ルーシィ:「誰!?」

拍手のする方向に視線を向けるルーシィ

 ??? :「いやーなかなかの健脚だね・・・さすがアサシン見習いってところかなー?」

ゴールテープのかかっていた木の上に一人・・・♀ローグがいた

ルーシィ:「見習いじゃないよぅ! この服、見えないの〜? 私だって、ちゃんとしたアサシンなんだからっ!」

怖じることもなくむくれるルーシィ。

 ??? :「あっはっはっ・・・ごめんごめん。あんまりにかわいーんで、ついね♪」

そういうとスタっと木の上から降りてきた

 ??? :「折角テープはったんだし、1位の人がちゃんと切ってほしかったなー」

世間話をするように近づいてくるのは件のローグ・・・クーラであった

ルーシィ:「それはごめんね。クーラさんと前に会ったのは・・・海だっけ? こんなところで何してるの?」

”敵”と認識している相手ではあるが、あまり敵意を見せてこない相手に対し、ルーシィもできるだけ穏便に済ませようとする。

アンバー:「・・・・・・なにをしにきた・・・むしろ何をしている?」
 クーラ :「かけっこしてるんだもーん、このくらいは演出しないとねー」
ルーシィ:「あ、アンバーさん! ちょっと落ち着いて〜!」
アンバー:「・・・大丈夫、今は冷静だよルーシィちゃん・・・でもちょっと下がっててね」
ルーシィ:「やだ。」

アンバーの申し出をキッパリ断るルーシィ

ルーシィ:「だってアンバーさん、また前みたいにケンカするんでしょ? ダメだよ、そんな力任せじゃ。」
 クーラ :「しっかし、こんなところに隠れてるなんてねー・・・・逃亡者にはもってこいってか?」

ケタケタと笑い出すクーラ

ルーシィ:「クーラさんも! そんなに挑発しちゃダメ〜〜!!」

あくまで戦闘を回避しようと試みるルーシィ

アンバー:「・・・・ルーシィちゃんにはかないませんねー・・・・」

ふーっと一呼吸おくアンバー

アンバー:「じゃ、本題でも聞いて置こうか?クーラ」
 クーラ :「あら、すっかり落ち着いちゃって・・・でもまぁいいか。今日はゲームのご招待に来たの」
ルーシィ:「ゲーム?」

ゲームと聞いて、ルーシィの目が光った。
アサシンになったとはいえ、楽しいことに目がないお年頃なのだ。

 クーラ :「そ、いうなれば・・・障害物競走?」
ルーシィ:「まかせて! 走るのは得意だよ〜♪」
 クーラ :「ちゃんと賞品もあるからねー♪どう?参加してみない?」
アンバー:「御託はそれで終わりか?」

右手にありったけの魔法力が蓄積されていく

アンバー:「目的は何だ?クーラ」
 クーラ :「べっつにー? 皆が参加できるアトラクションを用意してるだけよ?」
ルーシィ:「・・・・・・・」

さっきまで浮かれていたルーシィの顔が、なぜか沈んでいる。

 クーラ :「さってールーシィちゃん・・・だっけ?商品はなんだと思うー?」
ルーシィ:「・・・・・・アンバーさん?」
アンバー:「・・・・・・・・・」

ある意味、クーラのやる気のなさに気がそがれ始めていた

アンバー:「・・・・・・はぁぁーーーーーーー・・・
      もうさ、付き合ってあげるからさっさと要件済ませてくれないかな・・・」

アンバーの戦意喪失を確認し、ルーシィも口調を戻す。

ルーシィ:「賞品かぁ・・・ 新しい武器とか欲しいな〜・・・
      今、ますたーと同じ武器使ってるから、一緒に狩りにいけないし・・・」
 クーラ :「ふふっ・・・それはねー・・・こーーれっ!!」

