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1.陰陽論 1.001 2000.9.10

  陰陽論とは中国医学のみならず、日本を含む東洋の昔からの物の見方や
 考え方に深くかかわっています。すなわち、寒熱、動静、左右といった対立する
 ものがあり、同じものの中にも、寒熱、動静、左右があること、またそれは絶対的
 なものではなくて、全てが常に変化し影響を与え合うということを前提とします。 

  陰陽の分類は対立するものの相対的な分類です。特に人体においては、動き
 や暖める作用、上昇するものを「陽」とし、落ち着かせたり冷やしたり、下降する
 ものを「陰」としています。よく自律神経の交感、副交感神経の働きで説明しよう
 とする向きがありますが、少し無理があります。ここではイメージとして物事を陰
 陽に分けることが大切です。

〔1〕陰陽の依存関係
  陰陽に分類できるということは、互いに相手があるということです。つまり、どちら
 か一方では成り立たないということです。人体の例でいえば肺の実質である肺臓
 そのものが陰に当たり、その働きである呼吸は陽となります。どちらもなくてはなら
 ないものですね。 

〔2〕陰陽の対立、制約の関係
  陰陽は互いに依存しあいながら対立し、また牽制しあっています。これは人体の
 例でいえば風邪の発熱を発汗で下げるなどの、体温調節の仕組みを考えてみれば
 わかります。

〔3〕陰陽の消長、転化の関係
  冬は夜〔陰〕が長くなり、夏は昼〔陽〕が長くなります。四季はゆっくりですが毎日
 確実に変化していきます。人体も様々な影響により毎日、毎年と常に変化しており、
 これを消長といいます。そして夏至や冬至を境に、季節は逆の変化を始めます。
 人体でも病気のときなどに、あるときを境に病状が大きく変化し始めることがありま
 す。これが転化で、一定の法則により起こります。

  なにやら占いのようですね。そうです、陰陽論は占い〔易学〕から医学の中に取り込
 まれた理論です。また仏教など東洋思想にも根強く残っており、物事は絶えず揺れ
 動いており、バランスを保っているという辺りが、人体にうまく当てはまっています。
 現代医学でも「ゆらぎ」などということが云われますが、突き詰めていくと東洋思想に
 近づいていくのかもしれません。

お薦めの文献 針灸学「基礎篇」 東洋学術出版社

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