外眼筋麻痺・眼球運動障害による複視     更新日 24.11.6   1.000 本文へジャンプ

動眼神経麻痺、外転神経麻痺、甲状腺眼症などによる両眼視の複視、重症筋無力症や眼瞼下垂などによる片(単)眼視の複視


現代医学での概要と当院の針治療 
患者さんからよくある質問 
院長からひとこと

現代医学での概要と当院の針治療

・脳出血等に代表される脳中枢の病変や外傷、糖尿病、甲状腺眼症、高血圧症や動脈硬化症、副鼻腔等の炎症等、様々な原因で、眼位ずれや眼球運動障害、頭位異常などを生じ、複視やめまいといった自覚症状があります。突然発症した場合は、脳出血で脳中枢に病変が生じている可能性がありますので、最優先で医療機関での精密検査が必要になります。脳検査で問題が無く、循環改善薬などで経過観察となる場合には鍼治療が適応です。

動眼神経麻痺


・動眼神経は内直筋、上直筋、下直筋、下斜筋、上眼瞼挙筋、瞳孔括約筋、毛様体筋を支配していて、単独もしくは複数の麻痺が組み合わされて、眼瞼下垂や複視、散瞳や調節性麻痺を生じます。複視を生じる場合の特徴は主に上下方向のズレ(他方向のズレも有り)を伴う見え方となります。

・当院では糖尿病に伴う動眼神経麻痺と、原因不明の特発性麻痺が多くなります。糖尿病に合併するケースでは原疾患と共に網膜症の治療・予防も併せて鍼治療を行っていきます。原因不明の特発性麻痺では発症から早い程、鍼治療を行うことで回復も早くなり、数ヶ月以内での完治が目標となります。発症から長期間経過した特発性麻痺については、鍼治療では1年以上かかるケースもあるため、プリズム眼鏡や手術を推奨します。

滑車神経麻痺

・滑車神経は上斜筋を支配しています。滑車神経麻痺では内下転の眼球運動障害を生じて、複視を矯正するために頭位異常を示すことが多くなります。複視を生じる場合の特徴は、麻痺の強さに応じて視界に傾きを伴う見え方になります。

・当院では交通事故などの外傷による滑車神経麻痺が目立ち、障害の程度にもよりますが改善されてくると複視による視界の傾きが正常に近づいてきます。外傷の場合は他の神経に障害があるケースも多く、回復は障害の程度に左右されます。外傷の場合は発症・受傷時から1年程度までが鍼治療の目安になります。

外転神経麻痺

・外転神経は外直筋を支配しています。外転神経麻痺では麻痺眼は外転の眼球運動障害となります。複視を生じる場合の特徴は麻痺側への主に左右方向のズレを伴う見え方となります。

・原因不明の特発性の外転神経麻痺では発症から早い程、鍼治療を行うことで回復も早くなり、数ヶ月以内での完治が目標となります。発症から長期間経過した特発性麻痺については、鍼治療では1年以上かかるケースもあるため、プリズム眼鏡や手術を推奨します。

重症筋無力症(眼筋型)

・視神経接合部のアセチルコリン受容体に対する抗体により生じる自己免疫疾患で、眼筋型では眼瞼下垂がみられ、眼球運動障害に伴い複視を生じます。疲れると症状が悪化することも特徴です。抗コリン剤やステロイド治療が中心で、眼瞼下垂や外眼筋に対する手術を行う場合があります。

・薬物治療に鍼治療を加えることで、眼瞼下垂や疲れると悪化する症状は緩和されます。自己免疫疾患のため完治は難しいのですが、鍼治療は寛解期を出来る限り維持する治療間隔で行っていきます。

甲状腺眼症

・甲状腺機能亢進症に合併して生じることが多く、眼球突出、上眼瞼後退、眼瞼浮腫等がみられ、下直筋(上転障害)、内直筋(外転障害)の麻痺も起こり易くなります。甲状腺の原疾患に対する治療の他、眼症状の固定が確認されたら眼筋麻痺の手術や、視神経症を生じるケースでは眼窩減圧術を行う場合があります。

