『何故潜るのか』  11期 長藤


 なぜ潜るのかと言えば「そこに海があるから」などとキドッて言ってみたいものだが、今の自分は暗中模索もはなはだしく、

潜る目的は全くと言ってよいほどみつけられない。

ただ、潜ることが好きで、海中にいればなぜか心が落ちつくみたいだ。

好きだから今は潜っている訳で、別にこれと言った理由は無いがもともと水には幼い時から縁があった。

田舎の家は川に近かったし、まして綺麗だった。

当然、魚も豊富だった訳で、暇があれば潜ってそれを獲っていた、その頃もやはり泳ぐより潜るの方が好きだった。

そして現在は海が中心であり、さらに潜ることの楽しみが広げられた訳である。

今では何かしら考えているときでもそこに海があり、雑談するときにも必ずと言ってよいほど海のことが出る。

もうこれ以外では話しも出来なくなったほどだ。


 しかし、心の中には「好きだから」以外に、

未知のものに対する好奇心。

経験したことのないスポーツに対しての好奇心。

クラブに入っている上での義務感。

最近ポピュラーになったダイビングを「俺はやっているんだ」という特権意識。

みたいなものなどがあるみたいだ。

それは、自分のダイビングがまだ完成されていないからかもしれない。


 ただ、僕の夢の中に何の道具も使わず、何の力も借りず体一つで鳥のように空を飛びたいという夢がある。

海に潜ることはひょっとしたらこの夢の代償かもしれない。

水中という半無重力空間を利用して夢を満たしているのかもしれない。

海の中にも山があり、谷があり、木(のようなもの)があり、またいっしょに飛ぶ鳥の代わりに魚がいる。

水中に漂っているときまるで空を飛んでいるみたいだ。


 たぶん以上のようなことが入り混じったままで、僕は今潜っているのだろう。



          


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