『海の未来』 10期 壁谷
人間は、人口の急激な増加により『生活場所』『食料』『生活必要物質(鉱物エネルギー源)』が現在の必要量の数倍将来必要になって来た。
それではどこからその必要物を得るのか?現在人類はこの必要物を海からもとめようとしている。
しかし海はそれを人間にたやすく明け渡してくれないだろう。
では、人類はどのようにして海からこの三つの必要物を手に入れるのだろうか?
人類は海洋開発計画の名のもとに海に必要物を得るための戦いを始めた。
この海洋開発の成・否によって人類の未来が決まるだろう!
それほど海は現在人類にとって大切な物である。
人類の未来を決めると思われる海洋開発計画とはどのような物か?
三つの必要物について一つずつ説明しよう。
まず『生活場所』を取り上げて見たいと思う。
海洋開発計画による生活場所の確保の方法は、海底住居として計画されている。
人口の増加による陸上の生活空間の減少に対応する為に、大陸棚に対水圧設計をした住居(アパート式)のものを作り、
そこに人間を住まわせると言うのが海底住居計画である。
これにより陸上を他の方面に利用できる。
また工場の一部も海底に移すことも可能となり行なわれるだろう。
つぎに人口増加による食糧問題の解決の道として海産生物の利用が近年注目をあびている。
この食糧問題は重要なもので人類の死活の問題なので、海産生物利用の方法が色々考えられている。
その方法の二・三をここで取り上げて見よう。
その一つの方法は現在実行されようとしている海産物の保護と計画的な採集である。
これが200海里問題の一つの理由となっている。
上記の方法をもう一歩進めた計画が「海中牧場・農場計画」である。
牧場計画の方法は魚類を陸上の方法と同じようにして飼育し動物タンパクを手に入れようとする物である。
農場計画とは海底の一部を陸上の農場と同じように海産植物が生育しやすいようにして栽培しようとする物である。
この牧場・農場計画は現在、原始的方法ではあるが一部実行されている。
将来は海洋の大部分のスペースを利用して行なわれるだろう。
他に少しニュアンスが異なるが、オキアミ・プランクトンなども増殖場において育成され利用されるだろう。
三つめの問題として科学の進歩と生活状態の向上にともなって、生活必要物質の不足問題も海に眠る資源を利用すれば、
数十年また資源の物によっては数百年、数千年の間、人類は海の資源を利用できるだろう。
この資源を得ようとする計画が「海底資源開発計画(この中には生物資源は含まれない)」である。
この資源開発計画の鉱物は、現在船上からクレーンなどを利用して採集する方法を取っているが、
将来はもっと効率の良い方法が取られるだろう。
エネルギー資源についてはまだ発見されていない油田の調査・利用、潮流を利用した発電(現在フランスで実用化中、ソ連も?)、
海水中の重水素の注出、などの現在以上の効率で採集する方法が開発中である。
しかし、これらの開発計画で機械に完全に海中での活動をまかせてしまうということはできないため、
人間が直接タッチし、海と戦わなければならないだろう。
海洋開発計画に携わるその人々のことをアクアノート(潜水技術者)と呼ぶ。
[ここで私事になるだろうが、このアクアノートの必要性がこれから高くなってくるだろうと思える。
できることなら我がクラブからも先輩に続く人がでてきてほしいものである。]
話しが少し横道にそれたが、海は人間の将来の生活の基盤となるだろう。
ここまで海の未来を私なりに考えて書いて来たが、現在「将来の海」がどうなるのか誰も確信を持って言うことはできないだろう。
もしかすると、「海は公害汚染によって死の海となるかもしれない?」「清らかな生命の母と言われる海にもどるかもしれない?」
誰も現在どうなるのかわからない。
しかし、人間は生きるために海が必要なことを知っている。
「海の未来」には希望がもてるのではないだろうか!
海は生きている!
海は無限の可能性を秘めてきらめく!
海は涙しない!しかし海は泣いている!
1978年
マダウミハ ムゲンノ カノウセイヲ ヒメテイル!
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