第3章2節 : 対峙 |
「リーブはW.R.Oを軍隊にするつもりは無かったはずだ。仮に彼を変えたものがあるとするなら、3年前のオメガ戦役だろう」 3人が乗るには広すぎるエレベーター内でヴィンセントが語ったのは、ティファの問いに応じてのものだった。 オメガ戦役――それは各地で発生した集団失踪事件に端を発するディープグラウンドとの戦いである。ジェノバ戦役になぞらえて、3年前の事件をこう呼ぶ者は多い。 「あの戦いでは多くの者達が命を落とした。W.R.Oの創設者であるリーブは、そのことに負い目を感じている……様に見えた。結局、本人は何も語らなかった。故にこれは私の憶測に過ぎんがな」 リーブが弱音を吐く場面に遭遇したのは3年前、ディープグラウンド急襲によってW.R.O本部施設が陥落した直後の司令室、後にも先にもこの一度きりだった。 「ディープグラウンド……“神羅の闇”、か」 「誰よりも責任感が強いものね、リーブ」 6年前、壱番魔晄炉を爆破した自分達を糾弾した彼――ケット・シー――の姿を思い出し、ティファは苦笑がちに呟いた。そんな彼だからこそ、クラウド達との旅を終えた後W.R.Oを設立し各地の復興を目指そうと立ち上がった。ディープグラウンドとの遭遇は、その矢先の出来事だった。さらに事の真相を知れば、恐らくリーブでなくとも心を痛めただろう。その為にさらなる犠牲を強いたのであれば尚更だ。もし自分がリーブと同じ立場にいたとしたら、二度と立ち直れなかっただろうとさえティファは思った。 「ヴィンセント。ここへ来る前『腑に落ちない』と言ったのはその事か?」 クラウドは内心、この言葉がずっと引っかかっていた。それはW.R.O新本部施設を前にしてヴィンセントが語ったもので、結局はユフィとバレットに阻まれてしまったが、確かに彼は言葉の先を続けようとしていた。 「そんなところだ。だが、何より腑に落ちないのは……」 そう言ってヴィンセントは愛用の銃をホルスターから取り出し、手に取ってこう続けた。 「ここへ来るときは各自、武器を持参するようにと告げられた事だ」 言い終わるのと同時に小さな機械音が鳴った。3人が目を向ければ、別に指定したわけでもない地下7階を示す地点でエレベーターが停止し、ひとりでに扉が開いた。 「……確かに、腑に落ちないな」 クラウドは吐き捨てるように呟くと、大剣に手を添える。ティファは目の前の光景に信じられないと言った表情を向けていた。 エレベーターの扉が開かれた先では、無数の銃口が彼らを迎えるべく待ち構えていた。 ―ラストダンジョン:第3章2節<終>―
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