ジェイド:「・・・・・、・・・・・・。」

魔方陣の中で気絶していたジェイド。
目が覚めたらしく、何かを言っているが口パクのみである。

 クーラ :「あ・・・起きた・・・ま、その中にいたらなんも出来ないけどね
      まぁ聞こえるだけは聞こえるからゆっくりそこで鑑賞してなよ
      でもその前に・・・・」

クーラから吹き上がる魔法力がまた一回りあがっていく、と同時に
ジェイドが苦しそうにうずくまる姿が見える

 クーラ :「ふぅ・・・ご馳走様、また怪我とかしたらもらうからよろしくねー」

ひらひらと手を振りアル達へまた向きなおす

 アル :「・・・ジェイドにむりやり回復させているようなものか・・・」
 クーラ :「まーそんなところー?あいつは人の7倍くらいは魔法力持ってるからねー
      このくらいへでもないでしょ。
      と、いうことで私がダメージを受ければその分むこうさんの魔法力は減る
      最終的には衰弱して色々と楽しくはなるねー」
 アル :「なにか手はないのか・・・あの魔力吸収を止める方法・・・」
 クーラ :「私を倒せればいいんじゃない?簡単でしょ」
セラフィ:「アンバーさん、なにかわかりませんか・・・?
      あの魔力供給と止めないと、たとえクーラを倒しても、ジェイドさんが・・・」
アンバー:「そんなことをしなくてもこれを解除すればいいだけの話!!」

ジェイドを囲む魔法陣に手をかけ解除を試みるも電流を流されたように衝撃を受けるアンバー

アンバー:「くっ・・・・・ぅああああああ!!!」
 アル :「アンバー!?」
ジェイド:「・・・・・!!・・・・・・!!!」

魔法陣の影響で声が外に漏れることがなく何か訴えているが聞くことが出来ない

アンバー:「くっ・・・いい・・・から、そこでおとなしく・・・してなさい・・・」
ジェイド:「・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
アンバー:「もう少し・・・・・・もう少し!!!」

手をかけるアンバーの腕は激しく傷ついていた

ケルビナ:「手を貸しますわ!!」
ルーシィ:「私もっ!」

アンバーの横で、一緒に陣を破壊しようとするケルビナとルーシィ。
肉が引き裂かれるような痛みを必死にこらえ、ジェイドを救おうとする。

 クーラ :「ムリムリ、物理的な方法じゃムリだって。ま、エースなら出来そうだけどね」
 ジュノ :「物理的じゃムリ・・・ねぇ・・・」

なにかを考えるしぐさを見せるジュノ。

 ジュノ :「とっておきだけど、この際試してみるか・・・
      ファル兄ぃ、アレ頼む!」
 ファル :「アレ使うのか・・・わかった。」

ファルはジュノに何かを手渡したように見えたが、二人は何も持っていなかった。
しかし、ジュノは弓の弦を強く引く。

 ジュノ :「物理的じゃムリ・・・なんだろ? でも、コイツなら・・・ダブルストレイフィング!!」

矢もないのにスキルを使うジュノ。
しかし、そこにはたしかに矢があったのだ。
そう、物理的な実体を持たない、”無形の矢”が・・・
ジェイドを囲む陣に、二条の光の筋が放たれる。

アンバー:「刺さった!?・・・・よし、ここからっ!!」

刺さったポイントから一点にありったけの魔力を放出する

そして

音もなく魔方陣は崩れ去った

 ジュノ :「・・・うまくいったみてぇだな・・・ とっておきだぜ、取っておきな。 なんてな。」
セラフィ:「みなさん、腕を見せてください!」

重度の火傷でも負ったかのようにただれた二人の両腕を、丁寧にヒールで治療していく。

ジェイド:「・・・・姉上・・・・」

傷つききったアンバーの手をとりやさしい翠のオーラで包み込む

セラフィ:「女の子の肌に跡が残ったらタイヘンなんですから、もうこんな無茶はしないでください!」
ルーシィ:「・・・はい。」
ケルビナ:「・・・わかりました・・・」
セラフィ:「アンバーさんもです! もう少し考えて行動を・・・」