・内科的な薬物治療が中心になりますが、鍼治療により眼瞼浮腫の軽減や眼痛等の症状は軽快することが多く、眼球突出についても発症から比較的早期であれば数ミリ程度の改善はみられます。眼球周辺の炎症消退に加えて、下直筋麻痺による上転障害等も改善する傾向があり、視力低下を伴う視神経症も回復し易くなります。詳細は甲状腺眼症のページをご覧下さい

眼瞼下垂

・コンタクトレンズ(CL)の長期装用や加齢、眼瞼けいれん等による眼瞼下垂は、重症になると片(単)眼での複視を生じます。軽度の眼瞼下垂はCLの装用時間を減らすことで悪化を防ぐ効果はありますが、瞳孔にかかる程の眼瞼下垂は原則として手術の適応です。

・鍼治療は他の眼科疾患と共に軽度の眼瞼下垂に限り、悪化を防ぐ程度の目的で行っています。治療後は眼瞼がスッキリして目の開き方が改善するなどの効果はみられますが、時間の経過と共に戻ることも多いです。眼瞼下垂については予防や維持が主であり、治癒を目的にできる程の効果は望めないとお考え下さい。


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患者さんからよくある質問


Q 急に複視になり眼科では循環改善薬で様子をみていますが、、鍼治療で良くなりますか?

A 脳検査等で異常が無く、突然発症した動眼神経や外転神経等の麻痺に伴う複視は、3~6ヶ月程で自然に治癒することも多い疾患です。しかし重症の場合など順調に治癒に向かわない例もあり、1年近く経ってから当院に来院されるケースもあります。当院では比較的早期に鍼治療を開始できた場合には、1~3ヶ月以内に治癒することが多いです。一方で治らないまま1年程も経過してしまうと治癒まで1年近く掛かったケースや、結局手術を選択された症例もあります。当院の経験上、早期なら確実に治癒が期待できますので、初期の脳検査で問題が無い事が確認されたら、出来るだけ早期に鍼治療を開始されることをお勧めします。

Q プリズム眼鏡(シールタイプを含む)を勧められましたが、使用した方が良いでしょうか?

A プリズム眼鏡(シールタイプを含む)は、現状の複視を軽減する目的として有効です。但し今後の回復が見込まれる場合には、必要以上に頼りすぎると眼筋による視機能の自律調節が上手く進まず、回復が遅れたり止まるなどして回復の妨げになる可能性があります。逆に麻痺が半年以上も続き、複視が固定している場合には、手術やプリズムの選択が適切です。回復期にある複視でも屋外での移動等、安全に不安を感じる場合にはプリズム眼鏡(シールタイプを含む)を積極的に使用しましょう。


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院長からひとこと


・脳疾患や外傷等では無く、突然発症した眼筋麻痺・複視は早期であれば比較的容易に治癒することが多いです。眼科で経過観察となっていて中々回復が進まない場合でも、鍼治療を始めると回復が加速することで驚かれる症例は少なくありません。来院された際にはプリズム眼鏡(シールタイプを含む)の使用や、日常生活上での注意点等もお話しします。不明な点は出来る限り解消して、早期の治癒に向けて取り組みましょう。

・千秋針灸院には様々な病気や症状の方が来院されますが、当院は眼筋麻痺や複視では50名以上、20年を超える治療実績があります。この結果、データや治療法、経験も豊富に蓄積されているため、患者さんの様々な状況に合わせた治療方法を提案することが可能です。

・当院の眼科領域の治療は、唯一の専門領域と位置付けているため、全力を挙げて眼科疾患に集中した取り組みを行っており、 他の眼科領域の疾患も含め、高い専門性を皆様に役立てられることを目指しています。遠方の方は提携治療院等、通える範囲にある治療院をご紹介していますが、眼科領域の疾患は適切に対応できる治療院が限られますので、通院可能な場合は出来る限り当院もしくは提携治療院での治療をお薦めします。

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   本ページの内容は現代の眼科医学及び中医学、抗加齢医学、千秋針灸院の治療実績に基づいています。
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