チリ通信―13(2005年9月4日)

皆様いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
寒さも和み夏の気配を感じる今日この頃です。

先月中旬よりムラタ(Graus nigra, Vieja negra)の産卵が始まり、毎日産卵が続いております。
種苗生産の常で生産が始まると休みはまったく無くなり、疲れが胸の辺りまで溜まってきております。
当てにしていた研修生はなかなか居つかず、土日は一人で細々やっております。
魚類養殖を発展さすために一人でもたくさんの技術者を作りたいと思っているのですが、なかなかままならずです。
これは毎日通うためのバス代は学生にとっては大きな経済負担となることにも、原因があるようです。
新しい技術を身につけることはとても魅力的なこととは思うのですが、生活が安定している者の思い込みでしょう。
経済的な援助措置も必要ではと考えております。

今は種苗の餌であるワムシも十分生産でき、良質の卵を待っている状態です。
今回の種苗生産の目的は、学内外に日本から来た技術者は大量種苗生産ができることを示すだけでなく、
生産した種苗を放流し社会的にアピールしたり、投資家には魚類養殖業が技術的に可能であることを実証したりするねらいがあります。
百の議論より現物を見てもらう方が動きは早いでしょう。
ここは一つネバルしかないようです。

話は変わり大学ではハワイ経由で入手したヒラメを種苗生産し飼育しており、この親魚の1尾が餓死しました。
エクアドルでレンガードとばれるヒラメに非常に近い魚を飼っていた時も同じことがありました。
どうもこの手の魚は頭が固いというか頑固というか、思い込みが強いようです。
食べないゾと決めると死ぬまで食べない性格のようです。
人事とは思えず同情しております。



話が殺伐としてきたので、食べ物の話です。
先週チェルロ(Acanthistius pictus, またの名をVieja colorada; 赤いオバチャン)を学生からもらいました。
この魚は過去にから揚げにして身が鬼のように硬くなり情けない思いをしたことがありました。
今回は刺身と煮付け用に切り分け食べてみました。
まずは醤油で煮付けmuy bien!, 冷蔵庫で一晩寝かした刺身もtan bien!!でした。
味はカサゴ系で海の幸そのものでした。
ここの楽しみは"これ"です。
仔魚にやるウニの卵を思わず口に頬張ってうなったり親魚の餌のペヘレイをから揚げにして満足したり、
海の幸がひどく身近にあることです。

この幸を守るためにも沿岸資源再生産計画である海洋牧場プロジェクトを立ち上げることが必要であると、納得する今日この頃です。




     

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