『潜水体験談』(タヒキリーフでのダイビング)   3期 中畑


 私はNZのアクアダイバークラブのメンバー達とノースアイランドの島々をダイビングした後、

タウロンガベイからクルーザーをチャーターし、タヒキリーフへ行くことにした。

ここは人がなかなか行けないだけに非常に美しい所である。

この日天候が悪かったので希望者だけで行くことになった。

私と同じテントのピーターもキースも女性ダイバーのヘロリも行くことを辞退した。

と言うのは去年ピーターの友人がタヒキリーフで波に流され長期にわたって捜索したが今だに友人の死体が上がらないからである。

結局30名ほどいるメンバーの中で10名ほどになってしまった。

クルーザー2台でタウロンガベイから約4時間ほどかかりタヒキリーフに到着した。

ここは海鳥が何万羽といほど群がり、島はなく、大きな岩礁があり、

その巾が10メートルほどで、切り立った絶壁が水深およそ100メートルくらい続いている。

ここは約6ノットの海流が流れ、アンカーを岩礁にホックし、そのアンカーチェーンを船からにぎりしめて、15メートルの岩礁まで行くのである。

もちろん帰りも同じである。

このチェインを離した時には流れにより、はるか遠くへ流され海のもくずとなるのである。


 波がこの日はかなりあり、船が大ゆれの状態であった。

私はデニスとバディーを組んだ。

私達はクサリづたいに岩礁にたどりつき、岩礁のうしろ側へと潜って行った。

透明度は非常によく、素晴らしく美しい海底であった。

大きな岩穴には無数のイセエビがいた。

大きいものは1メートルもあった。

デニスは、カギ棒でとったイセエビを大きなアサ袋につめていた。

私はブラックフィッシュやスナッパー、その他の魚をしとめ岩礁から流しているロープの先の金具に取り付けていた。


私達の周りにはサメが数尾表れ出し、その数がしだいにふえ出し、50尾近くになってしまった。

サメは交互に回転し、私達の獲物を狙い始めた。

殆んどがメジロザメ科のサメであった。

外国ではメジロザメ科のサメを総称してホエラーシャークと呼んでいる。

私達は、岩礁に背中をくっつけてサメ達の様子を見ていた。

その時には私達の頭上もサメの群れでいっぱいになってしまった。

残り少ないエアーの時間内に船にもどれるか心配になってきた。

あるものは私達めがけてつっこんで来るものもあった。

私達の近くまで来て、くるりと向きを変えたりしていた。

私達の獲物は、サメによって喰い荒らされていた。

群れの中には私が始めて見るアオザメが数尾入っていた。

こんなにサメが現われたのを見たのは、リザードアイランド沖、ホエラーシャークに出会ったときと2度目であった。

私達はサメをさけながらアンカーの所までたどりついた。

サメはまだ私達のすぐ近くの所にもいた。

一尾のサメが私達の所めがけてつっこんで来た。

それに私は全く気づかずにアンカーチェーンに手をかけた瞬間、私の左手と脇腹めがけて体当りして来た。

私はそのいきおいで岩にたたきつけられ、マスクに水が入り、視界もさえぎられ、

銃を持っている右手で、ほんの1メートル近くにいたサメを追いはらおうとした瞬間に左手でマスクを押えたのでチェーンから手が離れ、

流れによりチェーンから10メートルほど流されてしまった。

私は足ヒレでチェーンに近づこうとしたが、流れが速すぎるのでむだであった。

デニスも私の方を見ているだけでどうしようもなかった。

私は流れにより一回転してしまい、どんどん流されて行く。

その時、エアーがぷっつりと途絶えてしまった。

いくら空気を吸おうとしても全く出ないのである。

私はとっさにリザーブバルブに気がつき、リザーブバルブを引いた。

そして私は海底に潜りだした。

水深計が30メートルを指していた。

岩礁の岩にたどりつき、残り少ないエアーも殆んどなくなり、

いそいでアンカーチェーンの所までたどりつき、チェーンをつたわって船へ上がることが出来た。


これがニュージーで経験した恐怖の思い出である。



          


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