チリ通信−25 (2006年11月6日)

皆様、いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
日本は肌寒いようですが、こちらイキケでは暑さ全開で過ごしています。

10月も前回の流れで、残念ながら仕事しかしていません。
どっぷり仕事にはまり、偏執的に仕事をしています。
しかし仕事とはいえ私がここに来た目的の"明日のためにその壱"なので、疲労感はありますが苦労ではありません。
仕事をこなすためには体力が基本なので、睡眠時間を削ってでも食べるようにして乗切って来ました。
ところが最近はヒラメの種苗が成長し配合飼料を与えるようになり、生物餌料より手間がかからず仕事が楽になっています。
そして困ったことに今度は私の腹が出てきて、朝は腹筋トレーニングを始めるようになりました。
近々2回目の種苗生産が始まるので、すぐ元に戻るでしょう。

最近ヒラメの養殖をしたいという企業が現れ、大学と技術提携を結ぶ準備中です。
私の居る第1州では初めての魚類養殖企業となるわけで、将来の養殖振興のためにもぜひ成功さしたいものです。
現在飼育中の種苗を使っての養殖となるので、餌やりにも力が入ります。
とはいえ企業と大学それぞれに思惑があり、綱引きをしているところです。
どんな風に着地するのかはまだ分かりませんが、相変わらず大学の動き方がスローなのが気になるところです。

本命の海洋牧場計画は政府財団の募集に間に合わなくなったので、形を少し変え違う財団に提出すべく準備中です。
12月から募集開始なのであまり時間はありませんが、基本計画はできているのでフォーマットに乗せるだけです。
しかしながら協賛企業の獲得が一番難しいそうで、今回は相棒を入れ替えて準備する予定です。
募集要項の書きぶりや企業へのネゴは、私には見えないところなので基本アイデアを相棒に吹き込むだけです。
いずれにしても企業を獲得するためには生産された大量種苗を見せることは大きな助けとなるので、
もうすぐ始まるイシダイの種苗生産が重要となります。
生産の成否が私のチリでの存続の鍵となるはずですし、ひいてはチリ北部の海産魚養殖発展のターニングポイントとなるでしょう(たぶん)。

今回は貼り付ける写真が無いのでヒラメの稚魚の話をします。

ヒラメの孵化仔魚は3mm位の透明な形態をしています。
この形はムラタでも同じで、多くの魚で似通っているようです。
3日かけてお腹のヨークを吸収し、この間に口や肛門が開き消化できるようになります。
また目の構造も発達し、透明だった目が黒くなり見えるようになります。
全ての形態の変化はプランクトンを採るためで、生き残るためのものです。
面白いことにヒラメと言えども孵化後は両側に目があり、普通の魚のように泳いでいます。
孵化後20日頃には背びれが6本くらい伸びて格好がよくなります。

   

25日頃から右側の目が左側に徐々に移動します。
したがってある時期はおでこ(体の中心)に右目があります。
そして右目が左に移動完了すると、底に着底しよく知られた形となります。

もう一つのヒラメの特徴ですが、はっきり言って"頑固"なことです。
特に天然魚の中には、死ぬまで餌(鮮魚)を受け付けない個体があります。
斃死魚はまさに骨と皮だけです。
この経験は日本・エクアドル・チリでもありました。
どういう意図があって自然の摂理に逆らって死を選んだのか聞きたいものです。

   

ヒラメとは不思議な縁で23年前に初めて日本で種苗生産をし、エクアドルでも近似種の種苗生産をし、
チリではハワイから来た(日本原産)ヒラメの種苗生産をしています。
生産の失敗で殺した魚もさることながら、生産できた魚も人生をまっとうせず人間に食べられてしまったわけですから因果な商売だと思います。
でも作った稚魚が元気に泳ぐ姿を見ると、やっぱりこの仕事が好きといえます。

というところで来月につづく・・・。



        


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