言いかけたが、中むつまじい姉妹の姿に、言葉を呑む。

セラフィ:「・・・あとで、二人と一緒にお説教です・・・」
アンバー:「ジェイドちゃん・・・」
ジェイド:「姉上・・・いいですよね・・・」
アンバー:「とめる方法はもうひとつしか残ってないけどいいの?」
ジェイド:「・・・・かまいません、これで最後ですから」
アンバー:「わかった・・・」

腕が元に戻るとジェイドは立ち上がり一直線にクーラの元へ

 アル :「二人とも、いったい何を・・・?」
 クーラ :「あーあ出てきちゃったか・・・でも結構吸ったからねもう勝ち目ナイでしょ」
ジェイド:「ジョーカーの力・・・あの程度と思うなよ・・・・」
アンバー:「アルさん・・・これからジェイドちゃんが勝ちますから・・・もしものときはアルさんの力をお借りします」
 アル :「・・・わかった。」
 クーラ :「いいよ、使ってみなよ!!そんなものがあるんだったらさぁ!!」
ジェイド:「・・・グレイト・・・フル・・・デッド・・・・・・」

ゆっくりと・・・それはもうゆっくりと身体の奥から吹き上がるような魔法力
ジェイドの魔法力を使ったクーラの3倍・・・いや8倍は密度の濃い魔法力である

 クーラ :「くっ・・・化け物め・・・どこからこんな・・・」

ジェイド:「・・・お前はわたくしの大切な友人や姉上に手を上げた・・・
      そのうえアル様すら奪おうとした・・・」

ジェイドの左腕が揺れ動いたように見えた

ジェイド:「どちらかといえば」

一瞬左腕が消えた

ジェイド:「後者の方が、気に入らない!!!!!」

その瞬間クーラは遙か後方へ吹き飛びその先の木へたたきつけられた

 クーラ :「・・・ぐはっ・・・なんだ・・・なにが・・・」

考えている隙にジェイドはすでに目の前に立っていた

ジェイド:「『JoKER』を開放するとちょっとハイになるんだ・・・それに・・・」

また左腕が消えると今度は向かって右方向へ弾き飛ばされる

ジェイド:「私でも制御できないんだ」
 クーラ :「・・・化け物が・・・」

圧倒的過ぎる力の前にその回復すら追いつかない状態である
悠々と歩き近づくくジェイド

ジェイド:「終わりだな・・・組織の痕跡は何一つ残さない・・・」
 クーラ :「そう簡単に・・・・」

一足飛びにジェイドへ向かうクーラ

 クーラ :「終われるかーーーーー!!!」

掴みみかかるその腕を押さえ力比べのような形になる

ジェイド:「・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 クーラ :「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

