『潜水体験談』 (石垣島にて)  7期 西原


 私が海に潜り始め早や4年の月日が流れた。

いつも海を眺めて思い出す事は、一年生の春合宿で八重山群島石垣島川平へ行った時の事です。

憧れの八重山の海で潜り、うかれていた私にこの日の出来事は、一生忘れる事ができません。


 その日はリーフから外海へ、スクーバダイビングを行うためリーフへ集合した。

バディが決定され、私は米田先輩と組む事になった。

リーフから海を見ると、自分の背丈の倍はありそうな大波が次から次とやって来てリーフにぶつかり白泡をたてながらく砕け落ちていた。

それを見た時、恐ろしさで海に入りたくないという気持ちと、あの大波の下にある神秘の世界を見たいという気持ちが交錯した。

「いくぞ!」と、米田先輩の一声で迷いは吹き飛んだ。

「よし!行ってやる!」と心の中でそう叫んで海に向った。

マスクをかけ、レギュレーターをくわえ、フィンを手に米田先輩を先頭に波の小さい時をねらって入って行く、なかなかタイミングが合わない。

スクーバーの全装備をつけた人間が小石のように波にもまれた。

2度、3度と挑戦し、やっとの思いで海に出た。


あゝ・・・素晴らしい。

折り重なるテーブルサンゴ。

ハタがいる。

チョウチョウウオもいる。

モンガラがいる。

苦労して恐ろしい思いをしてここまで来た甲斐があった。


各バディが集まり潜水を開始した。

ふと見ると先行する米田先輩のボンベのバルブ(一次減圧部)から激しくエアが漏れている。

この事をすぐに知らせ浮上した。

そのため二人は海上に取り残された。

波にもまれた時、何かにぶつけたためエア漏れの原因となったらしい。

これでは潜水を続ける事はできず、リーフに戻る事になった。

しかし波は一段と高くなり、戻るにも戻れなくなってしまった。

このリーフの北にリーフ内に通じる大きな水路があり、そこまで泳いで行き、そこからリーフに入る事にした。

1q、2qも泳いだろうか、わからない。

ただ水路を目指して泳いだ。

泳いでいる最中にも、このまま戻れないのでは、サメが出て来るのではと色々心の中でうずを巻いていた。

水路にやって来た。

ところが両側のリーフのガケが青色の中にスーっと消え、海底が見えない。

そして悪い時には悪い事が重なるもので、ちょうど引き潮でリーフ内の水が水路に流れ込んでいた。

泳いでも泳いでも自分のいる所が変わらない。

5分、10分とたつにつれて自分のいる所が後退して来た。

やっとの思いでリーフに立つ事ができたが胸まで水につかり川のように流れ、とても前に歩く事ができず、

水中銃をお互いに持って少しづつ前進して行った。

ライフジャケットを振りながら大声で岸の仲間を呼び、私達を見つけてやって来た仲間を見た時、安堵感と疲労でその場に座り込んでしまった。


 この時の私のように経験の浅い人間が一人でこのような状態になったらどうなるのだろう。

励ましてくれる先輩がいたから、あれだけがんばる事ができたのではないか。

この体験で海の恐ろしさ、ダイビングのむずかしさを知り、そして海の魅力のとりこになってしまった。



         


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