瞳を見開いて立ち尽くす従弟に、セオドレドはあいまいな笑みを投げかけた。
「どうしたエオメル、ボロミアと一緒じゃないのか」
弟君がそっと身体を離して一歩下がる。
「はい・・・ボロミア殿は急用がおありだということで、先程別れました」
「それでここに来たのか」
「はい・・・」
エオメルの思考力は低下してしまっていた。
何を言っていいのかわからず、ぼうっと立ったままセオドレドの顔を見つめるばかりである。

 するとファラミアが「中にどうぞ、狭いですが」とかれに声をかけた。
急に我にかえって、ロヒアリムはふるふると首を振った。
「い、いいえ、何も用はありませんから。ただ殿下は何処におられるのかと思っただけです」
「わたしは大抵この部屋で調べものをしているよ。昔からの習慣でね」
「わかりました、お邪魔してすみません」
エオメルはそういって頭を下げ、「失礼しました」と言いながら扉を閉めてしまった。

 残された二人は閉じられた戸口を眺め、ついで互いに顔を見合わせた。
「いいんですか」
「何が?」
「従弟殿を慣れない都に一人にして。がんぜないお顔をされていましたよ」
「平気だろう」
ファラミアは上目遣いに相手を見やった。
「誤解されたのではないですか」
「すればいいんだ」とセオドレドが素っ気無く答える。
「少し悩まないと、エオメルが成長しないからな。インパクトはいまいちだったんじゃないか?服でも脱いでいれば違ったろうが」
「当て馬にされるのは好みません」
ファラミアが眉をひそめて見せる。

「先刻の続きをしたいが、きみの機嫌を損ねたかな」
「そんなことはありませんが・・・」
二人はまた歩み寄って顔を近づけた。
頬に息がかかる距離で王子が「それにしても、きみはなんて背が高くなったんだ」と呟く。
相手は笑いながら答えた。
「これ以上は伸びませんよ、もうわたしも三十を過ぎましたから」
「そうだったか?」
セオドレドはちょっと驚いて相手を見た。最初に会ったときから何と長い月日が経ったのだろう。
だが、ファラミアは初めから大人びていた、とかれは思い返した。それはあまり幸福なことではないかもしれない・・・。

 ゴンドーリアンの白い顔を抱え寄せると、うやうやしいと言っていい仕草で王子は相手の額に口づけた。
「それだけですか」
笑いを含んだ声で弟君が言う。
「きみは大切な友人だから、戯れに手を伸ばしたくない」
「セオドレドさま・・・」
ファラミアの腕がローハンの王子の首に巻きついた。そのまま互いの身体を抱きしめあう。
王子のぬくもりを感じながら、弟君はひとりごちた。
(わたしは、気づいたときには、孤独を知っていた−−そして自分だけの世界を作り上げて愛していた。その中に入ってきてくださったあなたは貴重な方でした。あなたに伝えたいたくさんのことがあったけれど、でも、いつのまにかみんな忘れてしまった・・・)

「きみを恋人にすれば良かった。でもきみはいつもボロミアしか見てなかったから」
「ええ。わたしは兄に執着しすぎているのでしょう」
「エオメルのことはいいのか。大事な兄上に何かしでかしそうだぞ」
ファラミアは苦く笑って答えた。
「それどころではなくなりましたから。それにエオメル殿は、きっと命を懸けてボロミアのもとに駆けつけてくださるでしょう。かれは執政家の大事な味方です」
「策士め」
「だって、エオメル殿の大事な王子さまをこうして独り占めしているのですから・・・従弟殿の行動をどうこういえませんよ」
「エオメルのやつ、調子に乗ってボロミアに迫りまくるぞ。エオメルのくせに生意気だ。段々腹が立ってきたな」
王子の耳元でゴンドーリアンがクスクス笑う。

「可愛い愛すべき方々です、あなたもエオメル殿も。ロヒアリムが我らの友邦でわたしは嬉しい。セオドレドさま、あなたはわたしの愛しい方だ・・・この金色の髪が、陽にすけてきらめくさまが好きです。そうですね、太陽はひとつだけとは限らない、そのことを知るために人生があるのでしょう」
−−あの遠い昔に、あなたがローハンから来てくださって良かった。
相手の囁きにセオドレドも頷いた。
その午後の間じゅう、静かな書庫の中で二人は頼りない子供のように寄り添い、肩を抱きあって動かずにいた。



