定期的な運動は心臓発作・脳卒中のリスクを低減させる

最新疫学研究情報No.36

米国のハーバード大学医学部サミラ・モラ博士の研究チームによって「定期的な運動は心臓発作・脳卒中のリスクを低減させる」との報告がなされました。

研究チームは、45~90歳(平均55歳)の女性27055人を対象に「①週に5時間以上の運動(*活発なウォーキングなど)をするグループ」「②2~3時間のグループ」「③1~2時間のグループ」「④1時間未満のグループ」に分けて11年以上にわたる追跡調査を行いました。被験者の身長・体重・BMI・高血圧症や糖尿病の有無などのデータをもとに調査が進められました。(被験者のうち、979人が心血管疾患を発症しています)

その結果、最も運動時間の多かった①グループは、最も少なかった④グループに比べ、心臓発作や脳卒中の発症リスクが41%減少することが明らかになりました。また②と③のグループも、④グループに比べ発症リスクが低減(②-32%,③-27%)することも確認されました。

同時に研究チームは、定期的な運動がどのように心臓発作を予防するのかを知るために、心血管疾患のリスク要因(*高血圧・高コレステロールなどがよく知られている) と運動の関連性についても調査を行いました。被験者の血液検査のデータを分析した結果、定期的な運動は、CRP(*動脈の肥大・炎症状態を知るための指標) やフィブリノーゲン(*血液凝固因子) などの値を低下させ、動脈の炎症を抑え、血栓(血液凝固)の状態を改善させることが明らかになりました。この効果が、心臓発作・脳卒中の発症リスクを最も低減させることが確認されました。またさらに運動の効果として、血圧値の改善、血中脂質(コレステロールなど)の改善、BMIの低下、ヘモグロビンA1c(*過去1~2カ月の血糖の状態を表す指標) の改善が認められました。

出典

  • 『Circulation 2007年10月号』
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