Se la gatta va al lardo.... |
オフィスの窓から空を見上げる。 薄い靄がかかった青空を、どこよりも間近に望むこの場所にいる時がいちばん落ち着く。 自分以外には誰もいないフロアを振り返り、それからもういちど窓外へと視線を向けた。 窓の外、頭上に広がる空。 そこはかつて、私が目指した場所。 夢はいつも、空の彼方にあった。 オフィスの窓から空を見上げる。 薄い靄がかかった青空を、どこよりも間近に望むこの場所が、私はどうしても好きになれなかった。 手に持ったカップの中で揺れるそれを口にした時と同じように、ここから空を見上げるといつも、苦みを伴うからだ。 時計を見れば、会議の始まる時刻はもうすぐまで迫っていた。 *** そもそも悪夢の始まりを告げたのは、聞き慣れた内線の呼び出し音だった。 それは自分宛に端末指定で直接かかって来たもので、通信記録をたどれば、どうやら社内――それも総務部調査課からのものらしいと分かる。彼らならこういう趣味のわるい悪戯もするだろうと思いながら、8回目のコールで受話器を取り上げた。 応答代わりに自分の名を告げると、通話の相手は実に一方的に話を進めた。先方の要求はたった1つ。 『今度の試作ロケットを貸して欲しい』 一体何を言っている? と、こちらが問い返す間もなく通話は切断された。 通話の中で「もし、要請に応じてくれるのならば都市開発部門のある女性に詳しい話を聞いてくれ」とも言っていた。全くもって話が見えてこない。 だいたい何故、我々の事業――言うまでもなく宇宙開発事業――に、総務部調査課やまして都市開発部門が介在してくるのか? 少なからず不愉快ではあった。だから直接、彼らの指定する場所へ出向こうと思った。 宇宙開発事業は、趣味や道楽ではない。ましてロケットはお遊びの道具ではないのだ。 指定されたのはミッドガル郊外、およそ神羅社員の出入りする用があるとは思えない路地裏の、さらに奥にある雑居ビルの最上階だった。 まったく何が楽しくてこんな場所を指定して来たのかと、指定者の趣味を疑いながらその部屋の前にたどり着く。さび付いたスチール製の扉を、指定通りの回数と間隔をあけて叩いた。 それに応じて中から聞こえてきたのは、落ち着いた女性の声だった。いっそ落ち着きすぎていて、機械的にも思える。けれど、覚えのあるその声は聞いていて不快感はなかった。 「――“聞こえてくるのは誰の声?”」 これもまた、指定された合い言葉だ。指定した場所といい、ノックの回数と言い、合い言葉と言い、まるで子どものスパイごっこの様だった。 それでも、私は指定されたとおりの言葉を返した。 「“猫と星”」 どうでもいいが、この合い言葉は一体なんだ? 本当に、ここへ呼んだ人間の趣味を疑う。いたずらなのか? とも思えたが、それにしては手が込んでいる。 そんなことを考えていると、何度かの金属音を伴って部屋の扉が開かれた。中から出てきたのは黒いパンツスーツに、スーツと同じように黒くて長い髪を持った細身の女性だった。ネームタグを見なくても彼女が誰なのかは知っている。 深々と頭を下げ、丁寧な口調で彼女は私を出迎えてくれた。 「このような場所へお呼び立てして申し訳ございません。ご足労頂いて恐縮です」 「いえ。こちらこそまさかこんな場所で都市開発部門の統括にお目にかかるとは」 私のこの言葉に顔を上げようとした彼女は一瞬動きを止め、それから驚いたような表情を向けたが、すぐに口元に笑みを浮かべるとこう言った。 「お言葉を返すようですが。……私、都市開発部門の統括じゃなくて主任なのよ? 所属は管理課」 「なんだって? まだ引き受けてなかったのか、あの話」 さすがにその事実には驚いた。都市開発部門には統括責任者が居なかった。彼女の評判は方々から耳に入ってくるし、内々に打診もあったとも聞いている。なにより彼女自身にとっても悪い話ではないはずだ。だからてっきり昇進していたのかと思ったのだが、そうではないのか。 僅かな沈黙の後、彼女は告げた。 「そんな話をする為にあなたを呼んだんじゃないわ。さあ、入って」 結局こちらの質問には答えないまま、彼女は室内へと私を案内した。私もそれ以上追求する気はなかったので、案内に従い部屋に足を踏み入れた。 通された部屋は、外観からは想像も出来ないほど整っていた。数台のパソコンと必要最低限の周辺機器、ファイル類はすべてディスク管理されている様だ。さながら小さなオフィスといったところだが、パソコン画面を見て驚いた。 「……これは」 映し出されているのはミッドガルのプレート建造計画書、おそらくシミュレーション映像だ。 (そんな物が、なぜここに?) 声には出していないはずの問いを察したのか、彼女は答えた。 「言っておくけど社外に持ち出したデータじゃないわ、私がここで作ったのよ」 「本当に優秀だね君は」 いやみではなく、本心だった。 