 ぼんやり歩き回っているうちに、エオメルは中庭に出ていた。
日差しが強く、額に汗がにじむ。
ついさっきまで、何と素晴らしい都かと感嘆していたミナス・ティリスが、ひどくよそよそしい息が詰まる場所に思えてきた。
マークに帰りたい、とエオメルは思った。リダーマークの草原には、あの青い瞳の美しい弟君などいないから・・・。
(疲れた)
かれは木陰に座り込むと、木肌に背をもたせかけて目を閉じた。

 午睡のまどろみに漂っていたエオメルは、太腿に温かい柔らかいものが乗ってきたのを感じて手で触れた。
まさぐるとそれが「にゃあ」と声をだす。
またおまえか・・・と思いながら再び眠りの中に引き込まれていく。
頬にかかる微風が少し温度を下げてきたのを感じながら、ウトウトしていると不意に、唇にチュッと触れる甘い感触があった。
「あ」
びっくりして目を覚ますと、ボロミアがのぞきこんで微笑んでいた。
膝で眠っていた生き物は姿を消している。

「ボロミア殿・・・」
「帰りましたぞ、エオメル殿。そうやって木陰で休んでいる姿が絵画のようですな」
「え、そんな」
ボロミア殿あなたこそ、とエオメルは相手を見つめた。いつの間にかだいぶ日が傾き、陽光は柔らかく赤みを増している。
「さあ、わたしの部屋でお話しましょう」
「は、はい」
差し出された手は暖かかった。エオメルの心に芽生えていたメランコリーが溶けていくようだ。
かれらは手をつないで歩いていった。前を行くボロミアの姿がまぶしい。
長い白い回廊を進んでいると、神々の神殿に迷い込んだような錯覚にエオメルは陥った。

 その今夜は執政とともに晩餐を過すことになっていた。
エオメルがボロミアと連れ立ってメレスロンドの大広間に入ると、既にセオドレドとファラミアが来ていた。
「お。綺麗にして貰ったな」
従弟の姿を見回して王子が言った。
ボロミアの部屋に連れて行かれたエオメルは、衣装を選んでもらい、髪は香油を使って丁寧にとかしてもらったのだった。
長い金髪が色に艶と深みを増して背にたれている。
「背が高いので服が映えますな。何を着せても似合うので、楽しかったですぞ」
ボロミアがニコニコしながらかれらに告げた。
セオドレドとファラミアも光沢のある布地で作られた長衣姿である。装飾の凝ったベルトを締め、新しいブーツを履いている。
そんな中エオメルは静かに佇む弟君の視線が気になって、落ち着かなかった。
鋭い眼差しが自分を観察しているような気がして胸がざわめいてしまう。

 やがて近衛が執政の来場を告げた。
参加者はローハン王子とその随員たち、ゴンドールの将軍数名、執政家の兄弟である。かれらは立ち上がってデネソールを迎えたのだった。
食事は豪華だったが、みな黙りがちで、張りつめた空気のもとでかれらは飲食した。
ボロミアだけは屈託なく父親と会話を交わしていたが、セオドレドもファラミアも時々尋ねられたことに答えるくらいで無駄口はたたかない。
エオメルやマークの騎士たちはひどく緊張してフォークをつかっていたが、実際はゴンドールの宴会は執政の気質を反映していつもこのような雰囲気なので、それを知っている者は気にしていなかった。
そして晩餐の終了が告げられて人々がほっとため息を吐いたその時、デネソールが突然エオメルを見据えて「そこの馬番」とかれを呼んだのだった。
一座の注目がローハンの若い軍団長に集まる。

「はっ、はい」
「近くに寄れ」
デネソールに手招かれたエオメルは慌てて突っ立った。そして言われた通りに執政のもとに歩み寄った。
「な、なにか御用でしょうか」
それには答えず、大候はかれを眺め回した。
「ふん、おまえはなかなか見栄えが良いな。ロヒアリムだから馬もよく乗りこなすじゃろうし」
デネソールは何事かぶつぶつ呟いた後、セオドレドに向かって言った。
「明日、ドル・アムロスから客人が来る。その時にこの若いのをわしの儀杖兵に貰い受けるぞ、よいか?」
「承知しました、閣下」
セオドレドが了承すると、執政は満足そうに頷いた。
そしてよくわからないでいるエオメルを尻目に、メレスロンドを退出していったのだった。
それを合図にほかの者たちも次々席を立ちはじめた。



