ジュノ :「よっ、あんまり遅せぇからチラっと様子見に来たぜぃ。」

いままでドコに潜んでいたのか、突如ジュノが姿を見せた。

 アル :「ジュノか・・・今、立て込んでるんだ・・・また後で・・・」
 ジュノ :「・・・話ぁ聞かせてもらったぜ。 よ〜するに、心臓の中の石を出しちまえばいいんだろ?」
 アル :「それができないから・・・!」
 ジュノ :「・・・あのさ、ジェイドを気絶させるなりなんなりして、サクっと胸掻っ捌いて、とっとと石だけ出しちまおうぜ。」
 アル :「ジュノ、お前、何を考えて・・・!」
 ジュノ :「キレーに取り出せばさ、イグ葉かリザかで、なんとかなんじゃねぇ?
      どんだけ瀕死の重傷も回復させちまうんだ、そんくらいできるだろ」
 アル :「・・・もし、できなかったら?」
 ジュノ :「そん時ぁそん時。 どうせ、ほっといてもいつかダメになんだろ?
      だったら、やるだけやってみりゃい〜じゃねぇか。」

そう言ってジュノは、よく研がれたナイフと、イグ葉を取り出した。

 ジュノ :「やるってんなら、俺がやるぜ。こん中でイチバン器用だかんな、まだ可能性も上がるだろ。
      で、お三方・・・どーすんだ?」
 アル :「・・・ジェイドはどうしたい?」
アンバー:「・・・・皆さん・・・・・・結構悪あがきが好きですねー・・・」
 ジュノ :「足掻いてナンボだろ。俺だって、死なせたくねぇよ。
      せっかくできた仲間だもんなっ」
アンバー:「私も悪あがきがしたくなりましたよ・・・少し考えさせてください。
      1%でも成功率を上げたいですから」
 ジュノ :「ん、りょ〜かい。なんならアンバーもいけるぜ?」

ジュノはイグ葉をもう一枚取り出して見せた。

アンバー:「私は平気です、引っこ抜くだけですからねー」
 ジュノ :「その痛みでショック死されちゃかなわねぇからよw」
アンバー:「あはー 根性はありますよー?」
 ジュノ :「どーだかな。女ってのぁ男より痛みに強いらしいけどな。
      まぁ、どうするか考えてくれよ。
      イチバン成功率の高そうな方法・・・な。」
 アル :「それはいいがジュノ・・・お前、いつから話を聞いてたんだ?」
 ジュノ :「・・・わりぃ、実は最初からなんだ。」
 アル :「なっ!?」
 ジュノ :「ポタ入るフリして、ハイドでな・・・
      兄者のことが、どーも気になってよ・・・」
 アル :「・・・そうか・・・」
ジェイド:「盗み聞きとは、よろしくありませんね・・・・」
 ジュノ :「・・・それは悪かったと思うけどよ・・・でもまぁ、今回はちょっとでも感謝して欲しいぜ?
      助かるかも知れねぇ方法があるんだからさ。」
ジェイド:「・・・・・・では、生き残ったら説教ですね?」
 ジュノ :「そ、それはカンベンしてくれよな・・・
      情報提供と技術料でチャラってことで・・・!」
ジェイド:「・・・成功したら考えさせていただきますよ」