「ありがとう。で、話を始めるけど構わないかしら?」 応接用のソファなどないからと、適当な椅子に座れと促された。まったく彼女らしいと思いながら、こんなところで長話をするつもりはなかったので、腰を落ち着けることはせずに先手を打った。 「ロケットの件なら断る」 彼女の話を聞くつもりはなかった。ただ、こちらが言いたいことを伝えるためにここへ来たのだから。 「宇宙開発事業は、趣味や道楽ではない。ましてロケットはお遊びの道具じゃない」 私の言葉にも、彼女は全く動じる様子を見せなかった。それどころか、微笑さえ浮かべている。 「そう言うと思ったわ。……だけど勘違いしないでもらいたいの、私達も真剣……いえ、必死なのよ。でなければロケットを使わせて欲しいなんて突飛な話を持ちかけたりしない」 確かに、彼女が言うのももっともな話だ。それに彼女の姿を見ていれば、ふざけて出た言葉ではないのだと分かる。少なくとも私の知る限り、彼女の口から嘘と冗談を聞いたことは、これまで一度も無かった。 だから今回の話に、全く興味がなかったと言うわけでもない。そうでなければ、わざわざここへ足を運ぶこともなかっただろう。 「理由は?」 その問いに、彼女は一度目を閉じて何事かを考えている様子だった。 それから程なくして顔を上げ、私を真正面から見据えてこう言った。 「……人命救助よ」 返されたのは意外な言葉だった、意外と言うよりも唐突すぎて話が繋がらない。 「ちょっと待ってくれ。ロケットと言っても試作機だ、有人飛行はしない」 「ロケットでなければ到達できない場所での人命救助、と言う訳じゃないわ」 そう言って彼女は1枚の写真を差し出す。写っているのは見たこともない女性の姿だった。 「……ミッドガルのある場所に閉じこめられている人を、救いたいの」 「それじゃあ私よりも君が適任だ。ミッドガルの構造には君が一番詳しいだろう? 場所の見当がついているなら、君自身が助けに向かったら良いじゃないか」 ましてロケットの出番などどこにも無いではないか、そう反論した私に彼女はこう続けた。 「ええ。でも私が使える手駒では彼らを救うことが出来ないの。……せいぜい」 そう言って彼女は私に背を向けて椅子に座り、数度キーボードを叩いた。すると、画面上に表示されていたミッドガル全景の何ヶ所かが赤く点滅を始める。 画面から目を離し、彼女は私を見上げてこう告げた。 「……8、基。ある魔晄炉だけだもの。それに、このうち完成しているのは半分にも満たない」 都市開発部門管理課に所属し、これまでミッドガルの建造に携わる中心人物の一人として手腕を振るってきた。そんな彼女が、私利私欲のために魔晄炉を使うと言い出すなど、考えられなかった。だから彼女が魔晄炉のことを「手駒」と表現した事には驚いた。 「……もっとも。これを使ってしまったら、魔晄炉建設計画担当者に怒られるわ」 「君が部下のことを気に掛けるなんて珍しい」 「失礼ね、まるで私が血も涙もない人間のような言い方に聞こえるけど?」 「そうじゃなかったのか? 都市計画のためなら多少の犠牲も厭わない、それが君のやり方だろう。魔晄炉誘致の件も聞き及んでいるよ。君の入れ知恵か? だとしたらまったく力ずくだな」 魔晄炉建設予定地の住民に対する強制退去は、都市開発部門から総務部調査課への協力要請が出され、秘密裏のうちに処理されたと聞いている。統括責任者が不在と言うことは、この件を承認した――それほどの決裁権がなかったのだとしても、認知はしていただろう――のが彼女ということになる。 確かに彼女は理想論者である。ミッドガルに対して、恐らく誰よりも強い愛着と執着を持ち、理想都市実現のために奔走してきた。しかし、だからと言ってこれほど強硬な態度にでるとは考えにくい。 反論が返ってくると思ったが、遂に彼女の言葉を聞くことはなかった。 もしかしたら私は、自分でも気づかない無意識のうちに彼女からの反論を期待していたのかも知れない。 そしてこの時、私は気づかなかったのだ。 ディスプレイ上に示された魔晄炉を示す赤い点が、全部で9つあったことを。 それは、私が彼女の口から聞いた初めての嘘であり、彼女の姿を見た最後となった。 *** 宇宙開発事業の規模縮小について、会議の席上で最初に提案したのは都市開発部門統括のリーブだったと記憶している。 もっとも統括責任者に着任したばかりだったこの頃の彼は、ミッドガルの都市開発事業に対してとても大きな夢と野心を抱いていたのだろう。宇宙開発事業と都市開発事業の必要性を論理的に説明し、両事業に費やす費用の割合を算出、次年度の予算について我々の事業を縮小するかわりに、都市開発へ資金を充てるべきだと言うのが彼の主張だった。 神羅カンパニー。 その前身をたどれば元は神羅製作所という兵器製造会社、つまりは戦争屋だ。