「あの、デネソール候は何をおっしゃっていたのでしょうか」
その夜もエオメルは従兄のベッドに潜り込んでいた。
晩餐が終わり、執政家の兄弟たちに就寝の挨拶をすませると、一人だと落ち着きませんとか言いながらセオドレドにくっついて部屋に入りこむエオメルである。
正装の長衣やブーツを脱ぎ散らかして下着姿で寝台に横たわったロヒアリムたちは、ううーんとのびをして身体をほぐしたのだった。
「まったく偉い大候さまの相手は気ぶっせいだ」
「とても緊張しました」
そしてエオメルはセオドレドにデネソールの申し出について尋ねた。

「だから明日、客人を迎えるときに、きみは儀杖兵として執政の馬車を先導せよ、との仰せだよ。見た目のいい若いロヒアリムを付き随わせて客に自慢するわけだ」
「デネソール候の先導を・・・うまく出来るでしょうか」
「別に、馬に乗って背筋を伸ばしてればいいだけだろう」
「わかりました。マークの恥にならぬよう努めます」
「頑張ってくれ」
そう言うとセオドレドは欠伸をした。そして上掛けを引き上げてくるまり、「おやすみ」と告げてエオメルに背を向けた。
「殿下・・・」
従弟の指が王子の身体に回されて、掛け布団のなかで腰の辺りを彷徨う。

「眠いよ」
「でも昨夜は何もしませんでしたから、今夜は」
「わたしは年寄りなんだ」
「何を言ってるんです」
相手の身体に覆いかぶさると、エオメルはセオドレドの顎をつかんで仰向けさせた。
唇を合わせて舌を差し入れる。
「ん・・・」
従兄の口腔を探り歯の裏をなぞっているとすぐにセオドレドがかれの舌を柔らかく噛んできた。
そのまま互いの唇を貪りながら、エオメルは相手の下腹部に指を伸ばして布地の上から刺激した。
王子のものが熱さを増す。かれは下着をずり下ろして直接握った。
「エオメル」
セオドレドは従弟を押しやって身体を起こした。そして開いた足の間に相手の頭をうずめさせたのだった。
勃ちあがりかけた王子のものを抵抗することなく口に咥えると、ペニスはエオメルの口内で大きさを増した。

 舌で舐めあげ、強弱をつけて奉仕する。「ああ」とセオドレドが快感に呻く声が嬉しかった。
「随分、うまくなったじゃないか」
王子はかすれ声で囁き、「もっと奥まで咥えろ」と要求してエオメルの頭を強く押しつけた。
口いっぱいに侵入してくる苦しさに喘ぎながら、ロヒアリムは肉棒を舐めしゃぶって愛撫した。
エオメルの頭を両手ではさみながら濡れた唇と舌の感触を味わっていたセオドレドが、昂ぶりに達したところでグッと腰を入れてきた。
「くッ」
低い声を洩らして従弟の口内に情欲を発射する。
「んぅっ・・・」受け止めたエオメルもうめき声を上げた。そしてむせながら液体を飲み下した。

 セオドレドの欲望の残滓を、すべて舌で舐め清めてからエオメルは相手を見上げた。
その頬が赤く高潮している。
「よかったですか・・・?」
「ああ。覚えの早い、悪い子だ」
たくましい腕がエオメルをひきすえ、胸の下に引き込んだ。
「お返しをしてあげよう」
今度は従兄の指が下着の隙間からかれの秘密を探って這いこんでくる。
性器を擦りあげられ、乳首を揉まれるとエオメルはすぐに固く勃起させた。
「アッ、あぁ」
セオドレドの指が淫らに蠢いてかれのペニスを握りこみ、責めたてる。
「は、あッ」
エオメルは自分からも腰を動かして快楽を求めた。もう性器は汁を流して相手の手を濡らしている。

「ここも欲しいだろう?」
乳首を弄っていた指を、背中から滑り下ろして尻の割れ目に押し込むと、固い蕾に触れた。
「あ・・・んっ、ください・・・ッ」
喘ぎながら従弟が催促し、王子は指を二本揃えて突き刺した。
「ああッ」
ぎゅっとつぼまって押し返そうとするのを、熱い内部に突き進んでいくとそこは淫らにぬめって、セオドレドの指を根元まで受け入れた。
「あっ、はあっ、うあぁッ」
ペニスを揉みこすられ、もう片方の指で後腔をえぐり回されて、エオメルは堪らない刺激に身体をのたうたせるのだった。
肛門に挿入された従兄の指が、セックスそのままのようにかれの内部を激しく抜き差しして嬲っている。
「あっ、あっ、セオドレドッ、わたしはもう」
切羽詰った声を上げてエオメルは仰け反り、王子が「いきそうか?」と囁いてペニスを握る力を強めた。
「はいッ、あ、あぁッ、いくッ・・・!」
喘ぎが悲鳴に高まったとき、エオメルは王子にしがみついて絶頂に達した。

