ジェイド:「・・・あ・・・・」

アルに刺された瞬間、左腕でアルの首を掴むジェイド。
だが力もなく、グレイトフル・デッドによる侵食もなかった

 アル :「・・・間一髪・・・か。」
アンバー:「何言ってるんですか!!ここからですよ!!」

アルの右手を取り、魔力でコーティングをかける。

アンバー:「なるべく早く、でも傷をつけずに割れた原石を取り出さないと!!」
 アル :「・・・そうだな。」

アルは極めて冷静に、そして的確に、魔力でコーティングされた右手を使って、
ジェイドの体内から異物を取り出していく。

 アル :「これで・・・最後・・か。
      細かい破片になってなくて助かったな・・・」

最後の破片を取り出すと、アルはその場に腰を下ろす。

 アル :「・・・これでいいのか? アンバー。」
アンバー:「ええ、致命傷ではないので後は回復をさせて終わりです」
 アル :「・・・そう、か・・・ さすがに・・・疲れ・・・・・・」

その体を木の幹に預け、アルは気を失った。

アンバー:「アルさん・・・お疲れ様です・・・さてと・・・」

すぐさまジェイドの身体へ処置をかける

アンバー:「・・・これで・・・平気なはず・・・」

気を失っているアルの傍に、ジュノが来る。

 ジュノ :「あれだけの激しい戦闘に、大量の出血・・・
      気を失わないほうがおかしいってモンだぁね・・・」

やれやれ、といった表情でアルを見下ろす。

アンバー:「・・・ちゃんとジェイドちゃんが目を覚ますまで、安心は出来ません・・・」
 ジュノ :「まぁ・・・兄者が切り離した足も、つかまれた部分がちょっと侵食してるだけだし・・・
      こんなもんだったら・・・」

アルの足の切断面を合わせ、イグ葉を貼る。
すると、アルの足は無傷とまではいかないが、元通りになった。

 ジュノ :「こっちはこれで良し。あとは早くジェイドが目ぇさましてくれればな・・・」

アンバーの言葉を受け、ジェイドに目をやる。

 ジュノ :「そういえば、アンバーのほうはどうする?
      兄者は倒れてるし・・・オレがやろうか?」
アンバー:「ジュノさんイグ葉もう一枚あるんですよね?」
 ジュノ :「ん〜、一枚と言わず、まだまだあるけどな。
      どうした?」
アンバー:「一枚もらえます?」
 ジュノ :「ぁ〜、かまわねぇぜ、ホレ。」
アンバー:「ありがとーございます」