ウータイとの戦争で富を築き上げた死の商人。我々をそう揶揄する人間もいたが、あながち間違ってはいない。事実、現在の基盤となる資金源は製作所時代の収益にあり、今でも兵器開発部門は神羅カンパニーにとって重要な収益源であることが、何よりもそれを裏付けている。治安維持部門と共に、この2つの部署は神羅の屋台骨となっている。 ――宇宙開発部門は所詮、収益を生み出す部署ではない。 そんなことは統括責任者である自分が一番良く分かっている。 神羅にとって宇宙開発部門は、お飾りでしかないのだ。 「採算性だけで考えればもはやお荷物。……と言った方が正確かと」 重役会議が終わった直後、皆が席を立って部屋を出て行く中で彼は私にそう話しかけてきた。 彼とはもちろん、都市開発部門統括である。 不思議なことにそれほど怒りは感じなかった。彼はきっと、就任したばかりと言うこともあってやる気に満ちているのだろう、会議中のプレゼンテーションを聞いていれば否が応でも彼の気概が分かった。同時に、これはその裏返しだと。 「君のようにやる気のある統括が就任してくれれば、部門も安泰だろうな」 「お言葉ですが、やる気だけでは統括職になんて就けません」 口調こそ穏やかではあるが、言っている内容には私に対する明らかな敵意が含まれていると感じるのは、気のせいではないだろう。 「私に何か恨みでも?」 「……今のところは『いいえ』とお答えできますが、今後の返答については保証しかねます」 「と言うと?」 「お伺いしたいことがあります。少しお時間を頂きたいのですが」 なるほど、その返答次第で私への心象が変わるということか。しかしながら、私は彼と面識がない。数日前の重役会議で初めて言葉を交わしたのが、覚えている限り最初だったと思っていた。 やれやれとため息を吐かずにはいられなかった。この年若い統括責任者は、一体何を考えているのかと。 それでもまあ、時間はたっぷりある。 幸いなことに宇宙開発部門は、それほど多忙を極める部署ではない。 私はひとつため息を吐いた後、席を立った。 会議室を出て私達はエレベーターへと乗り込んだ。統括室のある目的階のボタンを押したのは、後から乗り込んだ彼だった。 「私がお伺いしたいのは他でもない、試作ロケットの件です」 扉が閉まった瞬間、まるで見計らったように彼は声を潜めて尋ねてきた。これまた彼女同様、単刀直入な物言いだと思った。 「……試作ロケット?」 最初こそ首を傾げたが、すぐに彼の言わんとすることに察しがついた。 「ああ、先日の事故か?」 ミッドガルに墜落した試作ロケットの件――都市開発部門の統括責任者が関心を寄せることといったら、確かにそのぐらいだろう。 「あれは本当に“事故”だったんですか?」 「というと?」 「……何かしら作為的な物を感じるのですが」 鋭い指摘だと思った。が、私が彼に本当のことを話してやる必要性はどこにもない。 「気のせいだ」 「そうおっしゃる根拠は?」 真っ直ぐ私を見据えて彼は問う。ここまで言うからには恐らく、彼の言葉には裏付けがあるのだろう。 「では私からも1つ質問させてもらうよ。……君がロケット墜落に作為を感じた根拠は?」 僅かな沈黙。 狭い密室内に響いた機械音は、目的階到着を告げると同時に扉を開いた。 先に歩みを進めたのは私だった。彼は無言のままパネルを見つめ、開閉ボタンを押している。エレベーターを出た私は振り返り、彼が出てくるのを待ちながらこう言った。 「……私を疑うなら、まずはその根拠をお聞かせ願おうか」 彼は顔を上げ、「分かりました」と言って頷いた。 エレベーターを出たリーブの後について、都市開発部門の統括室へと招かれた私は、ひとまず勧められたソファに腰を落ち着けた。 個人に割り当てられるにしては広すぎる統括室内には、まだ未開封の箱がちらほら置かれていた。それを見て、そう言えば彼はまだここへ来て間もないことを思い出す。同時に、昔の自分も慣れるまでは雑然とした室内で右往左往していたなと懐かしい気分になる。 「すみません、まだ不慣れなもので……」 言いながら彼は慌ただしく室内を動き回りながら、書類やらファイルやらを手早くまとめ、応接用のテーブルへと戻って来た。 「……あっ!」 かと思えば、短く声をあげてまた慌ただしく席を立つと部屋の奥へと足早に移動する。何をするのかと目で追っていると。 「コーヒーで宜しいですか?」 などと聞いてくる。それももの凄い勢いで。 「……あ、ああ」 彼の勢いに押されて思わずそう返答してしまったが、どこか調子が狂う。……そうだ。 「なにも君がやらなくても……」 部下にやらせればいい雑用を、なにも自分一人でこなそうとしなければいいものを。もう少し落ち着いたらどうだ? という揶揄もこめた言葉だったが。 「あ、いえ。