『先輩と後輩のエピソード』 8期 鳥井
恐い目に会ったというと、たいがいサメに会って襲われそうになったなどと想像するけれども、金子先輩の場合は、
タコに抱きつかれた時だそうである。
1人で潜っていたわけではないから誰かしらタコの足を切ってくれるとか助けてくれそうなものであろうが、
その時は誰も助けてくれなかったそうである。
何しろあの八本の足で胸を中心として抱きつかれ、手の自由がきかない。しかもウエットスーツだから容易にとれない。
その時は無事ダイバーナイフで足を切って自分で脱出したらしい。
私などは、ダイバーナイフを持っていても自分が危険にさらされた時に使ったことはもちろんなく、触った事のないきもちの悪い海藻や
生物をせいぜいチョロチョロと触って見る程度に終わる。
いつだったか長谷部さんとバディーを組んで真鶴のお花畑でボンベを使って潜っていた時のことである。
私が何か奇妙な生物があったので、ダイバーナイフならず手で触っていたら、水中でペケサインをされた。
その時は何がダメなのかけげんに思い、水上で質問したらひどく怒られた覚えがあった。
私の場合特に無知なので、何でもさわりたがるのが良くないことなのだ。
私が恐い目にあったのは、いくらフィンを強く動かしても眼下に見える石が動かなかった事である。
大島の沖でみんなで円を作って長い間立ち泳ぎの練習をしていたら、知らない間に全員が円を描いたまま流されていたのである。
急いで斜めに元の岸の方向へ泳ぎ始めたけれども全く進まない。
みんなすぐにそれに気づいて岸に一番近い所へたどり着き、岸づたいに歩いて戻ったのである。
その時は恐いという実感がなかったが、あとで考えたらゾッとしてしまった。岸におられた先輩にはひどく怒られたようである。
一年生の春合宿で石垣島に行った時、まず驚いたのはリーフまでの間の浅瀬にナマコがあまりにも多いことであった。
私はどういうわけか、きれいなものももちろん好きだけれども、ゲテモノに興味があるらしく、まず目についたのである。
特にイカリナマコはヘビのように長く、ボツボツしているから、また動かないからよけいにきもち悪い。
夜間潜水は神秘的でゾッとしてしまった。いくら浅くて潜ったことのある海とはいえ、夜は不気味で背筋がゾッとする。
海面から岸を見ると、岸と思われる方向にたき火の炎しか見えない。
また水中ではライトを照らした部分しか見えないから、どこに海へびが潜んでいるかわからないわけである。
でもその時は1年だった故、ただ夢中で先輩についていくだけで良かったから考えはあまいのである。
サンゴに横たわって寝ている魚は、手でつかまえられるのが何よりおかしくてたまらなかったし、
夜しか見れない魚は、目をギョロギョロさせて泳いでいた。
パイプウニは取り放題というのに、その時はなぜか持ち帰って来なかったようである。
最後のエピソードは、題目からそれてしまったようであるが、思いついたまま書いたので勘弁していただきたい。
話題に乏しいもので。
私はこのクラブは親に反対されて入っただけに、ここまでこれたのは、先輩の暖かい御援助と、後輩の応援であると、心から感謝しています。
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