チリ通信 - 12  20050802

皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は元気です。
月日がたつのは早いものですが、今日やっと就労用のヴィザが取れました。
大学の暮らしにもなれ、チリのスペイン語のスラング活用方法を同僚から習っています。
相変わらず寒い毎日ですが、夏季の癖でシャツ1枚のせいもあるようです。
基本的には南極から冷たい水が来ているためで、水温は15℃に下がっています。
先週は現地に来た目的である海洋牧場計画のプロポーザルを提出し、大学のでかた待ちです。
いまだに彼らはどこまでできて、どこまで攻め込んでよいのか境界線が良く分からない状態です。
授業をする話もちらほら出ていますが、人材を育てる意味で興味のあるところです。
とにかく色々なことが毎日起こり、やることが後から後から出てきています。
明日はまるで見えず、「あしたは〜 ド・オ・チ・ダ〜」と矢吹ジョーになっております。
今回の目玉はムラタの種苗生産、ロコ貝の幼生飼育、海のブログ、の三本立てです。

1.ムラタまたはヴィエハネグラ(黒いオバチャン)の種苗生産

ムラタ(Graus nigra)は重要在来魚種で、アイナメの体型で黒い魚です。
かつては1m(5Kg)近い大型がいたようですが、最近はめっきり減っております。
大学では親魚を飼育中で、親魚槽の窓から興味深そうに私を見ています。7月にこのムラタの産卵が突然始まりました。
前の月には自分で体側をして、オスの成熟は確認しましたがメスの成熟はまったく見られませんでした。
そもそも魚の種苗生産は仔魚の餌であるワムシと言う動物プランクトンと、さらにワムシの餌であるナンノという植物プランクトンを準備してから始めるものです。
今回はまったくの不覚を取り、ウニにKClの注射をして出てきた卵を与えたり、はては外洋でプランクトンネットを曳き集めたアカルティアなどを給餌したりしました。
しかしウニの卵は小さすぎて稚魚の大量生産には不向きで、アカルティアは大きすぎて口に入りませんでした。
毎朝種苗槽を見る時は手を合わせてから蓋を開けたものでしたが、10日目には生存0となりました。
餌が無ければ子供は育たないのは当然です。
今はコキンボの師匠から送ってもらったワムシとナンノの培養を始めており、2週間くらいで種苗生産を再開できそうです。
これまで何百万という稚魚を殺して技術を発展させてきたわけですが、つくづく罪深い商売だと思います。




2.ロコ貝幼生の孵化

ロコ貝(Concholepas concholepas)は日本にもチリアワビ(この名前は表示上の問題で今は使われていない)として輸入されている貝で、チリ人にとっても重要な貝です。
資源の枯渇からほとんど漁獲禁止となっていますが、資源再生産のためには種苗の大量生産技術開発必要です。
幼生の餌と成長の遅さがネックとなっているようですが、私も?の手習いで幼生の飼育を始めました。
大学前の海から卵の詰まったカプセルを岩からはがし、タンクの中で飼育して20日目頃からカプセルの中で動く幼生が見えるようになりました。
そしてカプセルから出てきた幼生は魚とまったく違い、1対の大きな円盤状の触手を持ちます。
大きさは0.2mmくらいで、この触手を車輪のごとく運動さして上下左右に泳ぎ回ります。
マクガイヤー氏好み(?)のマトリックスの宇宙船というかナウシカのオームのようです。
学生時代にメンダコを見た時以来の驚きでした。まったく生き物は面白い。残念ながら飼育はうまくいっていませんが、これからです。




3.海のブログ

うちの長男が小説を書いています。彼はフィリピンで生まれエクアドル・日本・マラウイ・アメリカと周り、色々なものを彼なりに見てきたと思います。
ちなみに今はオーストラリアの高校に入るためにTOEFLの勉強を日本でしています。
たまにはビル掃除のバイトもしていますが、自分のお金が入るのがうれしいようです。
本人曰く読まなくても良いそうですが、興味のある方はこちらへどうぞ。

 http://blogs.yahoo.co.jp/phantomcomicer

     

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