 従兄にいだかれて息を整えながら、エオメルはセオドレドの首に腕を回して囁いた。
「殿下・・・わたしはもっとあなたを感じたい−−指ではなく、あなたのものを受け入れたい・・・。どうかわたしを抱いてください」
「今イッたばかりで、すぐおねだりか。若い者はさすがだなあ」
「もう」
かれは揶揄する従兄の皮膚をぎゅっと抓った。
「あ痛」
「意地が悪いんだから」
するとセオドレドが顔を寄せてきた。ロヒアリムたちはそのままおでこをくっつけあった。

 エオメルが頬を染めて王子に言う。
「あなたと肌を合わせるのがこんなにいいなんて、この旅に出るまで知りませんでした。気づくのが遅すぎたくらいです。だからもっと快楽を教えて欲しい・・・。こんな風に思うのはセオドレド、あなただからだ」
「へえ」
だが相手は鼻で笑って、肩をすくめて見せた。
「ボロミアに恋してるくせに、ずいぶん虫のいいことをいうじゃないか」
「それは・・・」
エオメルは言葉に詰まった。
「きみは他に愛してる男がいて、わたしの身体だけが目当てなんだろう」
「そんな」
どう答えたものかとかれは視線を彷徨わせた。

「ボロミア殿のことは好きですが、殿下への感情はそれとは違っています。それはもっと・・・」
上手く答えが出てこない。エオメルは思い惑った。
ただ、セオドレドが好きだ、としか言いようがないのだった。
ボロミアや他の人間と従兄への思いの違いは、相手がどう思っているのか、自分の感情がどうなのかと考える必要がないことだった。
エオメルは生まれたときからセオドレドと共に生きていた。これからもずっと側にいるつもりである。
かれは他の誰とも違う一体感を従兄に感じているのだ。
それは恋とは違うかもしれない、もっと深いものなのだが−−確かに自分は誠実さに欠けたことを言っている、とも思ってしまう。
あまり考え事などしないエオメルには、それらの心の機微が説明出来ないのだった。

 かれは従兄に額をぐりぐりこすりつけて、訴えた。
「だって、指だけであんなに感じるんですから、もっと気持ちよくなりたいんです。そう思って何が悪いんですか、だいたい殿下のほうが最初にわたしに手を出したんでしょうが。いいからやりましょうよ」
「おお、開き直る気だな、お髭の軍団長めが」
「そうですよ、欲しいったら欲しいんです」
エオメルはまた従兄のものに手を伸ばした。
「こら」
何度か握っているうちに、それは脈打ちまた固く張りつめてきた。
「ほら、こんなに熱い・・・」
目を閉じて指の刺激を味わっている従兄の顔に、息を吹きかけながらエオメルは言った。
「どうしてわたしをあなたの物にして下さらないのですか・・・わたしは殿下と一つになりたいのに。自分から望むのは恥ずかしいことだとわかっています。でも、あなたはもうわたしへの興味を無くしてしまったのではないかと心配なんです」

「何を言ってる」
セオドレドは従弟の頬をなでて答えた。
「愛してるって言っただろう」
「なら、これをわたしの中に・・・」
大きく勃起したペニスを揉みながらエオメルが催促した。その目が欲情に潤んでいる。
確かめると、エオメル自身のものも固くなっていた。
「きりがないな、こんなことばかりしていて」
セオドレドは呟き、再び従弟の秘所をまさぐりはじめた。
「指だけじゃイヤだ」
そう言う相手を無視して三本の指をめりこませる。
「あ・・・っ」エオメルが刺激にあえぎ、高い声を上げた。
そのまま押し広げるように指を動かされ「あッ、い、痛い」と苦痛を訴える。
「ほら・・・きみのここはまだ慣れてないから、これだけで痛がるじゃないか。わたしのペニスはこの指よりだいぶ大きいぞ」
さらに深く食い込ませて掻き乱すと、従弟は金髪を散らして悶えた。
「アァッ、セオドレド、もう少し、や、優しく」

