目の健康に影響を与える医薬品情報 本文へジャンプ
最終更新日 11.12.1    1.002

このページでは副作用などとして、目の健康に影響を与える可能性のある医薬品の内、当院の患者さんで実際に生じた実例を紹介しています。一般に健康な患者さんへの医薬品の副作用は、それほど頻発するわけではありません。しかし既に眼科領域の疾患を発症されている患者さんに対しては、かなり高い確率で発症・悪化する可能性があります。

紹介している副作用情報は、全て医薬品メーカー発行の添付文書、今日の治療指針[医学書院]、眼科薬理学[文光堂]、眼科学などの専門書から抜粋している確実な情報です。当院の臨床結果から注釈を入れる場合には、そのことが分かるよう配慮して記述しています。当ページの情報に基づき、服用中の医薬品の変更を考えられる場合には、必ず医師に相談していただき、自己判断で中止することのないよう、お願いいたします。


医薬品リスト (製薬メーカー各社の商標名を記載しています)

◆抗コリン作用を持つ全ての医薬品 様々な医療の各分野で幅広く処方

・副作用として、散瞳による眼圧上昇リスク、眩しさ等の眼の症状、涙液減少によるドライアイ

・全ての抗コリン作用を持つ医薬品は、瞳孔括約筋を弛緩させ散瞳を伴うことから、眼圧を上昇させる恐れがあります。特に隅角が狭い患者さんの場合に影響が大きく、急激に眼圧が上昇する閉塞隅角緑内障が代表的な副作用として挙げられます。しかしながら隅角がそれほど狭くない場合でも、散瞳により少なからず眼圧上昇を伴う可能性は残り、長期間の抗コリン薬剤の使用は視神経へダメージを与えている可能性があります。既に緑内障等の診断を受けている患者さんは、できるだけ避けた方が安全と考えられます。

・当院でよく見かける抗コリン作用を持つ医薬品の副作用は、瞳孔が散大することによる眩しさが挙げられます。抗コリン作用を持つ医薬品は、かぜ薬から抗うつ剤まで非常に幅広い分野で処方されており、気が付かないうちに服用している場合も少なくありません。また涙液を減少させることから、ドライアイの原因になることもあります。医薬品の副作用としての抗コリン作用は、重篤なものは少ないものの、実は様々な目の症状に関わっていますので、必要以上に服用することは控えるべきでしょう。

・一般的に処方される抗コリン作用を持つ医薬品ではありませんが、当院の患者さんで眼科受診時に検査のため、抗コリン作動薬(アトロピン)で散瞳したところ、帰宅後に急性の閉塞隅角緑内障を発症したケースもあります。先天的に隅角が狭い患者さんも少なからずありますので、抗コリン作用を含め散瞳による眼圧上昇には注意が必要です。なお、国内で眼科領域の大規模な統計を行った多治見スタディによると、隅角が狭く急性緑内障を発症する恐れのある人は、人口の4.5%とされています。


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◆セレスタミン(錠、シロップ) 特に花粉症治療薬として、耳鼻咽喉科・内科等で処方
同種類の医薬品 アプシラジン、エンぺラシン、クロコデミン、サクコルチン、セレスターナ、ヒスタブロック、ビヘルス、プラデスミン、ベタセレミン

・副作用として、緑内障、後嚢白内障(連用で眼圧亢進、緑内障、後嚢白内障)、中心性漿液網脈絡膜症等による網膜障害、眼球突出等

・花粉症等への抗アレルギー薬として、小児から成人まで幅広く処方されています。錠剤1錠につき2.5mg、シロップ1mg当り0.5mg相当のステロイドを含有しており、ステロイドと同様の副作用を生じる可能性があります。一般的な緑内障・白内障のリスクに加えて、網膜の浮腫(中心性漿液網脈絡膜症)を発症・増悪する可能性があり、特に黄斑変性症、網膜静脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症を持つ患者さんは変視(歪み等)が発症・悪化する可能性があり、注意が必要です。

・当院の臨床や患者さんからの聞き取りでは、網膜色素変性症の方で服用直後から大幅な視野狭窄(30〜50%)を生じた症例があり、他にも網膜色素変性症の視野狭窄進行や黄斑変性症の発症に関与したと考えられる症例がありました。ステロイド系薬剤は、特に内服・坐薬で副作用として網膜障害が明記されており、既に関係する眼科疾患の患者さんには、ハイリスクと考えられます。非ステロイド系の抗アレルギー薬への変更が賢明と思われます。

・なお、ステロイド系の点眼・点鼻薬、外用薬については、内服薬や坐薬のような網膜障害の記載はありません。しかし、結果的に体内に吸収され、内服薬や坐薬と同様に体へ作用することから、できれば避けた方が良いと考えられます。


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◆キサラタン(点眼) 眼圧下降を目的として、眼科で処方

・副作用として、虹彩色素沈着、結膜(結膜充血、結膜炎、眼脂、結膜濾胞)、ぶどう膜(虹彩炎、ぶどう膜炎)、角膜(角膜上皮障害、点状表層角膜炎、糸状角膜炎、角膜びらん、角膜浮腫)、眼瞼(眼瞼色素沈着、眼瞼炎、眼瞼部多毛、眼瞼浮腫、眼瞼発赤)、その他〔しみる等の眼刺激症状、そう痒感、眼痛、霧視、前房細胞析出、流涙、睫毛の異常(睫毛が濃く、太く、長くなる)、異物感等の眼の異常感、嚢胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫、及びそれに伴う視力低下、接触性皮膚炎〕