かすかに微笑んだように見えた

 ジュノ :「・・・こりゃ、成功せざるを得ねぇなぁ・・・」
アンバー:「さってーお集まりのみなさーん」
 アル :「ん?」
 ジュノ :「お〜、決まったか?」
アンバー:「まず、成功への壁が2つあります。ひとつ、原石の防衛力をそぐこと。
      ふたつ、心臓内どこに埋まっているかを正確に知ることです」
 アル :「原石の防衛力・・・?」
アンバー:「半端に傷つけてもすぐさま再生してしまいますからね。胸を開いてもすぐ閉じては無意味でしょう?
      そのため、ギリギリまで内臓魔力を削って再生力を落します。
      あと、最悪ジェイドちゃんの身体を使って防衛してくる可能性もなきにしもあらずです。
      その可能性を極力潰します」
 ジュノ :「なるほどねぇ・・・そこまでくると”石”っつ〜より”意思”だな・・・たしかに厄介だ。」
 アル :「具体的な方法はあるのか? 消耗させたり、吸い出したりする・・・」
アンバー:「戦ってください」
 アル :「戦う!?」
アンバー:「無論実戦形式で、ようは無駄使いをさせればいいんです。
      普通にスキル使わせたところで焼け石に水というやつですからねー
      ジェイドちゃんには全力を出してもらいます。消費量は半端ないですからねー」
 ジュノ :「マトモに相手できんの、アンバーか兄者くらいだぜ?
      俺じゃぁ、蒸発しちまわぁ。」
 アル :「俺・・・か・・・」
アンバー:「攻撃をさせれば攻撃に、ダメージを負わせれば回復に、それぞれ使わせ事は出来ますからね。
      どうです?」
 ジュノ :「まぁ、戦うのはいいとして、正確な位置って〜のは、どーやるんだ?
      そもそも、石の大きさってどんくらいなんだ?」
 アル :「心臓内にあるなら、外から見たり触ったりしてもわからんだろう。
      かといって、中を覗き込むようなこともできないぞ?」
ジェイド:「大きさ自体は・・・眼球より少し大きい程度でしょうか。
      位置ですが攻撃や回復、魔力吸収時にわずかに輝きます。
      その瞬間だけなら外からでも確認は出来るはずです」
 ジュノ :「って〜ことは、まず戦ってみろってことだな。」
 アル :「・・・そうなるな。ジェイド、準備ができたら言ってくれ。
      俺が相手を務める。」
ジェイド:「アル様・・・こんな形になってしまい申しわけありません・・・・」

アルの方へ向きなおし構える

 アル :「・・・これもジェイドのためだと割り切るさ。」

まっすぐにジェイドを見据え、構えを取るアル。

アンバー:「あるさーん ちなみに手加減無用ですよー」
 アル :「・・・わかっている・・・・・・」

アルから感じ取れる、おびただしい殺気。
それは紛れもなく”敵”を相手にしているときのものだ。

 アル :「手加減なんてしたら・・・逆にこっちが死ぬからな・・・」
ジェイド:「・・・・・・・・・」

目を閉じ意識を集中させるジェイドそして足元から浮かび上がる翠のオーラ

ジェイド:「・・・・・・では・・・参ります・・・」

左手をパキパキと鳴らし、アンバーお手製衣装のポケットへ収める。
そして

ジェイド:「ふっ!!」

明らかに届かない間合いのアルの顔面に、拳のようなものが届く

 アル :「さすが・・・というべきか。この拳圧・・・」

すかさず身を翻してかわし、お返しとばかりにベノムナイフを投げる。
意に介さず右腕に平気でナイフを受けるジェイド。
そのまま伸びる拳を連射する。

 アル :「・・・この距離では歩が悪いか・・・」

アサシン特有の足捌きで、拳を避けながらジェイドの周囲を跳ね回り、あらゆる角度からベノムナイフを乱射する。
それは、逃げ場のない全方位攻撃となる。

 アル :「サウザンド・ジャック」
ジェイド:「!!」

とっさに顔面のみをガードしベノムナイフをその身に受けるジェイド

ジェイド:「・・・まだ・・・これからですよ」

ジェイドのまとうオーラ量が上がりなにか形を作っていく

ジェイド:「・・・行きますよ、アル様」

まとったオーラの形はそのシルエットはカタールをつけたうさ耳のアサ・・・
アルのようなシルエットとなっている

 アル :「・・・首を刎ねない限り死なないって言葉・・・信じるぞ。」

アルもカタールを装着する。

アンバー:「わー・・・ジェイドちゃんマジだ・・・・」

予感がしたのか、いつでも飛び出せる構えを取るアンバー

 ジュノ :「兄者・・・おかしいな・・・」

それに対してジュノは、アルの挙動に疑問を抱いている。

ジェイド:「はぁぁぁぁぁっ!!」

オーラ状のカタールを構え突っ込むジェイド、その動きは完全にアルの模倣である。

 アル :「模倣では俺には勝てない!」

アルは先手を取って、手にしたカタールでジェイドに斬りかかる。
カタールを受けるジェイドだが完全に力負けする。
何度か攻撃を受けるジェイド。
突然、目の前が暗くなる。