 王子は一旦引き抜いた。エオメルがハアッと息を洩らす。
あらためて従弟を抱きしめ、お互いの性器を愛撫しあいながらセオドレドが囁いた。
「わたしたちは大事な外交を展開中なんだ。快楽に耽ってる場合じゃないし、きみに怪我でもさせたらと思ってのことだよ。わたしだって我慢してるんだ」
「そうなのですか・・・」
熱い吐息をはきながらエオメルは従兄の整った顔を見つめた。
「それに、きみを抱いてしまったら骨抜きになりそうだからね。立場も忘れて浮かれてしまいそうだ。ふらふらしてたらゴンドールにも部下たちにも示しがつかない」
セオドレドの言葉にかれは赤くなった。
「そ、それほど良くはないと思いますが」
「わたしは知ってるんだよ」
さらに熱心に相手を刺激し、唇を触れ合わせながら王子が言う。
「一度きみの身体を味わってるんだから・・・よかったよ、すごく・・・熱くてきつく締め上げてきて・・・ああわたしも一刻も早く、きみを思うままに貫きたい」
「セオドレド・・・」

「ほんの何日かの辛抱だ。エドラスに帰ったら、何も遠慮することはない−−そうだ口実を設けてきみの東谷に行こうかな。部屋に閉じ込めて、獣のようにきみを貪ってやる・・・泣き叫んで許しを願っても、止めないぞ。身体が裂けるほど突きこんでしまうだろう」
「ああ・・・っ」
指と言葉で弄られて、エオメルは激しく感じてしまった。
淫靡に肢体をのたうたせ、従兄の肌を撫で回し、そのそそり勃った性器を握り締めて「もうすぐ殿下が、これでわたしを」と想像しさらに熱くなる。
ロヒアリムたちはぱんぱんに昂ぶったそれぞれのものを、強く捏ね上げた。
そして「うぁッ」「あぁッ」と耐えかねた声を発すると、同時に放出しあうのだった。

 心地よく疲労した身体を従兄の上に投げかけて抱きつきながら、エオメルは幸福感に満たされていた。
そのまま眠りに入ろうとすると、セオドレドのぼやきが聞こえた。
「まったく・・・わたしを夢中にさせておいて、ボロミアとも楽しんで、ずるい奴だ」
エオメルは静かに相手に答えた。
「−−そのことは、自分でもどうすればいいのかよくわからないのです、殿下。でも、ゴンドールに来て気づきました、わたしはボロミア殿と何かするつもりはありません。それは冒涜のような気がします」
「どういうことだ」
「あの方を見るたびに、わたしはこの方をお守りしたい、この輝きを消そうとする者と戦わなくてはと思うのです。もうそれ以上のことは望みません・・・」

 エオメルの心に根づいた恋心は、ふたたび白の総大将と会うことが叶ったいまは崇拝の感情へと昇華しつつあった。
命にかえてもあの素晴らしい公子を守護しようと願うばかりで、手を触れて欲情を満たそうとは思わなくなっている。
それは、以前ローハンを訪れたボロミアが、かれの眼前で悪鬼に犯されそれを止めることが出来なかった自責の念も作用していた。
「だからわたしとボロミア殿の仲を心配する必要はありませんよ。わたしの恋人は、あなたですから」
そう告げて、エオメルは従兄の肌に口づけた。
「ふうん・・・本当にそんな風に思っているのか。まあ、確かにもうわたしたちは恋人同士だろうね。でもきみがボロミアに惹かれる気持ちもわかるし、それを押さえるつもりはないのだが。魅力的なものに惹かれるのは男の原罪だからな・・・自分の心に正直にふるまえばいいさ」
そう言うセオドレドの声が、子守唄のように聞こえていた。
エオメルは(いいんです、わたしにはあなただけです)と答えたかったが、瞼が重く降りてきていた。

 まどろんでいるかれの髪をもてあそびながら、なおも従兄の呟きが続いていた。
「きみが執政の長子殿と楽しい時間を過ごしてるあいだは、わたしもファラミアと遊んでいればいいし・・・」
それを聞いたエオメルは、冷水をかけられたようにこわばった。
−−繊細な白い貌、こちらを見つめる澄んだまなざし。あの書庫でセオドレドとファラミアが唇を重ねようとしていた場面が鮮やかによみがえる。
かれは、そのことは極力意識にのぼせないようにしていたのだった。
そして更に、ボロミアがローハンを出立した日の光景も思い出した。
馬の鞍に兄を乗せた弟君は、空よりも青い瞳でかれを一瞥し、優雅に手綱を操ってボロミアを連れ去ってしまったのだ。
思わず顔を上げて従兄を見ると、セオドレドはもう眠りに落ちていた。

 従兄のぬくもりを感じているというのに、エオメルの胸の中には重苦しい冷気がひろがっていくのだった。



後編全三話、の予定でしたがのびてしまいました。
ぶっちゃけメルっちはファラセオボロ全員と犯りやがれ!を予定してますので後二話くらい必要かもです・・・頑張ります。




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