその場から飛び出す。

ジェイド:「・・・ん・・・んー・・・」

呼びかけに応じるように、ゆっくりと起き上がるジェイド

ジェイド:「あ、皆様・・・おはようございます」
 アル :「ジェイド・・・? なんともないのか・・・?」
ジェイド:「ええ・・・多分成功したかと・・・」

何度も腕を動かしたり手を開いたり閉じたりして確認をする

ジェイド:「あ、アル様・・・ナイフか何か持っていませんか?」
 アル :「持ってるが・・・なにをするつもりだ?」
ジェイド:「お借りしてもよろしいですか? あ、自決ということはけしてしませんからご心配なく」
 アル :「・・・わかった。」

アルは持っていたナイフを、そっとジェイドに握らせる。

ジェイド:「・・・・・・・・・んっ」

手渡されたナイフでおもむろに腕を切る

セラフィ:「なにを!?」

セラフィは、急いでジェイドにヒールをかける。

ジェイド:「・・・痛みがある・・・傷も治らない・・・・・・
      アル様・・・わたくし・・・これで人に戻れたんです・・・」

ぽろぽろと涙をこぼすジェイド

 アル :「その確認のために・・・
      ジェイド、本当にもう大丈夫なのか? おかしなところはないか?」
ジェイド:「ええ、何も問題はありません・・・あの・・・アル様・・・・」

バッとアルにしがみつくジェイド

ジェイド:「・・・・・・泣いてもいいですか?」
 アル :「あぁ。 思い切り泣いていいぞ。
      人の目が気になるというなら、セラたちには先に帰ってもらう。」
ジェイド:「ぅっ・・・うわぁぁぁぁっ!!」

アルの胸に顔を埋め今まで出したこともない大声で泣くジェイド
アンバーは一二歩後ずさり後ろを向き 声もなく泣いていた
言葉もなくジェイドを優しく抱き寄せるアル。
セラフィはというと、そんな3人を気遣ってその場を退いていた。

ジェイド:「ううっ・・・・・・ひっく・・・ぐすん・・・・・・アル様・・・・・・」
 アル :「落ち着くまでこうしていてやろう・・・」
ジェイド:「・・・アル様」

胸元から見上げる形でアルの事を見る

 アル :「ん、なんだ?」
ジェイド:「・・・お腹がすきました。」

舌を出しはにかむその笑顔は今までからは考えられないものである

 アル :「・・・ジェイド、なんだか雰囲気が変わったな・・・
      まぁいいか。 戻ってセラフィに何か作ってもらおう。」
ジェイド:「はい、アル様。」
アンバー:「・・・・・・・・・」

二人の後姿を見て怪訝な表情を浮かべるアンバー
取り越し苦労かと自分に言い聞かせて二人の後を追った
屋敷に戻ると、すでにセラフィは食事の準備をしていた。

セラフィ:「あ、お帰りなさい。 今日はみなさんお腹も空いているでしょうから、たくさん作っておきますねw」
 アル :「あぁ、頼んだ。 そういえばジュノは手伝ってないのか?」
セラフィ:「・・・部屋で寝てますよw 私たちがポタで戻った後も、いろいろあったようですし・・・
      寝かせておいてあげたくて。」
 アル :「・・・そうか。じゃぁ俺が・・・」
セラフィ:「それは遠慮します!!」
 アル :「・・・わかった。じゃぁ、できたら呼んでくれ。」
セラフィ:「わかりました。それまではゆっくりしていてください。」
ジェイド:「セラフィ様、わたくしもお手伝いいたします」
セラフィ:「いえ、ジェイドさんは休んでいてください。一番いろいろあったんですから・・・
      それに、病み上がりの人をこきつかうようなマネはしたくありませんから。」
ジェイド:「こき使うなんて・・・ご迷惑掛けたのも事実ですし、もう元気になりましたから問題ありませんよ。
      どうか料理を振舞わせていただけませんか? お礼も兼ねてですので」
セラフィ:「そこまで言われてしまっては断れませんね・・・
      それでは、お願いします。」
ジェイド:「はい、ありがとうございます♪」

セラフィとジェイド二人がかりの料理も、それぞれの個性を出しつつ出来上がっていき、
終いにはちょっとしたバイキングが出来るほどの量になっていった。


←GFD11へ  GFD13へ→