チリ通信―17 (2006年3月17日)

皆様、いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。 
またまた寒い鹿児島から暑いイキケ市に帰ってきました。
日本で急用ができ、用事を済ませまたとんぼ返りでした。
さすがに夏と冬の繰り返し、12時間の時差、2日間にわたる長旅で体が順応しきれず体調を崩しています。
かねてからの経済的問題は大学の外郭団体と契約予定となり、ひとまずアゴが干上がらずにすみそうです。


チリは日本のちょうど反対側に位置し、時差は11時間(サマータイム時は12時間)あります。
飛行時間はイキケとサンチャゴ間は2時間、サンチャゴとロス間は13.5時間、
ロスと成田間は11.5時間(成田からはジェット気流のおかげで9.5時間)かかり、合計で最低でも27時間かかります。
実際は乗り継ぎや出入国に必要な時間を合わせると、チリから成田には3日間かかり逆の場合は2日間かかります。
成田からロスの場合は日付変更線をまたぐため、夕方に成田を出発するとロスには同日の朝に着くためです。
チリに行く航路はアメリカ経由が一般的で、安ければUSD2,500位で往復チケットが買えるようです。
アメリカ上陸に際しては乗り継ぎでも必ず一度荷物を出し検査を受け、
イミグレーションを通り入国し再び身体検査を受け出国する必要があります。
慣れれば不安はありませんが、靴を脱ぎPCを出す面倒はあります。
機内で隣に座った若いアメリカ人の9.11テロに対する感じ方は、日本人の広島・長崎に対する感じ方に似ているように受け取れました。
それなのにイラクでのアメリカ兵士の戦死者数を、アメリカ国内の交通事故での死亡者数と比較するなど不思議なことを言います。
アメリカの国内メデイアはそんなことを流しているのでしょうか。




さて今回は長距離国際線の機内における文化闘争の話です。

ロスーチリ間の機内では、観光や商用のアメリカ人と南米人(ペルー・チリ・アルゼンチン)が半分ずつです。
アメリカ人とはいえNYに行ったことのない人も結構居て、海外旅行も初めての人もいます。
片やアメリカに入国できる南米人はアメリカに親戚や職があるなど経済的に一クラス上という感じで、
如何にアメリカ人と接するか判っている人たちです。
この南北アメリカ人が狭い空間で10時間以上も小さないすに座って、高ストレス環境にさらされるわけです。
背景としてはアメリカ人とヒスパニック人(中南米人)は、お互いに快く思っていない状況があります。
なぜならばアメリカ本国ではヒスパニック系密入国者が社会的問題となっていおり、
反面彼らなしでは社会が成り立たなくなっているようです。
また、ヒスパニック圏ではアメリカの政治的・経済的介入を憎む反面、アメリカマーケットなしでは経済が成り立ちません。
この状況を踏まえて両国人に精神的な負荷をかけることにより、南北文化の摩擦が発生します。

事例としてはアメリカ敬老会の老夫婦の前座席にペルーから乗り込んだ女の子が座りました。
すでに真夜中になっておりお互いに疲労困憊状態だったのでしょう、背もたれを倒すことでもめ出しました。
お互いに相手の国の言葉を良くしゃべれない問題がありましたが、老夫婦側が聞く耳持たぬ状態になり大声で罵りだしました。
私としてはアメリカ人老夫婦が問答無用としたことで非があると感じたのですが、結局添乗員が女の子を離れた席に移し決着しました。
私なら悔しくて寝られないところですが・・・。
計らずしも小さな飛行機内で南北アメリカ社会の縮図を見る思いでした。


それではロスー成田間(Korean Air)の機内はどうかという話です。
太平洋航路はK社にとって看板航路なので、大きな機体や美形のアテンダンスによる的確なサービス提供しています。
当然私にとっては断然快適で、まず3社の新聞を立て続けに読みながらJ-POPを聞き、
ビビンバを食べながら映画を見てと寝る暇がありません。
ここに居るのは日韓中のアジア系がマジョリティーで、アジア化されたアメリカ人は静かなものです。
目に付くのは某国人の行儀の悪さで、声高にしゃべり傍若無人に振舞います。
ジョハネスバーグ空港でも全く英語がしゃべれない同国人のグループがいて、クルーに通訳を頼まれあわてたことがあります。
日本人もかつては外国旅行ブームの初期に、うるさくてどこでも喫煙しステテコで歩き回る同様の人が見られたようです。
時間が経ち外の世界を見るにつけ、これは良くないことと改善されたようです。
これは文化を変えるという話ではなく、コモンセンスを認めマナーを身につけるという話だけです。
それでは彼らの態度がここ10年で改善されるかというと、たぶんNoです。
なぜなら彼らの考え方がまさに自分たちが世界の中心だからで、
希望的に見て20年くらいなら改善されるかもしれないというところです。




今回の話の補足をすると、高ストレスにより平常では起こらない事をレポートしました。
間違いなく普通の状態であれば何国人であれ、だいたい楽しく話せるものです。
また何国人と簡単にひと括りにすること自体が個性を無視した分類方法といえるかもしれません。
しかし集団になりストレスがかかった時には、明らかに国により決まった方向への精神状態の変化や行動反応があるように思います。
このことが興味深くて書いてみました。


       


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