互いに魔法力を最大放出・・・力負けした方が全てをその身に受けることとなる

ジェイド:「・・・これが精一杯か・・・これじゃ・・・くっ・・・かはっ・・・」

突然のジェイドの吐血

ジェイド:「くそっ・・・もう持たないのか・・・」
 アル :「ジェイド!?」
 クーラ :「もらった!!」

その一瞬を見逃さずその全てを一気に放出

 アル :「ジェイド〜!!」

考えるより早く体が動いたアルは、一瞬にして二人の間に割って入る。
アルの進入により均衡を図っていた魔法力がはじけ 三者三様にダメージを受ける

ジェイド:「ぐっ・・・はっアル様!!」

ジェイドの呼びかけに対して、アルの返答は・・・ない。

ジェイド:「アル様・・・・・・アル様!!」

手をとり強く握ろうとも反応が返ってこない

セラフィ:「ジェイドさん、ちょっとどいてもらえますか・・・?」
 クーラ :「・・・ったく・・・なんてまねを・・・」

セラフィはジェイドを少し退かせ、アルの様子を見る。
服は傷だらけ、体はボロボロ、自慢のウサミミも、完全に消し飛んでしまっている。

ジェイド:「セラフィ様・・・アル様が・・・・・・アル様が・・・」
セラフィ:「・・・大丈夫・・・私たちも特殊な体質です。
      そう簡単に死んだりはしませんよ・・・」
 クーラ :「いい男ってのは早死にするってのが相場って言うけどねー」
セラフィ:「瞬間的に膨大な魔力を受けたために、一時的な仮死状態になってるようですね・・・」
ジェイド:「・・・・・・・・・クーラ」

再び魔法力を吹き上げるジェイド

ジェイド:「・・・・・・お前、代わりに死ね」

 クーラ :「・・・上等!!返り討ちにしてやるよ!!」
アンバー:「ジェイドちゃんそれ以上は本当に・・・」
ジェイド:「平気です姉さん・・・すぐ終わらせます・・・」
セラフィ:「・・・兄さんは預かりますね。」

セラフィは、アルを引きずって二人から離れる。

セラフィ:「しかし・・・これは少々マズイです・・・」
ケルビナ:「死んではいないのですわよね?」
セラフィ:「はい、ですが・・・心肺機能も停止してますので、このままでは・・・」
ルーシィ:「そんな・・・」
セラフィ:「できるだけのことはしてみますが、正しく処置をしなければ心肺停止でそのまま死に至ることも・・・」
 ファル :「だいじょうぶなんだよな?」
セラフィ:「・・・私も経験のないことです。基本的な応急処置は取りますが、それ以上のことは・・・」
 ファル :「なんともいえないか・・・」

一同がアルの容態を案ずる中、ジェイドはクーラとの最終決戦に臨む。

ジェイド:「時間が惜しい・・・来い」
 クーラ :「・・・遠慮なく」

拳に魔法力を込め殴りかかるも、流れるようにあしらわれるクーラ。
先ほどと同じ形に力比べの状態になると、また魔法力の勝負となる。

 クーラ :「これで最後だっ!!」
ジェイド:「・・・・・・そうだな・・・お前のな!!」

先ほどとは違い、クーラを圧倒する魔法力の放出でクーラを弾き飛ばす。
弾き飛ばされた先で大の字に転がるクーラ。
その横にはジェイドがいた。

 クーラ :「・・・・・・負けか・・・結局敵は討てず・・・か」
ジェイド:「何の話だ?」
 クーラ :「・・・エースの反乱のおかけで、私は一緒に組んでいた仲間を失った。
      組織崩壊の後私は見た。あんたの持つ『JoKER』をもって瓦礫から立ち去るエースの姿を
      それを手に入れるために組織を壊滅させたんだろ!!!
      そのためだけにみんなを・・・みんなを・・・・・・っ」

クーラの目には涙がたまり一筋流れていった

ジェイド:「それは違う。織壊滅の原因は、ムリに私と『JoKER』を同調させようとした組織自体だ」
 クーラ :「・・・そんな戯言を・・・」
ジェイド:「いいから聞け・・・・あの時私には同調に耐えうる器ではなかった。
      それを機械的に押さえつけ実行した。結果耐え切れずに、外へ出す以外方法も時間もなかった。
      ゆえに組織は壊滅し残ったのは姉さん・・・エースと私だけだった。
      その危険性から『joKER』を持ち去り、長い年月をかけて力をそいで、
      ようやく私という器にいれることができた。
      だがそれも不完全。定期的に抑制剤を投与しないと私自身も耐えることが出来ない。
      ・・・・・・だから元を正せば、半分は私の責任ということにもなる・・・」
 クーラ :「・・・・・・何をいまさら・・・」
ジェイド:「ああ、いまさらたがすまない・・・これしか言葉がでてこない・・・」
 クーラ :「ほんといまさら・・・」