クーラが手を振ると木にかかっていたテープが動いてルーシィを拘束し、
そのままクーラの元まで手繰り寄せられた。

ルーシィ:「え? きゃぁぁぁぁぁぁ!!?」

一瞬のことでアンバーも反応が遅れてしまう。

アンバー:「っ!!クーラ!!キサマッ!!」

魔法を放とうにも、ルーシィが捕まってはむやみに打つこともできない。

 クーラ :「はい、豪華商品のルーシィちゃんの出来上がりー♪ んーーーかわいーわー♪」

のんきにほおずりをしている。

ルーシィ:「ちょっ、クーラさん! 離してよぉ!!」

ありったけの力でもがくルーシィ。
しかし、体にはしっかりとテープが巻きついている上に、クーラに抱え込まれているため、
到底のがれることはできなかった。

 クーラ :「んーもがいてるのもかわいいわー・・・でもちょっと静かにしててねー」

トン

延髄に手刀を当てると、ルーシィは気絶した。

アンバー:「きっさまぁあ・・・・・・」

さすがのアンバーも手が出せずにいる

 クーラ :「さ、もうわかったでしょ?この子を取り返したかったら、私の用意するステージに来るしかない。
      場所はこの紙に書いてあるから、指示通りに動くんだな。
      ちゃんとついてくれば、すぐルーシィちゃんは返してあげるよ」
アンバー:「・・・・・・・・・」
 クーラ :「どーせ二人だけで片付けようとしてたんだろうけど、そうは行かない。
      特にエース、オマエには無力さを存分にかみ締めて死んでもらわないと気がすまない」

このとき初めて見せるクーラの殺気・・・アンバーのものと勝るとも劣らないものである。

 クーラ :「じゃお先に失礼するよ。お仲間がこられても面倒だからね」

ひょいっと足元に紙が投げられた

 クーラ :「それが案内状ね。じゃまたね、エース・・・・」

そうしてクーラは森の奥へ消えていった。

アンバー:「・・・・・・・・・」

アンバーはその場に立ち竦み、その腕は怒りで震えていた。


一方、ルーシィを除いた天使連盟一行。
雑談に花を咲かせながらゆっくりと歩いていると、森の出口にアンバーが立ち尽くしているのが見えた。

 ジュノ :「あれアンバーじゃねぇ?」
 ファル :「お、ホントだ。 おーい、アンバー!」
アンバー:「・・・・・・・・・」

アンバーは動きもせず、反応すらしない

セラフィ:「どうしたんですか?アンバーさん・・・」
 アル :「ルーシィの姿が見えないが・・・先に帰ったのか?」
アンバー:「・・・すいません・・・連れ去られました・・・」

搾り出すように言葉をつむぐ。

アンバー:「私がいながら・・・すいません・・・」
 ジュノ :「連れ去られ・・・た? ルーシィが・・・?」
ケルビナ:「た・・・大変ですわ! 急いで探さないと・・・」
 アル :「落ち着けケルビナ。幸い、アンバーが目撃してる。
      一旦お茶会の会場に戻って、そこで詳しい話を聞こう。
      それでいいか? アンバー。」
アンバー:「・・・はい。」

アンバーの同意の下、ふたたび森の家に足を運ぶ。
扉を開けると、丁度片付けおわたっところだろうか・・・ジェイドが出迎えてくれた。

ジェイド:「おかえりなさいま・・・せ?・・・・・・どうされたのですか?皆様」

帰るといっていた一団がまた戻ってきた・・・困惑するのも当然である。

 アル :「少し事情があってな・・・」

いきなり本題を切り出しては混乱すると思い、あえて伏せる。

ジェイド:「・・・左様ですか・・・」

深く聞くことはとりあえず置いておいた

ジェイド:「姉上?」
アンバー:「ごめんジェイドちゃん・・・ちょっと向こうで手を貸してくれない?」
ジェイド:「・・・・何があったんです?」
アンバー:「後で説明するから、今はいうことを聞いて!!」
ジェイド:「・・・わかりました・・・すいません皆様、お席に掛けてお待ちしていただいてもよろしいですか?」
 アル :「・・・わかった。」

アル達はそれぞれ適当に腰掛け、二人を待つことにした。
奥の部屋へ入っていく二人。
しばらくして、おかしな爆音とアンバーの叫び声が聞こえた。

 ジュノ :「な、なんだ今の!?」
セラフィ:「・・・アンバーさんの声・・・?」
 ファル :「一体どうしたってんだ・・・」
 アル :「・・・自分がいながら、目の前でルーシィを攫われてしまった・・・
      そのことに対する自責と、相手に対する怒りだろう。」

落ち着いたところで二人が出てくる。
いやに肌がつやつやしているジェイドと、大分疲弊気味のアンバーが出てきた。

ジェイド:「お騒がせしました皆様」
 アル :「アンバー、やつあたりも程々にな。」
アンバー:「・・・・こうでもしないと平静を装えないので・・・」
 アル :「さて・・・本題に入る前に少しアンバーに言っておくことがある。」
アンバー:「なんでしょうか」
 アル :「今回の件、アンバーが自分のせいだと思うのも仕方がないかも知れないが、それは違う。」
セラフィ:「と言いますと・・・?」
 アル :「もちろん、イチバン悪いのは待ち伏せして攫った奴なんだろうが・・・
      アンバーにつられて飛び出したルーシィにも、それを止め切れなかった俺達にも責任がある。」

