『何故潜水するのか?』 9期 永井
このテーマは、海でのクラブ活動中に与えられ、同輩と冗談半分で「そこに海があるから」と二人で笑っていたが、
"なぜ潜水するか"と問われても、このような答えかたしかできない。
それより何故僕は潜水をやっているのだろうと考えてしまうくらいである。
考えてもらいたい。
3年間同じ場所で、毎週同じような日程で、潜っていて飽きない奴がいるだろうか。
普通であるなら飽きるはずである。それを飽きもせず潜り、3年たってもまだ喜びながら潜っている。
悪い事に4年になってもまだ同じ場所で潜ってやろうと思っているから始末におえない。
こんな自分に呆れ果てているが、どうしようもないのである。
もういまさらやめる事もできず、このままずうっと潜りつづけ、僕が死ぬか、海がなくなるしかないと終りそうもない。
潜水というのは、僕にとって麻薬みたいなもので、この麻薬の中毒患者になりきっているのだ。
じゃあ、何が麻薬の作用をしているのか考えてみると、それは海である。
もっと突き詰めると水中なのである。これは、陸での普段の生活や時間を感じさせない作用をもっている。
普段なれない空間(この場合は水間と言うべきか)に自分が居るという事や、どんな生物にでくわすかわからない事や、
何が起こるやらわからないという事は、緊張感や恐怖感や好奇心が普段より高められる。
これらの作用や感情が複雑に入り混じり、僕を一種の陶酔状態にしてくれるのである。
この魅力が潜る理由の一つなのである。
まさに"水中バンザイ"なのだ。
こうして潜水を繰り返しているうちに、海の中で何かやってみようとしたり、見た事も無い生物や海底を見ようとしたら、もうおしまいである。
底無し沼の深みへドンドンはまっていくのである。これが麻薬の麻薬たる理由の根源である。
根源は一つだけでなくまだある。それは、海の中が自然美にすぐれているという事と、
知らない生物がたくさん数えきれないほどいるという事も大きな根源である。
潜った事のない人は、浜辺にいるダイバーを道路から車の窓越しに見た時、スゴイとか、黒い服を着て何をしているのだろうと思う人が多い。
海の中のすばらしい自然を感じる人は少ない。
海の中の自然を心ゆくまで味わえるのは、ダイバーに与えられた特権である。
僕のような中毒患者に言わせると、この地球の大半をおおっている海の中の美しさや驚異を知らない事は、その人にとって不幸な事だ。
もし、ダイバー達が潜らなくなるとしたら、海の中に自然がなくなり、夢や冒険がなくなった時ではなかろうか。
こう考えてゆくと、なぜ潜水するのかという問に対する答えは、
これを読むあなたが、潜水の経験があるのならわかってもらえると思う。
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