衛気営血辨証 1.000 2001.11.17
衛気営血辨証とは、清代の葉天士が提唱した外感温病の辨証方法である。六経辨証を
基礎として発展した辨証法であり、外感病の辨証を、衛分、気分、営分、血分の四種の証侯に
分類している。
1.衛分証侯 温熱の病邪が肌表に侵襲し、衛気の機能が失調しておこる証侯。外感温熱病の初期。
発熱、軽い悪風悪寒、舌辺と舌尖が紅、脈浮数 頭痛、口乾や軽い口渇、咳嗽、咽頭腫痛等を伴う
2.気分証侯 温熱の病邪が臓腑に入り、正邪闘争により陽熱が亢進した裏熱証の証侯。
発熱、悪寒はなく悪熱がある、舌質紅・舌苔黄 脈数、心煩、口渇、尿赤等を伴う
熱が肺に阻滞-咳喘、胸痛、黄色の粘い痰を吐く
熱が胸膈に入る-心煩、心窩部の不快感、座っても臥しても落ち着かない
熱が肺胃に在る-自汗、喘急、煩悶、煩渇、脈数・舌苔黄燥
他にも様々な臨床表現がある
3.営分証侯 温熱の病邪が深く内陥した段階で、営陰が損傷し心神の病変が現れる特徴がある。
身熱があり夜間に増悪、口渇はあまりない、心煩、不眠、意識障害、斑疹、舌質紅絳、脈細数
4.血分証侯 温熱の病邪が最も深くまで入った最終段階。耗血、動血、傷陰、動風等の特徴がある。
血分実熱-営分証侯に加え、高熱、狂躁、はっきりした斑疹、各種の出血症状、身体各所の拘急等
血分虚熱-微熱が続く、潮熱、五心煩熱、口咽乾燥、精神不振、難聴、肢体消痩、舌の少津等
衛気営血辨証も六経辨証と同じく、主に中薬〔漢方薬〕の処方に用いられるケースが多い
辨証方法です。針灸治療の適応の可否としては、衛分証、気分証までが一般的でしょう。
営分証や血分証に該当する疾患は、コレラや悪性マラリヤ、チフス等の悪性伝染病等であり、
現代の日本では針灸院に来院されることは考えられません。仮に治療する機会があったとしても
営分証、血分証に関しては病が深く、本物の実力を持った治療家でなければ手に負えません。
奈良に本部を持つ北辰会では、独自の見解として内傷病に関しても衛気営血辨証で当て
はめることができるとしていますが、この見方を当てはめても営分証、血分証に該当する疾患には
末期癌等の重症疾患が該当するため、針灸院に直接自分で来院されたことは私も経験が無く、
往診〔寝たきり〕の患者さんで時々出合うのみです。この状態での針灸治療は幾らか症状を
和らげることは出来ても、回復を期待することは難しいでしょう。 ですが、逆にいえば末期医療の
一手段として針灸治療が適しているとも云えます。