それを聞いて、天使連盟のほかのメンバーも押し黙ってしまう。

 アル :「だが、いまさらそのことを後悔しても仕方がない。
      今はアンバーから詳しい事情を聞いて、取り戻す方法を考えよう。
      攫った奴の目星はだいたいついてるからな。
      ・・・クーラだったか? あのときのローグ。あいつだろう?アンバー。」
アンバー:「ええ、そうです。この紙どおり行動すればすぐに返すといってましたがね」

机に一枚のメモ書きの紙を広げる

 アル :「なんて書いてあるんだ?」

アンバー:「『二人と一団全員でアインブロックに来い、そこでまた指令を出す』と」
 ファル :「アインブロック・・・?なんであんな工業地帯に・・・」
ケルビナ:「わかりませんわね・・・」

セラフィは一人で何かをつぶやく。

セラフィ:「今確認したんですけど、すぐ近くにポタをとってありました。準備ができたらスグにでも。」
 アル :「そうか。だが準備といっても、ここでは・・・」
 ファル :「アル兄ぃ、俺のカート忘れてねぇ?」
 アル :「・・・まさか、”また”コッソリ持ってきたのか?」
 ファル :「備えあればナントヤラ・・・だろ〜w」
 アル :「・・・こんなときだけ準備がいいんだな。」
 ファル :「褒め言葉・・・ってコトにしとくぜ。ホレ」

ファルはメンバーにそれぞれの装備を渡していく。

 アル :「ジェイド、アンバー。悪いがスグに準備をしてくれ。」
ジェイド:「はい・・・姉上いきましょう」
アンバー:「・・・・・・・・・」

アンバーは黙ったまま奥へと下がっていった。
程なくして二人が奥から出てくる。
それぞれ職業の衣類をまとうが、ジェイドは黒アンバーは白が基調の衣装である。

ジェイド:「おまたせしました、皆様」
アンバー:「・・・さぁ行きましょうか」
 アル :「変わった衣装だな・・・まぁいいか。セラフィ、頼む。」
セラフィ:「わかりました。ワープポータル!!」

セラフィが手をかざすと、その場に光の扉が開いた。

 アル :「行くぞ!」
 一同 :「お〜〜!!」

全員が扉に入ったのを確認し、セラフィもスグ飛び込む。
着いた場所は、アインブロックのすぐ南。
街の入り口の目の前だった。

 ジュノ :「近っ!」
 ファル :「一歩間違えば、柱やカベにぶつかるぜ、コレ・・・」
ケルビナ:「ゎぶっ!!」
 アル :「・・・言ってるそばからぶつかってるヤツもいるけどな・・・」
ケルビナ:「うぅぅう・・・」
セラフィ:「すみません、ちょっとギリギリすぎましたか・・・」
 アル :「・・・かなり度胸が試されるな、これは。」
セラフィ:「あははは・・・」
 ??? :「・・・珍しい格好のセージとアコ・・・・君たちの事かな?」

入り口からきた見知らぬプリが、開口一番にそんなことをいう。

 アル :「誰だ・・・?その言葉からすると、ジェイド達の知り合いでもないようだが・・・」
 ♂プリ :「いやー、オレは単にあんたらみたいのが来るから、ポタをしてやってくれって頼まれたんだわ」
 アル :「・・・そうか。では、早速だが頼んでいいか?」
 ♂プリ :「でー場所が二つあってね、そっちに選ばせてやれってさ。どーするん?」
 ジュノ :「2箇所・・・?」
セラフィ:「詳しい場所を伺ってもよろしいでしょうか?」
 ♂プリ :「一方はフェイ、もう一方はリヒだ」
 アル :「すまない、少し時間をくれ。ジェイド、アンバー」
ジェイド:「はい、わかりました」
アンバー:「・・・・・・・・・」
 ジュノ :「兄者、ジェイドとアンバーに何を指示したんだ?」
 アル :「いや、何も。」
 ジュノ :「何もって・・・じゃぁ二人は一体・・・?」
 アル :「俺はただどっちがいいか相談しようとしただけなんだが・・・
      二人が何をどう理解したのか全くわからん。」
 ジュノ :「・・・・・・」
ジェイド:「姉上・・・お気持ちはわかりますが、冷静になってください。そこを付かれるのが目に見えてますよ」
アンバー:「うん、わかってるんだけどね・・・あいつの存在自体が許せるものじゃないの・・・わかるでしょ?」
ジェイド:「それはわかりますが・・・・」
アンバー:「大丈夫、もうへまはしないよ」
 アル :「ジェイド・・・ちょっといいか?」
ジェイド:「はい、アル様」
 アル :「さっき、俺が呼びかけただけで”わかりました”と言ったが、一体何を理解したんだ・・・?」
ジェイド:「・・・・え、何かおっしゃられたのですか?」
 アル :「あ、いや・・・聞こえてなかったならいいんだ。
      ところで、この男のポタ・・・どっちがいいと思う?」
ジェイド:「・・・どっちかにいる・・・ということでしょうか?」
 アル :「アンバー、クーラがなにかヒントのようなことを言ったとか、そのメモに書いてあるとか
      ・・・そういうことはないか?」
アンバー:「いえ、そこまでは書かれていませんし・・・・」
 ♂プリ :「あのー・・・・」