……すみません、不慣れなもので」 そう言って小さく笑いながら、彼はトレイに乗せてコーヒーを運んできた。 何かがおかしい――彼を見ていて感じるのは、小さな違和感だった。今ここにいる彼からは、先程までの敵対心はまるで感じない――それとも、これは私の警戒心を取り去ろうとするための演出なのだろうか? とにかく都市開発部門の連中と話をすると、いつもこうだ。 (まったく、彼女とは違った意味で調子が狂うな) 差し出されたカップの中で揺れている自分の顔を見つめながら、そんなことを思った。 「コーヒーはお嫌いですか?」 「ん? ……いや。頂こうか」 どうやら渋い顔でカップを見つめていたらしい私に向かって問われれば、思わずカップを取り上げ口に運んでしまう――これでは向こうのペースに乗せられているだけだと言うのに。 「……苦いな」 そこに僅かな勝機を見出そうと、抵抗を試みるも。 「お砂糖もご用意してありますから、お好みで」 「すまないね」 あっけなく敗れ去ったのである。 リーブもようやく私の向かいに座り、カップを口に運ぶ。私は添えられた容器の蓋を開け、スプーンで山盛りに砂糖をすくい上げると、それをカップに流し込んだ。 私が2杯目の砂糖をすくったところで、リーブは話を切り出した。 「……先のロケット墜落の件で、独自に資料を集めてみたんです。それらを見てみると、少し疑問な点がありました」 私は手を止めず、彼の話に耳を傾けていた。話を促すように頷くと、先を続ける。 「私もロケットについて精通しているという訳ではありませんので、話の中で間違いなどがあれば、その際はぜひご指摘頂ければと思います。……ただ、それにしても不自然だと感じたのがこれです」 そう言って示されたのは1枚の軌道計算書だった。これはロケット発射基地からの弾道を計算したシミュレーションである。軌道計算と共に、ミッドガルを含めた大陸全景に重なるようにして軌道が記されている。署名と記載の内容からも、宇宙開発部門が作成した物だとすぐに分かった。 「あの日。ちょうど外出先で墜落の一報を受けた私は、本社からの誘導に従って墜落現場とされる地点へ向かいました。しかし、そこは実際の墜落現場とは全く異なる場所でした」 「誘導した者か、君自身が地図を読み間違えたのでは?」 「いいえ」 示された可能性を即座に否定し、リーブは穏やかな表情を浮かべてこう続けた。 「私は、当時の都市開発部門管理課主任の誘導でミッドガルを走っていました」 「君らが地図を読み間違うはずはない……?」 「ええ。事実、最初に示された墜落地点と私がたどり着いた場所は地図上でも一致しています」 そして、彼は軌道計算書を指し示してこう言った。 「当初、墜落現場と目された地点がエリアF5-268、実際の墜落現場がE3-282。それぞれ第6プレートと第5プレートにあたる場所なんですが、そうなると1区画以上のズレが生じた事になります」 確かにリーブが示しているとおり、1区画分のズレと言えば相当の距離だった。しかし、ロケット発射基地からだと考えれば、その程度のズレは小さいと言える。 「着弾地点の予測としては誤差の範囲内だろう」 「おっしゃる通りです」 「では、何がおかしいと?」 「問題になるのは距離ではなく……時間です」 「速度計算でもしようと言うのか?」 冗談めかして笑ってみたが、真剣な表情のリーブの姿を見て笑うのをやめた。 「私の持っている通信機器の着信履歴を確認しました。次に、実際の報告書とミッドガル住民の証言を合わせた墜落時刻の裏付けを取りました」 ――『ミッドガル魔晄炉建設予定地付近に、軌道を外れたものと見られる 試作ロケットが墜落。死傷者、被害状況等の詳細は今のところ不明。』 リーブへの第一報は、このようにもたらされたという。 「つまり私が第一報を受けた時点で、ロケットは既に墜落していたのです」 その言葉を聞いて、私はなるほどと頷いた。 「では、こちらで実際の墜落時刻を調べてみればいいかな?」 「それもぜひお願いします。……ただ」 それから僅かにためらう仕草を見せたが、彼はこう続けたのだった。 「私へ第一報が入った時点でロケットは既に墜落していた。……となると、妙だと思われませんか?」 「……妙?」 「そうです。既に墜落しているロケットを追跡するのに、わざわざ軌道計算書を辿る必要は無いはずです」 指摘されて確かに妙だと思った。 墜落――いったん基地を飛び立ったロケットの追跡に軌道計算書は必要ない。あれはあくまでも予測でありシミュレーションなのだから。 「ロケット発射から着陸までは、飛行管制センターでモニタリングされているはずですよね?」 「……飛行記録……か」 そこまで口にした時、ようやくリーブは深々と頷いた。 それから手元に広げていた軌道計算書とは別の書類を取り出す。それが、飛行記録だった。 