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病案〔カルテ〕  1.000  2001.12.16

 日本では針灸治療に、カルテの記載義務はありません。〔健康保険取り扱いには必要〕しかし、
中医学治療の実際は同じ症例や証はほとんどありませんし、治療も同じ経穴ばかりを用いることは
ありません。四診から証、治則、経穴の処方や手技、治療の評価等、全て患者さんごとのオーダー
メイドとなるため、カルテの記載は大変重要になってきます。また、中医学で治療を行う治療院は
用語が共通のため、カルテが残っていれば転院の際の紹介に大変役立ちますし、症例検討で
カルテを基に指摘し合えるため中医学での診断力もついてきます。ここではカルテ記載について、
中医学の特徴だけを簡単に取り上げます。

1.四診部分 
 望、聞、問、切診について記録する。症状を羅列するのではなく、特に辨証に関しては関係する
 項目を系統的、重点的に記録する必要がある。

2.辨証部分 
 四診部分の記録に基づき、病因、病機、臓腑経絡、陰陽虚実等の面より考察を加える。まずは
 外感病か内傷病か、仮に外感病であれば傷寒、温病等か、考察を深めて六経辨証や衛気営血 
 辨証ではどう捉えるか、外感病でなければ主はどの臓腑か、次に関与が深いのはどの臓腑か、
 更に考察を深めて虚実、寒熱を把握する。多様な症状等を全面的に説明できる簡潔な辨証を行う。

3.立法部分 
 辨証に基づき治療方針を立てる。例えば辨証で崩漏病、心脾両虚とした場合には、補益心脾、
 統血止漏となる。複数の兼証がある場合には、辨証の標本・先後・緩急等を踏まえた治療方針を
 立てる。

4.処方部分 
 立法に基づいた具体的な治療方法〔針灸・中薬等〕を記載する。針灸であれば使用する経穴や
 補瀉手技等を記載する。

 中国の実際のカルテには現代医学の観点から、血液検査のデータ等も書き込まれていましたし、
西洋医学の医師〔西医と呼ぶ〕からの意見や併用する薬品〔西医を含む〕も記載されていました。
中国でのカルテは中医学の特徴こそあるものの、日本での病医院のものと全く変わりませんでした。

 私の治療院では中国の病医院ほどしっかりしたカルテは作れていませんが、上記の部分に加えて
治療効果の評価法を付け加えるようにしています。例えば五十肩では可動域を継続して測定したり、
顔面神経麻痺では変化を写真等に残しています。四診部分は医道の日本社の最新鍼灸カルテを
使い、舌診・脈診も書き込みます。辨証や立法については明確な場合は書いています。処方に
ついても必ず記載し、前回の治療が見えるようにしています。日本の治療院ではカルテの記載義務が
ないため、治療はともかくカルテの内容がお粗末な場合もあるようですが、自分の辨証等の技術も
向上しますので、最初はうまく書けなくてもカルテをつける習慣は身に付けたほうが良いと思います。

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