イグ葉を受け取り一呼吸置いて

アンバー:「・・・・・・けっこー勇気いるんですよねこれ・・・」
 ジュノ :「・・・まさか、自分でやるつもりか?」
アンバー:「・・・・・・・・・っ!!」

自分の左目に指を突っ込み入っている原石を引っ張り出す

アンバー:「ぅああああああああ!!!」

思いっきり引き抜きそばにあった岩にたたきつけ割る

アンバー:「はぁー・・・はぁー・・・・・・」

すぐさまイグ葉を左目に当て応急処置をする

 ジュノ :「うぉ!? けっこうエグいな・・・ナマで見ると・・・」

ジュノは一瞬、怪訝な顔をするが・・・

 ジュノ :「あ、そーだ・・・よかったらコレ使えよ。」

取り出したものは、眼帯であった

アンバー:「はぁー・・・・・・あ、ありがとうございます・・・」

目にイグ葉を当てつつ、上から眼帯をかける

アンバー:「あはー、海賊ツバメみたいですねー」
 ジュノ :「これで海賊頭巾かコルセアでもあればカンペキだなw」
アンバー:「さてと・・・どーやって帰りましょう?」
 ジュノ :「とりあえず、2人が起きるの待とうぜ。
      セラ姉ぇ呼んでもいいけど、倒れてるヤツをポタの放り込むのは酷じゃねぇ?」
アンバー:「それはそれで面白いと思うんですけどねー」
 ジュノ :「それがモトで命に関わる事態になったら、この苦労が水の泡だっての・・・」
アンバー:「それもそーですねぇ・・・じゃー少しゆっくりしてましょうか」
 ジュノ :「そーしようぜ。マッタリとな・・・」
アンバー:「・・・・・・襲わないでくださいよ?」
 ジュノ :「襲わねぇよ。いくら俺でも、そこまでワルじゃねぇ。」
アンバー:「ちょっと期待したのになぁ・・・」
 ジュノ :「後が怖ぇっての・・・
      セラ姉ぇとかなら、まだ冗談で通じるけどよ、ジェイドやアンバーじゃぁ、そうはいかねぇ。」
アンバー:「あはー、私はいいとしてジェイドちゃんに手を出したら、アルさんからまさにフルボッコですねー」
 ジュノ :「アンバー相手でも、妙なマネしたらセラ姉ぇ達から地獄のリンチ劇だぜ・・・」
アンバー:「あはー・・・それもみて・・・・・・みたいです・・・ね・・・」

幹にもたれかかるようにアンバーも眠りについた

 ジュノ :「・・・アンバーも、お疲れさん。俺が見張っててやるから、3人ともゆっくり休めよな。」

そうつぶやくと、ジュノも”よっこいせ”と木の幹にもたれかかる。
そうやって穏やかに時間も過ぎて日も傾きかけたころ目を覚ますアル

 アル :「・・・ん・・・?」
 ジュノ :「お、目ぇ覚ましたか?」
 アル :「俺は・・・」
 ジュノ :「気ぃ失ってたんだよ。あの戦闘と出血じゃ、ムリもねぇ。」
 アル :「足・・・」
 ジュノ :「くっつけといたぜ。幸い、侵食もヒドくなかったしな。
      イグ葉でチョチョイっとw」
 アル :「そうか。 ・・・ジェイドとアンバーは?」
 ジュノ :「そっちで寝てるよ。ジェイドは気絶中かな?」
 アル :「・・・そうか・・・」
 ジュノ :「なぁ、兄者・・・?」
 アル :「なんだ?」
 ジュノ :「・・・いや、なんでもねぇ。」
 アル :「・・・? おかしなヤツだな。」
 ジュノ :「兄者はやっぱスゲェって思っただけだよ。
      足、切り離したりさ。」
 アル :「・・・あのときは夢中だったからな。」
 ジュノ :「でも、俺ぁできねぇよ。兄者ほど鍛えてもいないしな。」
 アル :「・・・これから鍛えてやろうか?」
 ジュノ :「それはゴメンこうむる!」
 アル :「・・・だろうな。」

そんなやりとりをしていると、アンバーも目を覚ました。

アンバー:「ん・・・・・・ふぁーーー・・・よくねたー・・」

目をこすりつつ上体を起こす

アンバー:「あ、お二人ともおはよーございまーす」
 ジュノ :「おはよ〜さん。よく寝てたなw」
 アル :「よほど疲れてたんだろう。」
アンバー:「寝顔のぞいたんですカー?もう・・・えっち」
 ジュノ :「それ以外してねぇから、別にエッチでもなんでもねぇし。
      それに、俺が見張ってたんだぜ?3人を。」
 アル :「・・・不安だ・・・」
 ジュノ :「なにがだよっ!事実、無事じゃんか!!」
 アル :「冗談だ。お前もかなりの実力者だってのは十分わかってる。」
 ジュノ :「わ・・・わかってりゃいいんだよ、わかってりゃ・・・」
アンバー:「・・・・・・・・・ちっ」
 ジュノ :「それにしても、ジェイドおきねぇな・・・」
アンバー:「・・・そうですね」
 ジュノ :「なぁ、兄者・・・キスしてみたらどうだ?」
 アル :「な、お前はいきなり何を・・・!」
 ジュノ :「案外、それで起きるかもよ〜? 仮死状態の兄者みたいにさw」
 アル :「もしそうだとしてもだな、こんな場所で・・・それにお前・・・」
 ジュノ :「ジェイドはやってくれたぜ?」
 アル :「っ・・・・・・わかったよ・・・やってみればいいんだろ?」
 ジュノ :「そゆこと。さぁさぁw」
 アル :「・・・ジュノとアンバーはあっち向いてろ。」
アンバー:「ぇー・・・後学の為に是非・・・・・・あーはいはい、わかりましたよ・・・」