「最初に私が誘導された地点は、この軌道計算書によってシミュレーションされた墜落地点でした。ところが、次に本社から入った連絡では飛行記録によって情報は修正されていました」 「…………」 私は無言で手元を見つめていた。スプーンからカップへと流れ落ちて行く砂糖の姿が、まるで滝のようだと思った。たぶん、これが15杯目だっただろうか。 これだけ入れても尚、完全に苦味を消し去ることはできていないのだ。 「この軌道計算書は宇宙開発部門が作成した物で間違いありませんね?」 リーブの声に、私は首を縦に動かして無言のまま肯定した。軌道計算書は、打ち上げるロケットの燃料や構造など、宇宙開発部門でしか知り得ない機密情報を元に作成されている。これと同等の精度で軌道計算を行うことは、部外ではまず不可能だ。 それに何より、この計算書を作成したのは私自身だった。否定のしようがない。 「では、この軌道計算書は……エリアF5-268、6番プレートに“墜落する”前提で計算されている事も、お認めになりますか?」 続けられる質問にも、やはり無言のまま首を動かす。 カップの中をかき混ぜてみたが、底にたまった砂糖のせいでうまく混ざらない事に、少しだけ苛立ちを覚えた。それでも意地になってかき回し続ける。 「……これが、このロケット墜落について私が作為的な物を感じたと言う根拠です」 宇宙開発部門によって作成されたのは、最初から墜落を前提とした軌道計算書。 本来は部外秘であるはずの軌道計算書を持っていたのは、当時の都市開発部門管理課の主任。 今回の試作ロケット墜落の件に関して、裏で宇宙開発部門が何らかの形で関与していることは明白だった。 しかし、リーブにとって本題はここからだ。 「それでは、改めてお尋ねします。試作ロケットの墜落は、本当に“事故”だったのですか?」 *** 無論、彼女からの申し出――試作ロケットをミッドガルの街中に落とそう、などと言うとんでもない提案――は断るつもりだった。大体、そんなバカげた話に乗る人間がどこにいる? いたとしてもせいぜい、気の触れたテロリストぐらいだろう。こう見えても私、神羅カンパニー宇宙開発部門の統括なんだよ……外ではあまり威厳ないと思われてるけど。 残念ながら私はミッドガルという都市そのものに愛着があったわけではないし、都市開発事業がどうなろうと知ったこっちゃない。いやむしろ、愛着があったのはロケットの方だ。技術の粋を尽くして作ったロケットを、好きこのんで墜落させたいと思うか? そんな奴を見つけたらタダじゃおかない。 宇宙開発部門の連中ならば、口を揃えて皆おなじ事を言うだろう。当然だ。我々は落とすためにロケットを作っているのではない、飛ばすために作っているのだから。 ……しかし、結果的に私は彼女の申し出を拒みきれなかった。 搭載する計器類に一部細工を施したロケットを基地へと運ばせ、さらにプログラムを書き換え飛行軌道を変えさせた。 その時に作成したのがあの「軌道計算書」だった。彼女からの注文通り、建築予定地を着弾点とした飛行計画だった。可能な限り死傷者を出したくないという、彼女たっての希望でね。彼女の目的はあくまで「人命救助」であり、破壊は二次的なものに過ぎない。……本心では、望んでいなかった。 おかしな事を言ってると思うだろう? ロケットを墜落させて人命救助だなんて。……今になって思えば、だからこそ、私は彼女の話に乗ったのだろうと思ったよ。気が触れているのは私かもしれない。 …………。 軌道計算書を彼女に渡し、打ち上げの日を迎えた。 予定通り基地を飛び立ったロケットは、私の書き直した飛行軌道を寸分の狂いもなく進んだ。ロケットに積まれた計器類は高度のみを改ざんしたデータを飛行管制センターに送り、管制官達の目をしばらく欺いてくれたよ。 ここまでの飛行は予定通り。すべては順調に終わるかに思えた。 ところが突如発生したエンジントラブルにより、飛行軌道は当初の予定から大きく外れた。管制センターでは、突然発生した問題に対策を講じたが、ミッドガルへの墜落が避けられないと分かると、ただちに各関係機関へ連絡を取った。しかし彼らの努力もむなしく、程なくしてロケットは墜落した。 エリアE3-282――5番プレートに墜落したロケットは奇跡的にも爆発せずに原形を留めていたが、5番プレートは中程度の損壊、プレート下の建造物の一部を巻き込む程の被害だったにもかかわらず、死者はゼロ。あとは私の口から語るまでもない、君の方が詳しいだろう? もちろん、このとき各部署へ送ったのは飛行記録だった。絶望と混乱の中で管制官達は皆、力を尽くしてくれた。 だが、恐らくセンター内でいちばん慌てたのは私だっただろう。 すべて完璧だったのだ。 計算も、飛行プログラムも、計器類だって事前のチェックは怠っていない、データには全て目を通していたはずなのに。 