『これからの海』 1期 三好
『人工魚礁』をあつかっている立場から現在の沿岸漁場開発の状況を魚礁の視点から話を進めようと思う。
日本は四面海に囲まれ食糧生産は古来より稲作と漁業の組み合わせからなってきた。
しかし戦後食生活の変化により動物性たん白質の依存の割合が急激に多くなってきた。
がそれでもなお水産物による割合はまだ過半を占めているそうである。
ここで日本の漁業の現状をみると漁業総生産は昭和47年には1千万トン台になり、漁業従事者の所得もかなり伸びてきた。
この1千万トンの漁獲はおもに大規模漁業の発展であり、『すけそうだら』の漁獲によるものであった。
余談だが私の学生時代、水産利用学の授業の中で清水亘先生がこのようなことを言った。
「すけそうは無尽蔵だよ、全部を漁獲したらオホーツクの海面は10センチはさがるだろう」、
ところが10年もたたないうちに『すけそう』はみるみる貧相な魚体となった。
いかに日本の漁獲量がすさまじかったかを物語る一コマであったことを今更のように思う。
それから、沿岸海域についてみると高度経済成長の中で大規模な臨海工業地帯の造成や沿岸の都市化が進み、
漁場環境の悪化はすさまじいものがあった。
海の汚染、埋立てによる漁場の喪失などによる資源の減少、生育環境の悪化は重大な問題として今になってふりかかってきた。
また一方、遠洋漁業では開発途上国を中心とした200カイリの漁業専管水域の設定がでてきた。
この様な情勢の中で、沿岸漁業の重要性を再認識する気運が強まってきた。
水産庁は沿岸漁場整備開発法案を国会に提出し、昭和40年5月17日公布施行された。
この沿岸漁場整備開発事業の事業内容を簡単に説明すると
@大型魚礁設置事業、人口礁漁場造成事業
A幼稚仔保育場造成事業、大規模増殖開発事業
B漁場造成事業、浅海漁場開発事業
C漁場環境維持保全対策事業
の4項目に大きくわけられる。
この中で@とAが直接私が関係する人口魚礁を扱う事業である。
たとえば@の人口漁場造成事業は、今までの天然礁の補助的役割の魚礁でなく、
人口魚礁による独立した漁場を造成し、親魚の保護、未成魚の育成、育成環境の造成をはかることにより、
沿岸海域の魚類育成と沿岸沖合回遊魚群の蝟集等を図り、より効率的な漁場を造成する。
(沿岸漁場整備開発法の解説より)
Aの幼稚仔保育場造成事業は地先の増殖適地のうち、天然又は人口放流の幼稚仔の保護育成を図る場を造成する。
(前述と同じ本より説明)
この@(魚礁漁場整備開発事業)とA(増殖場整備開発事業)を合せ発展させることにより水産庁が今後大きな構想を持っている
海域総合開発という事業は進む。
一般に言われる海洋牧場構想である。
今、日本の4ヶ所にこの海洋牧場を設定し、2年間の調査を行ない55年度から本格的な海洋牧場事業が動きだすようである。
日本の沿岸をとりまく開発はこのような現況であるが、
我々SDC部員は卒業し海から遠ざかろうとも一度海とかかわった以上この日本の海、
まして東京に住みながら異臭をはなつ東京湾を二度と見たくない気持を持ち続けなくてはならないだろう。
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