・緑内障や高眼圧症の治療薬として、眼科で処方される頻度の高い点眼薬です。眼内炎(虹彩炎、ぶどう膜炎)の既往者は眼圧上昇の可能性があり、網膜動脈閉塞、網膜剥離、糖尿病性網膜症での硝子体出血等にも注意が必要です。基本的に緑内障や高眼圧症以外の眼科疾患がある場合は、注意が必要な点眼薬といえます。

・当院の臨床からは、網膜静脈閉塞の患者さんで、キサラタン使用後から変視(歪み)が増し、当院の指摘から黄斑浮腫が分かり、他剤に変更され変視が改善された症例があります。緑内障の患者さんに広く使用されていますが、目に関わる副作用も多いため、使用後から異常を感じる場合には、他剤への変更を考慮すべきです。


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◆プレドニゾロン(錠、粉末) 強力かつ広範囲での抗炎症、抗アレルギー作用、免疫抑制作用、代謝作用があり、ほとんどの全科で幅広く処方
同種類の医薬品 プレドニン、プレドハン、プレロン

・緑内障、後嚢白内障、中心性漿液性網脈絡膜症、多発性後極部網膜色素上皮症〔連用:眼圧上昇、緑内障、後嚢白内障(症状:眼のかすみ)、中心性漿液性網脈絡膜症、多発性後極部網膜色素上皮症(症状:視力低下、変視(小視症、歪み)、中心性漿液性網脈絡膜症では限局性の網膜剥離がみられ、進行すると広範な網膜剥離を生じる多発性後極部網膜色素上皮症となる、網膜障害、眼球突出等

・合成糖質副腎皮質ホルモンで、様々な症状から難治性の慢性病まで、大変幅広く使用されている内服薬です。プレドニゾロンに代わる効果が期待できる医薬品はあまり無いため、難治性疾患では止むを得ず使用されている場合も少なくありません。しかしながら、長期間の使用は目に対し、かなり強い、しかも高確率で発症する副作用を持ちます。必要最小限の量として、漫然と使用しないことが大切です。

・当院の患者さんでは、続発性のステロイド緑内障の診断だけでなく、ステロイドの長期使用が関与していると考えられる緑内障の方が少なくありません。潰瘍性大腸炎等では原因疾患への針灸治療を行い改善させ、少しでもステロイドの使用量を減らすことで、副作用を回避できた症例もあります。また量にもよりますが、一年を超えて服用していて、新たに副作用に該当する症状や疾患が生じた場合には、ステロイドの副作用を疑う必要があります。

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◆ベタメタゾン(点眼、点鼻、坐薬、軟膏等) 強力かつ広範囲での抗炎症、抗アレルギー作用、免疫抑制作用、代謝作用があり、ほとんどの全科で幅広く処方
同種類の医薬品、リンデロン、リノロサール、サンベタゾン

・連用により眼圧亢進、緑内障、後嚢白内障、中心性漿液性網脈絡膜症等による網膜障害、眼球突出等


・ステロイド系の代表的な薬剤で、眼科では、ぶどう膜炎をはじめ様々な炎症性疾患、他科ではアレルギーや炎症性疾患を中心に幅広く処方されています。副作用の強さは内服薬ほどではありませんが、やはり長期間の使用により、副作用は高い確率で生じることが分かっています。

・ステロイドによる眼圧上昇については海外の報告として、4〜6週間の点眼液の使用により、0.1%デキサメタゾン、0.1%ベタメタゾン(リンデロン)等で、正常成人の5%が16mmHg以上の眼圧上昇、眼圧値32mmHg以上となり、30%が6〜15mmHgの眼圧上昇、眼圧値20〜31mmHgであったという報告があります。長期間の使用では副作用が更に大きくなりますので、必要最低限の使用とすべきです。

・当院の臨床では、ぶどう膜炎や潰瘍性大腸炎の患者さんで、眼圧上昇や黄斑変性症の悪化が見られ、針治療による原疾患の改善により、リンデロンが不要となり、副作用も改善された症例があります。ステロイド系薬剤を必要とする病気は難治性疾患も多く、一筋縄ではいきませんが、できる限り原疾患を改善し、ステロイド系薬剤の必要量を減らすことが先決です。また非ステロイド系薬剤へ切り替えが可能であれば、切り替えられることをお勧めします。

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当院からのアドバイス

・現代医学は大変幅広く深くなっていますので、各分野の専門医制は当然なのですが、医薬品による副作用は専門分野を超えて生じてきます。医師は基本的に自身の専門分野の立場から患者さんを治療するため、特に他科領域の副作用についてはよく分からなかったり、認めようとしない場合があります。実際、副作用等の可能性があり、調剤薬局から医師へ処方を確認する「疑義照会」では、9割が「変更せず」というデータもあり、多くは無視されてしまう実態があります。(調剤に関わる薬剤師の立場から実際に報告された内容ですが、医師の立場からの要請で公表されない内容です)

・ステロイドを例とすれば、3人に1人は服用により眼圧上昇をはじめ、何らかの影響を受け、長期間の使用では、更に多くの方で副作用が生じてくることが専門書に記載されています。多くの医薬品が充分な説明無く処方されているのが実状であり、大きな副作用が生じてから対処しているのが日本の医療の姿です。医薬品の副作用から自分自身を守るためには、自分で調べて納得した上で使用するくらいしかできません。

・薬の服用は病気の種類によって止むを得ない場合もありますが、全ての薬は必要以上に使用しないことが基本になります。副作用の可能性のある症状に気がついたら処方した医師だけでなく、副作用の出ている分野の専門医に意見を求めることも大切です。

    本ページの内容は現代の眼科医学及び中医学、千秋針灸院の治療実績に基づいて書いているものです。
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