クーラの身体が徐々に足元から崩れてきた

 クーラ :「・・・なら私は・・・今までなんのために・・・」

崩れた先から肉体は灰になっていく

 クーラ :「・・・でも、いいか・・・・・・真実がわかれば」

上半身も崩れ始めてきた

 クーラ :「・・・・・・こっちも・・・すまなかったな・・・ジョーカー・・・」

この言葉を最後にクーラの身体は全て灰になった

ジェイド:「・・・・・・安らかに眠れ・・・」

魔力放出を抑え一息つくと・・

ジェイド:「・・・!!アル様・・・アル様は!!」

急ぎアルの元へ

セラフィ:「さっきから応急処置は続けているのですが・・・一向に・・・」
 ジュノ :「・・・」
 ファル :「ジュノ、さっきから黙ってるけど・・・」
 ジュノ :「・・・ごめん、みんな。」
ケルビナ:「ど、どうしたんですの?いきなり・・・」
 ジュノ :「俺、知ってんだよ、ホントは。」
ルーシィ:「なにを?」
 ジュノ :「・・・こうなったときの、起こし方。」
 ファル :「なっ・・・!?」
セラフィ:「どうしてもっと早く言わないんですかっ!」
 ジュノ :「ゴメンって! でもコレ、特定の人がやんねぇと意味ねぇからさ・・・」
 ファル :「特定の人・・・?」
 ジュノ :「そ。仮死状態の相手を想う気持ちが強いほど、成功率は高いっていう、ベタの設定だけどな。」
セラフィ:「どうして知ってるんですか?」
 ジュノ :「昔・・・だけどな。まだ、天使連盟が俺と兄者だけだった頃、
      無茶しすぎて同じ状態になった俺を、兄者が治してくれたんだ。
      あのときの俺たちは、お互いに唯一の肉親だったからな・・・」
ケルビナ:「とすると・・・実行するのは・・・」
 ジュノ :「お察しの通り。 戦闘後で疲れてるトコすまないけど・・・ジェイド、お願いしていいかな?」
ジェイド:「はい!!! わたくしでよろしければどんなことでも!!!」
 ジュノ :「じゃ〜、まずコレ、ウサミミな。兄者が大切にしてるモンだから。
      コレを兄者の胸に押し当てて、眠りから優しく起こすように、耳元にささやく。
      んでもって最後はお決まりの・・・もうわかるだろ?」
ジェイド:「・・・・・・・・・わかりました・・・」
 ジュノ :「ぁ〜・・・いちおう背中向けておこうか? みんなの前じゃハズいだろうし・・・」
ジェイド:「・・・・・・出来れば・・・お願いします・・・」
 ジュノ :「りょ〜かぃ。」

アルとジェイドをその場に残し、数歩下がって二人に背を向ける一同。
みんな心配そうな表情だが、ジュノだけがなぜかニヤけている。

 ジュノ :「ま〜、ぱぱっとやっちゃってくれよ。」
アンバー:「いーなー いーなー・・・私もこんな人とめぐり合いたいなー」

ぶつくさいいながら背を向けるアンバー

ジェイド:「・・・・・・アル様・・・」

一同が後ろを向いているのを確認して、うさ耳をアルの胸へ。

ジェイド:「・・・アル様・・・目をお開けになってください・・・」

耳元でささやくと、アルの胸に当てられていたウサミミがすぅっと消え、アルの頭から生えてきた。
そしてジェイドは、その口をアルの口元へ・・・

ジェイド:「・・・・・・愛してますよアル・・・様・・・・・・ん。」

そっと口付けをする。

 アル :「ん・・・? ん!? ジェイド!?」

突然のことに、驚きを隠せないアル。

 アル :「な、どうしたんだ? こんなところで・・・その・・・」
ジェイド:「・・・アル様・・・・・・アル様っ!!!!」

涙を流しつつ、ジェイドはアルにぎゅっと抱きついた。


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