それでも、ロケットは定められた軌道から外れ、予定外の場所に墜落したのだ。 これが、試作ロケット墜落に至る全容。私の知る真実のすべてだ。 *** 「これで満足してくれたかな?」 私にしては珍しく長い間、それも一方的にしゃべり続けていた様な気がする。これだけ話したのはいつ振りだろう? 今や会議の席では発言どころか、意見すら求められる事もないこの私が、だ。 しかしお陰で喉が渇いた。再びスプーンを手に取ってカップの中身をかき混ぜてみる。やはり溶けきらなかった砂糖が底に沈んでいたが、それでも構わずにカップを口に運んだ。 喉に流れ込んできた甘苦くて生ぬるい感覚は、決して心地の良いものではなかった。甘ったるいはずなのに中途半端な苦みを残す味も、熱くもなければ冷たくもない中途半端な温度も、どうやっても好きになれそうになかった。 (半端者の私にはこれが似合いか) そう思うと自嘲が込み上げてくる。 エンジニアになるには技術が及ばず、パイロットになるには体力が足らなかった。そんな私に残されたのは、管理職の道だった。 目指していたはずの空はいつのまにか遠ざかり、今ではデータばかりを追う毎日。 どれだけ出世をして組織とビルの頂へと近づいたところで、宇宙など、いくら手を伸ばしても届かない空の高みにあるのだ。 そう、私はどこまで行っても半端者だ。 私自身は統括職の地位に就いても、嬉しくも何ともなかった。それは妥協の末に選んだ道を歩んだ結果に過ぎない。宇宙開発部門の統括をやりたいと思ってここを目指して来たのではない。宇宙開発に、宇宙に、関わっていたかった。縋り付いていたかった。そのなれの果てが「宇宙開発部門統括」という、くだらない肩書きを持った私の姿だった。 だから年若いこの男が新たな都市開発部門統括責任者となったのを目にしたとき、羨ましく思えた。 やる気と理想に満ちた瞳は真っ直ぐに未来だけを、大地に広がるミッドガルという都市を見据えている――何よりも、彼は自分の足で夢を追い、その夢を自らの手で掴もうとしている――私と同じ地位にあっても、まったく違う彼の姿は、同時に自分の惨めさを浮き彫りにした。 その時点で、私は敗者なのだと思い知らされた。 そして今回の件で完敗したのだ。 「どうしたんだね? 君の推測が正しかった事が証明されたと言うのに……」 敗者ならば、せめて潔く負けを認めようと顔を上げた。しかし、目の前に座るリーブは瞬き一つもしないでこちらを見つめていた。それは猫が茶でも吹いているような、いっそ滑稽とも思える表情だったが、それだけに彼の驚きようが見て取れる。 少なからず、勝者の見せる顔ではない。 「……なぜ、そんな顔をする?」 私の問いに、やがて彼の口から言葉が零れる。 「……主任が、なぜ……ミッドガルを?」 それを聞いて、ようやく思い至る。彼は、なにも知らされていなかったのだろう。何も知らされないまま、後任としてミッドガルを引き継いだ。そうだとすれば、これほど驚くのも無理はない。 ――今回の“事故”を起こしたのは私だが、起こすように依頼したのは他でもない、当時の都市開発部門管理課の主任である彼女だったのだ。 「私も詳細までは聞いていない。ただ、『人命救助だ』と彼女は言っていた」 「人命救助……? どこにいる誰を? そもそも何の為にロケットが……」 「そう、私も最初はそれが疑問でね。今の君とまるで同じ反応をしたよ」 「彼女は……主任は何と?」 リーブからの問いに答えようと、私はあの日の記憶をかき集めた。ミッドガル郊外にある雑居ビルで行われた、スパイのまねごとのような遣り取り。ディスプレイに表示されたミッドガル構造図。差し出された写真と――私に向けられた彼女の真剣な眼差し。 しかしどれだけ寄せ集めても、彼の問いと期待に答えられるものが見つからない。 「……私が聞いたのは『ミッドガルのある場所に閉じこめられている人を救いたい』とだけ。詳しい場所や状況、それ以上の事を彼女は何も語らなかった」 それを聞いたリーブは「そうですか」と小さく呟いて、視線を窓外へと向けていた。 ――どんな気持ちだろうと思う。 私は多少なりとも彼女を知っている。とは言っても個人としてではなく、ミッドガルの都市開発に従事する仕事上での彼女ではあるが。そして何より、この計画を打ち明けた時の姿も見ている。 だからだろうか、その後を引き継いだこの年若い彼の姿にも、どこか彼女と重なる部分があった。自分のことを「真剣」以上に「必死」だと語った彼女の姿に、とても良く似ている。 一方で彼は何も知らされないまま、後を引き継いだのだ。それは少々酷なようにも思える。 ――私が彼と同じ立場にいたら、どう思っただろうか。 ふと、そんな考えが脳裏を過ぎった。次の瞬間、考えるよりも先に口が動き言葉を紡いでいた。 