さすがのアンバーも、アルの眼光に負けて背を向けた。

 アル :「ジェイド・・・頼むから目を覚ましてくれ・・・」

そして、アルは優しく唇を重ねた。

 アル :「・・・だめか?」

ジェイドに反応はなかった、それよりも鼓動もぬくもりも感じられなかった

 アル :「・・・なにか間違っていたのか・・・?
      たしかに石は砕いて、破片も全部・・・」
アンバー:「私にもわかりません・・・戦闘で衰弱して回復が遅くなっているということも考えられます
      とりあえず、ここから離れましょう」
 ジュノ :「セラ姉ぇ呼んで、一旦ウチにいくか?」
アンバー:「ですね、お願いします」
 ジュノ :「りょっかぃ。」

ジュノはすぐさま耳打ちでセラフィに声をかけた。
数分後、天使連盟の屋敷に、セラフィ・ジュノ・アンバーと、ジェイドを抱えたアルが戻ってきた。

ルーシィ:「おかえりなさ〜い・・・あれ?ジェンドさんどーしたの・・・?」
 ジュノ :「いや、それが・・・どう言ったもんか・・・なぁ?」
 アル :「・・・説明してもいいか? アンバー。」
アンバー:「はい」

アンバーの了解を得て、クーラとの戦闘後のことを皆に話す。

 アル :「・・・というわけなんだ・・・」
セラフィ:「仮死状態・・・?いえ、すでに体温もない状態ですから、これは・・・」
 ファル :「もう目ぇ覚まさないのか・・・?」
 アル :「俺たちでは、なんとも・・・アンバー、なにかわからないか?」
アンバー:「私にもどうしようも・・・もう待つくらいしか方法が・・・」
ケルビナ:「待つにしても、血の流れてない状態では肉体は腐るだけですわ・・・」
 アル :「目を覚ますまで、応急処置で繋ぐしかないか・・・」
 ジュノ :「電気でショック与えるっつ〜テもあることはあるけど・・・なんか悪化しそうで怖いな・・・」
 アル :「原因がわからん以上、手荒なマネは避けるべきだろう・・・」
アンバー:「うまくいったはず・・・なのに・・・・・・」

アンバーの目には涙がたまっていた

 アル :「何が足りない・・・何をすればいい・・・」
セラフィ:「とにかく、考えうる限りのことをやってみましょう。」
 アル :「・・・そうだな。アンバーも、なにかいい案があったら出してくれ。」
アンバー:「・・・はい・・・・・・」

アンバーはジェイドの横に座り込み手を握ったまま動こうとはしなかった

アンバー「・・・なんでよ・・・どうしてよ・・・」

涙混じりにつぶやくアンバー

 ジュノ :「ますは、やっぱセオリーで心臓マッサージか?」
 ファル :「妥当なとこだな・・・」
アンバー:「・・・心臓部はまだ傷が完全ではないと思うので、あまり触らない方が・・・」
 アル :「そうか・・・わずかにずれていたとはいえ、負担はかかっているだろうしな・・・」
セラフィ:「魔石が失われている状態ですし、以前のように魔力を送り込んでの回復は見込めませんよね・・・?」
 アル :「いや、魔石からの供給がなくなったことにより、一時的な魔力虚脱状態になってる可能性はあるかもしれない。」
アンバー:「通常の魔法もその身に受ける状態にはなりますからね無駄ではないかと思いますが」
 アル :「やってみるか・・・」
セラフィ:「では、また以前のように、ありったけの支援を・・・」
 アル :「そうだな。頼んだ。」
セラフィ:「お任せを!」