 アル :「尖っている茨のカタール・・・暗闇の特殊効果付きだ。」
ジェイド:「ぐっ・・・・ならっ!!」

きられる瞬間一気に魔力を放出 アルを弾き飛ばす

 アル :「っつ・・・」

すぐに体制を立て直すが、カタールによる連続攻撃は途切れてしまう。

 アル :「・・・なるほどな。それなら確実に俺と距離を取れるか・・・だが・・・!

カタールの届かない位置でも、アルにはできることがある。

 アル :「こいつはどうかな!」

無数の石つぶてをジェイドに向かって投げつける。
視力での確認の取れないジェイド 何とかよけようにも 何発かはつぶてを食らう

 アル :「スタンはしなかったか・・・まぁいい。どうせオトリ・・・」

石に紛れて、アルはジェイドのすぐ近くまで来ていた。

 アル :「ソニックブロー!!」

高速の8連撃

 アル :「裏切り者・・・エンチャントポイズンのオマケ付きだ。 効くだろう?」
ジェイド:「ぐっ・・・ああああああっ・・・」

衝撃であとずさる息を切らせ立っているが、何撃も食らっているにもかかわらず、
すさまじい再生力でダメージはほとんどなくなっていく。
しかし

ジェイド:「・・・っはぁ・・・はぁ・・・・」

体力までは回復は出来ないついには息が切れ始めた

 アル :「恐るべき回復力だが・・・あと少しか?」

アルの姿が消える。
とうぜん、次に来るのは・・・グリムトゥース。
ジェイドの足元から、複数の棘が飛び出し、その自由を奪う。

 アル :「あとは・・・お決まりだな。」

いつものように、ベノムダストからスプラッシャーでキメようとするアルだが・・・

ジェイド:「・・・・・・ふふっ、アル様・・・・」

動くこともせず突然微笑むジェイドに、アルは手を止める。

 アル :「・・・まだ余裕そうだな、ジェイド。」
ジェイド:「・・・いいえ、わたくしもソロソロ限界ですね。
      次の攻撃が・・・いえ、次のグレイトフル・デッドが最後です」
 アル :「予告か・・・食らったらいくら俺でももたないな・・・」
ジェイド:「姉上、場所の確認は大丈夫ですよね?」
アンバー:「・・・うん、おっけーだよ」
ジェイド:「では、後は止め時ですね・・・任せましたよ」
アンバー:「まかせなさい、おねーちゃんを信じなさい」

アルはカタールを仕舞う。

 アル :「最後の勝負と行こうか。
      当たればジェイドの勝ち、かわしきれば俺の勝ちだ!」
ジェイド:「・・・信じますよ姉上もアル様も・・・・・・」

今までしまっていた左手を抜くと、一点集中のオーラがそこにあった

 アル :「来い・・・ジェイド・・・!」
ジェイド:「当たると、痛いですからね?アル様」

前傾姿勢をとり構えるジェイド

 アル :「痛い・・・じゃ、済まないだろ、ソレは・・・」
ジェイド:「そうでした・・・・ふふっこんなわたくしが冗談をいえるなんて、思いもしませんでしたよ」
 アル :「来ないなら・・。こっちから行くぞ?」