「私がロケットを墜落させる事を軽くは考えていないのと同じように、彼女もミッドガルに墜落させる事を軽くは考えていなかった」 真相は分からない。けれど、彼女の事だそうに違いない。……そう、信じたい。 だから無責任かも知れないが、この言葉が少しでも彼にとって救いになれば良いと思った。 「リーブ君、覚えておくと良い。自分の正義を貫きたいのなら、へたに真意を見せないことだ」 ――彼女がそうであったように、私がそうであるように。 「…………」 「無知を装うでも構わない、バカにしたい奴にはさせておけばいい。最終的に目標を達成できさえすれば、問題はないのだから」 今なら分かる。彼女がなぜ、統括責任者にならなかったのか。 それを、リーブに伝えておきたいと思った。私が見た、私が知る限りの真実を。 「しかし彼女は、それができなかった。自らの理想を求め続け……現実の前に屈した」 神羅の宇宙開発部門に籍を置き、私も似たような経験をしてきた。だからこそ分かる、抗いようのない現実の大きさを。私も――彼女とは違う形で――それに屈した人間のひとりだったから。 ――「お願いよ、この都市を完成させて。そして神羅の……暴走を、止めて。」 「主任は……ミッドガル、を……」 彼の中に思い当たる節でもあったのだろう、リーブは何かに気づきかけたように短く呟いた。それでもまだ信じられないと言った顔をしているリーブに、私はこう続けた。 「君が言う宇宙開発事業の規模縮小は、水面下ではこれまでにもさんざん言われ続けてきた事でね。特に今回のロケット墜落の件では……当然だが内外からずいぶん叩かれているし、予算削減の提案には絶好のタイミングだ。だがこれまでにも大小を問わず事故は起きている、中には死者を出すものもあった。しかし、それでも会議の席上でこの話を出したのは君が初めてだった。どうしてか分かるかね?」 リーブは無言のまま首を横に振る。それを確認してから私は更に続ける。 「規模縮小を提案しても、実現されないと誰もが知っているからだよ。宇宙開発部門は君の指摘通り表面上の採算性は悪い、しかしね、我々が存在する理由は収益以外にもう1つある。それは神羅にとって、目先の収益よりも重視すべきものだ」 それは同時に、私が屈した現実そのもの。 「……まさか」 察したのだろう、顔を向けたリーブに頷き返す。 「そう。……所詮、我々の本質は戦争屋、死の商人……ここは変わっちゃいないよ、昔から何一つも」 「宇宙開発事業は……軍事転用を見込んでの技術開発であると?」 「その通り。ロケット技術は安易に長距離兵器にも転用できる。我々の真の目的は兵器開発に過ぎない」 宇宙開発、人類の夢という美しい理想で飾られていても、薄っぺらい飾りを剥げば所詮は醜い現実が顔を覗かせる。 プレートの上は理想都市だと綺麗に取り繕っても、すぐ下は貧民層のたまり場になりつつあるこの都市と同じだよ。 臭い物、醜いモノには蓋を。それが我々の、いや人の本質なのだよ。 あるいは残酷なまでの本心を、強固な建前で覆った世界。それが現実なのかもしれないね。 それを知りながら、それでも尚その上で踊り続ける事を選んだのは、他の誰でもない私自身だ。今さら愁いなどを感じたりはしない。 「…………」 黙り込んでしまったリーブに、先ほどの言葉を繰り返す。「自分の正義を貫きたいなら、へたに真意を見せないことだ」。リーブに向けて言っているはずなのに、なぜか自分への言い訳じみて聞こえる。 ……いや、言い訳だ。 「たとえ兵器開発の一環であったとしても、宇宙へ行ける可能性がここにあったのは事実だ。私自身が宇宙へ飛び立つ夢が叶わない今となってもまだ、その夢を捨てきれずにいる。だから未練がましくもここにいる」 夢にしがみつこうとした。他人から見ればその姿がどれほど滑稽に映ったとしても。それが、私にとっての正義なのだ。そう、思うしかなかった。 ここまで話してようやく気づく。 私は、忘れてしまっていた若かりし頃の夢を思い出したのだと。 同時にそれは、二度と取り戻せないという事も、知っている。知ってしまった。 それを――託そうとしている? 畑違いの彼に? だとしたら私も、ずいぶん大きく軌道を外れてしまったと言うことか。 それからしばらく、私達は無言だった。私はその間に、自分の過去を見ていた。ここへ至るまでの記憶――それはまさに、私自身の飛行記録なのだろう――恐らくはリーブもそうだったのかも知れない。 先に口を開いたのはリーブだった。 「私は……主任から、この都市を託されたのだと思っていました。私の理想とする都市を目指せば、主任との約束を果たせると……そう、信じていました」 続けて小さく「思い上がりだったでしょうか?」と、ぽつりと呟くリーブの姿が、少しだけ不憫に思えた。彼は、前任者たる彼女の事を信頼していたのだろう。だからこそ私の語った真相に驚き戸惑っているのだ。