横から口を挟む♂プリ

 ♂プリ :「伝言で『一団の目標はどっちかに、二人の目標は両方に』っていってたぜー?」
 アル :「ということは・・・どちらかにルーシィがいるってことか。
      で、二人の目標は両方・・・ということは、クーラにも仲間がいると捉えてもよさそうだな。
      一方を片付けたらもう片方に行く必要もありそうだが・・・どうする?ジェイド、アンバー」
アンバー:「私たちはそれぞれに向かえばそれでいいのですが・・・アルさんたちはどうします?
      合流しようにもなかなかの距離ですよ?」
セラフィ:「残念ですが、どちらもポタは・・・」
 アル :「そうか・・・」

アルは少し考えた。

 アル :「クーラのことは少しわかっているが、その仲間の情報が全くない。
      合流が無理となると、戦力を均等に分散するのが得策だろう。」
アンバー:「ちょっと話したのですが私はリヒへジェイドちゃんはフェイへ行きます」
セラフィ:「それでは、私はリヒタルゼンへ行きます。 各方面に回復役が一人いたほうがいいでしょうし。」
 ジュノ :「セラ姉ぇは、回復役っつ〜よりも前衛・・・」

言いかけたところで、背筋も凍るほどの視線がジュノに注がれた。

 ジュノ :「な、なんでもねぇ!」
 アル :「さて、残るは俺・ファル・ジュノ・ケルビナだが・・・
      戦力的に俺がリヒ、残る3人がフェイで、4:3に分かれるのはどうだ?」
 ジュノ :「そっち、ある意味最強メンバーだなぁ・・・」
ケルビナ:「戦い方を考えれば、こちらも十分強いですわ。」
 ファル :「俺、役に立つのか?」
 ジュノ :「矢、持ってもらわねぇと。」
 ファル :「そか。」
 アル :「異存はなさそうだな。」
ケルビナ:「ええ、ありませんわ。」
 ジュノ :「こっちは任しとけってw」
 アル :「頼もしいな。さて、これでメンバーが決まったわけだが・・・」
アンバー:「とりあえず、メンバー構成を整理しておきましょうか」
 アル :「フェイに行くのがジェイド・ファル・ジュノ・ケルビナの4人。
      リヒに行くのがアンバー・俺・セラフィの3人だ。」
アンバー:「ふむふむ、戦略の練り甲斐がありますねー」
ジェイド:「では、急いで向かいましょうか。ルーシィ様が心配です」
 ♂プリ :「じゅんびいいかーい?ポタ出すよー?」
 アル :「そうだな。名もなきプリさん、頼む。」
 ♂プリ :「・・・んまぁ名乗ってねぇからしゃーねーけど・・・まぁいいか」

どこか不満げなプリは2つのポタを出す

 ♂プリ :「右がリヒ、左がフェイだ。さー行った行った」
 アル :「いよいよだな・・・みんな、うまくやれよ!」
セラフィ:「精一杯頑張ります。」
 ファル :「なんとかやってみるさ。」
 ジュノ :「だーいじょぶだってw まかしときな!」
ケルビナ:「皆様の盾として、耐え抜きますわ!」
ジェイド:「アル様、セラフィ様、姉上をお願いします」
アンバー:「皆さん、ジェイドちゃんをよろしくお願いしますね」

互いの健闘を祈り、メンバーはそれぞれの目的地へと続くポータルへ消えていった。


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