言うが早いか、セラフィはヒール・ブレスをはじめとする、あらゆる支援魔法をジェイドにかけ始めた。
アル・ジュノ・ルーシィも、解毒でわずかながら魔力を送り込む。
ファル・ケルビナは、また何もできないかに見えたが・・・

 ファル :「・・・じゃ〜んw」

ファルが取り出したのは、魔力の込められているスクロールだった。

 ファル :「コレ使えば、俺たちでも参加できるぜw」
ケルビナ:「さすがファルお兄様! 気が利きますわね!」

そして、ファルとケルビナもスクロールでヒールをかけ始めた。
前回のように魔法ははじかれることなくジェイドの身へ入ってはいくが、
さし当たって変化といえるものはなかった

 アル :「・・・魔力枯渇でもないか・・・とすると・・・」
 ジュノ :「イグ試してみねぇ?」
 アル :「効果はないと思うが・・・やってみるか?」

イグ葉をジェイドの体にかざしてみるが、やはり反応はない。

 ジュノ :「やっぱダメか・・・」
 アル :「原因がわからない状態でアレコレやって、悪化しないものだろうか・・・」
アンバー:「ちょっと待ってください・・・」

何かに気がついたアンバー

アンバー:「・・・・・・体温はないが硬直はしてない・・・魔法は受けられるのだから死んではいないはず・・・」
 アル :「死んでないのに動かない・・・気絶や失神に近いということか?」
アンバー:「そうですね・・・原石の魔力残留の影響とも考えられます。
      これ以上はどうしようもありませんね・・・・」
 アル :「原石の魔力残留なら、それを抜き取ることはできないのか?」
アンバー:「以前でしたから可能だったかもしれませんが・・・あいにく今は・・・・」

眼帯の上から目を押さえながら言う

 アル :「そうか・・・」

それが何を意味するかは、すぐにわかった。

アンバー:「とりあえず、暖かくして様子を見る・・・しか出来ませんね・・・
      一人いれば十分ですし・・・私がまずここにいますので皆さん休んでいてください」
 アル :「せめて、治癒力だけでも上げておこうか・・・ファル」
 ファル :「うぃ?」
 アル :「イグ実、まだ残ってたよな?」
 ファル :「あぁ、あるけど? ホレ。」
 アル :「セラフィ、ちょっとソレを煎じてきてくれ。」
セラフィ:「わかりました。」

セラフィがイグ実の煎じ湯を持ってくると、アルはそれをゆっくりジェイドの口に流し込んだ。
口元からこぼれた湯を拭くアンバー。
喉は通るようで、心なしか血色がよくなっている気がする。

 アル :「じゃぁアンバー・・・すまないが、しばらく任せる。」

まだ戦闘の疲れの抜け切っていないアルは、自室に戻った。

セラフィ:「しばらくしたら、交代がてら様子見に来ますね。なにか精のつくものでも作っておきます。」
アンバー:「・・・・・・・・・」

ジェイドの手を握り、セラフィの言葉にうなずくことしか出来ないアンバー
そうして天使連盟のメンバーは部屋を離れ、姉妹水入らずの状態となる。

アンバー:「ジェイドちゃん・・・」

手を握る力が一層強くなる

アンバー:「・・・アルさん置いてっちゃっていいの?・・・他の人に取られちゃうかもだよ?」

顔色を見たり肌に手を当ててみたりしてみるが、やはり変化らしい変化は見当たらない。
アンバー:「・・・・結局、傷も残っちゃったね・・・・」

腕をまくってみれば、『機関』での術式の跡が、いまだ生々しく残っている。

アンバー:「せめてこの傷だけでも消したかったな・・・」

一通り愚痴や独り言を言い尽くし、アンバーはふと冷静になった。


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