それらは短い言葉の中からも充分うかがい知る事ができた。 しかし、この程度で屈するほど弱い男だとは思わない。……そんな弱い人間が、統括になどなれるはずがないと言う事は、誰よりも私が一番よく知っている。 「だとしたらそれを貫けばいい、君の思う理想を目指すんだ。たとえ、何を犠牲にしても」 「犠牲……」 その言葉に躊躇するリーブを説得するように、こう言った。 「なにも結論を急ぐ必要はない。君ひとりが簡単に把握できるほど、神羅は小さくないのだよ。……それと、恐らくこのミッドガルという都市も、そう狭くはない。管轄外の私が言えたことではないがね」 それから席を立つ。すっかり長居してしまった。 「久しぶりに有意義な時間を過ごせたよ、ありがとう」 何かを告げようと口を開きかけた様だったが、けっきょく何も語らずに彼も席を立ち礼を返す。どこまでも律儀な男だと思った。 「……君のようにやる気のある統括が就任してくれれば、この都市も安泰だろうな」 「あの」 統括室の扉の前で呼び止められたが、振り返ることはしなかった。 彼の言葉は聞かずに、最後にこう忠告しておいた。 「以後、外で私に話しかけてもまともに言葉を返す事はないだろう。残念ながら君の力になることもない。……ここでお別れだ、リーブ君」 背後に立つ彼は、何故ですかとは聞いてこなかった。その代わり、こんなことを言った。 「統括。……この次は、お茶をご用意しておきますね」 この男と話をしていると、どうも調子が狂う。私がここへ来る事はないのだと忠告していると言うのに。 「……その方が有り難いな。そうそう、くれぐれもお茶には砂糖ではなくハチミツを添えるのを忘れないでくれよ。砂糖は溶けにくいからね」 しかしこの日以降、私が都市開発部門統括室の扉をくぐることは二度となかった。 *** あれからずいぶん経った。 たとえ何であろうと、会議での決定には従わなければならない。そう言えば君は不在だったね? もっとも、今の私に意見を求める者など誰もいやしない。 重役会議全会一致で派遣されたこの村で、まさか君に会うとは思わなかったよ。久しぶり、元気してた? ……って声かけようと思ったんだけどね、そうそう忘れるところだった。君いま諜報活動の真っ最中だったっけ。本業の都市開発ならまだしも、相変わらず苦労が絶えないね。 聞いてくれるかね? あれから私もずいぶん苦労してね。 結局。 もう、私の中には何も残っていないんだよ。 かつて求めた夢も、理想も。何ひとつも残ってやしない。 信じてついて来た、その道の先頭を歩いていた人が目の前で死んだ。 人間なんてあっけないモンだよ。 ああ、あっけない。本当にあっけないね……。 だって一刺しだよ一刺し。 あれじゃ酒場でつまみに出されてるメニューと変わりないじゃないか。 ま、ボタン一つでプレート落っこちる世界だからね。 何が起きても不思議じゃないよ。今度はロケットどころじゃなく隕石でも落っこちて来るかもよ? 気をつけないとね。……どうやって気をつけるのかは知らないけど。 宇宙開発事業が再開されることはないと、新たに就任した社長の口からも聞いてしまったしね。 ずいぶん簡単に言ってくれたもんだよ。 とはいえ、こうなることは前々から分かっていた事だがね……。 せめてあの時……君の提案が通って事業規模縮小されていた方が余程マシだったと思うよ。 今さらだけどね。 そう言えばあの猫が君だね? お互いにずいぶん妙な道を歩んでしまったものだ。 しかも、こうして鉾を交えることになるとは。 ……仕方がないことなのかも知れないね。 そうそう、くれぐれもお手柔らかに頼むよ、こちらは生身なのだし。 最後まで踊り続けよう、滑稽だと笑いたければ笑えばいい。加速してでも踊り続けよう。 私と同じように、飛び立てないまま放置されたロケットや、パイロットのいる――宇宙に一番近いこの村で、最期を迎えるのも悪くはない。 これも会議の決定でね。 ほら、迎えの車が来たよ。……トラックだけどね。 ―Se la gatta va al lardo....<終>― |
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* 後書き(…という名の言い訳) |
ここまでお読み下さって有り難うございます。
FF7Disc2のミッドガルへのウェポン襲来に際して、ケット・シーを経由したリーブの救援要請を受けて、現地に駆けつけた折りにシドが語るセリフ。
このSSのタイトルは「Tanto va la gatta al lardo che ci lascia lo zampino」というイタリアの慣用句から。“猫”と“ラード”ってだけで閃いたというのがキッカケだったりする。
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