待ちかねたかのように、アルが地を蹴る。
構えなおすジェイド、右腕を前に防御を取る。
ジェイドとの距離が縮まったとき、何を思ったかアルは突然ジェイドに背を向けた。
その行動に、一瞬ひるむジェイド。
アルは、バックステップを利用して背中からジェイドにタックルをかます。
ジェイドの体勢が崩れた瞬間に、その体をいなし、頚椎に手刀を入れる。

ジェイド:「っぁ・・・・・・・」

その場にがくっとひざをつく

 アル :「・・・距離を見誤らなくてよかった・・・
      うっかり左腕に当たろうものなら、その時点でこっちが終わりだからな・・・」
ジェイド:「・・・・・・!!!」

崩れた体制からアルの足を掴む

 アル :「な・・・しまっ!!」

気づいたときには、すでにグレイトフルデッドによる侵食が始まっていた。

 アル :「・・・くそっ!」

アルは急いでジェイドに掴まれた足を切断し、残った片足でその場を飛びのく。

 アル :「・・・っく・・・」

切断面から、おびただしい出血。
痛みもハンパなものではない。

アンバー:「アルさん!!」

駆け寄ろうとするアンバーをジェイドが弾き飛ばす

アンバー:「きゃっ!!・・・ジェ、ジェイドちゃん?」
ジェイド:「・・・・・・ジャマですよ姉上」

その顔は狂気をはらんだ微笑だった

アンバー:「・・・くそっ、侵食してきたか・・・アルさん!!大丈夫ですか!?」
 アル :「・・・この程度ならなんとかなる・・・
      しかし・・・あれがジェイド・・・」

本気で自分を殺そうとしているジェイドに、わずかばかりの恐怖を憶える。

 アル :「・・・負けていられないな・・・」

見るからにバランスが悪く、片足でフラついているアル。

アンバー:「状況は最悪ですが2ついいこともありますよアルさん」

何とかアルのそばまで駆け寄り小声で説明を始める

アンバー:「原石の位置は、ちょうどジェイドちゃんの中心線ど真ん中ですね。
      ギリギリ急所ではないので、直接割りに行っても問題ないはずです。
      あとあの状態になったってことは、魔力容量がソロソロ尽きる証拠です。
      他者から奪いに来ているということですからね」
 アル :「割った瞬間に魔力が爆発して消し飛ぶ・・・ということはないだろうな・・・」
アンバー:「・・・吸われて正常になったらアウトですよ」
 アル :「・・・その前に割れば問題ないわけか・・・わかった。」
アンバー:「アルさん、腕に自信あります?」
 アル :「もちろんだ。この職業は、確実に敵の急所を突いていかなければ成り立たない。
      狙い済ました場所を突くことなど容易。」
アンバー:「では、ジェイドちゃんの正中線のど真ん中に、体の表面から7センチのところまで、
      カタールなりナイフなりを垂直に突き刺してください。手前過ぎても奥過ぎてもだめですよ?」
 アル :「表面から7センチだな・・・わかった。」

それだけ言うと、アルはまたジェイドに向き直る。

 アル :「お互い、いい加減しぶといが・・・そろそろ本当に終わりにしようか、ジェイド。」
アンバー:「ジェイドちゃんは私が抑えます、その間に・・・お願いします」
 アル :「あぁ、まかせろ。」

片足で器用にステップを踏み、軽快な足取りでジェイドに急接近するアル。

ジェイド:「・・・すぅぅぅぅ・・・・・・」

大きく息を吸い力をためるジェイド

ジェイド:「いただきますよ、アル様・・・」

木々に向かい跳躍しアルへ襲い掛かる

 アル :「・・・終わりだ・・・」

二人が衝突する瞬間に、アルは左手でジェイドの肩を掴んでその勢いを殺すと同時に、
ジェイドの体を支えて固定し、右手に持ったナイフをジェイドの体の正面から・・・
きっかり7センチだけ突き刺した。
アルが支えていたおかげでジェイドの体勢が崩れることもなく、それ以上刺さることもなかった。
なにか硬い物資を突いた感触が、アルの右手に伝わってきた。


←GFD09へ  GFD11へ→