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最終話
武具の収納倉庫がその日の逢引場所だった。 立て掛けられた盾や槍のあいだを歩いていくと、奥に皮肉な微笑みを浮かべたセオドレドが待っていた。
わたしは王子の前に跪き、かれの性器を咥えて奉仕した。 ぴちゃぴちゃと音をたてながら舐めしゃぶっていると、口の中のものが固さを増して液を漏らす。 セオドレドの味を確かめながら吸い上げ、軽く甘噛みしてみるとかれはわたしの頭を抱えながら、「あぁ・・・」と甘い吐息を漏らした。 さらに舌での愛撫を続けていたら、王子の白い指がわたしの髪を掴んでかれのものから引き剥がした。
そして従兄は冷たい床に座りこむと、わたしの身体をひき寄せて腰の上にまたがらせた。 「尻を落として自分で入れてみろ」とかれは命令した。 わたしはセオドレドに抱きつく姿勢で、そそり勃ったものに指を添え先端を押し込みながら身体を下ろしていく。 「う・・・っ」 めりめりと押し開かれ下から侵入される感触の苦しさに思わずうめいてしまう。 「どうした−−はやく全部入れるんだ、慣れてるだろう?」 冷たい声、そして間近に見つめる刺すような視線に、わたしの心は震え、血が燃えた。
「あ・・・う、くぅ・・・!」 息を吐きながら根元まで納めると、すぐにセオドレドはわたしの腰を抱えて下から突き上げ始めた。 「うあッ!はっ、ああっ!」 従兄にしがみつき、その金色の髪をかき乱しながらわたしは顎を仰け反らして声をあげた。 固い感触に内壁を擦られる刺激に、わたしのペニスも痛いほど張り詰める。 たまらず自分のものに指を伸ばしたわたしは、片腕を王子の首に回しもう一方の手で自ら手淫を行いながら、揺すり上げられて喘いだ。
「たいした乱れようだ、エオメル・・・きみが誰にでもそんな姿を見せるのかと思うと、わたしの方は少々興ざめだがな」 肺腑をえぐるような王子の言葉。 わたしはかれの顔を見つめ、言葉にできない想いを瞳に込めた。 セオドレドの醒めた目がわたしの視線に一瞬の揺らぎを見せる。 −−従兄は視線をはずして顔を背けた。 そして、さらに激しくわたしの身体を揺さぶった。
どれほど冷たくあしらわれようと、王子がわたしに夢中なことはわかっている。 エオルの血によって離れがたく結びついたわたしたちだ。酷くなじられ、責め苛まれてもわたしは従兄の愛を信じていられた。
セオドレドとの濃密なセックスに耽溺したわたしは、次第にグリマの愛撫に反応しなくなっていた。 それまでは存在していた、蛇の舌との歪んだ親和性はもはや失われている。 グリマに抱かれながらわたしは退屈することが多くなった−−そして倦怠の中で、従兄に貫かれる感触を思い出していた。 わたしが以前のように悦ばないので蛇の舌は苛立ち、腹を立てた。 だが例の没薬−−初めて犯されたときに使われたもの−−を用いられても、耐性が出来たのかさして効き目はなく、黒衣の侍医はうなり声を上げてやる気のないわたしを睨むのだった。
わたしの変化に蛇の舌は何を考えただろうか。 あのカンの鋭い恐ろしい男が、わたしと王子の関係に気づかずにいるとは思えない。 また二人の男を手玉にとってそ知らぬふりをするような真似が、無骨なわたしに出来るはずもない。 だが、それなら何をどうすればいいと言うのか。わたしにはわからなかった。 多分、グリマに気づかれてももうかまわない、と思っていたからかもしれない。 わたしが恐れていたのは、セオドレドに蛇の舌とのことを知られて王子に決定的に侮蔑されること・・・それだけだったのだ。
ある夜の情事の最中に、わたしの反応のなさに不機嫌になったグリマは、乗馬用の鞭を持ち出してきた。 そして這わされて後ろから犯されているわたしの背中に、思い切り固い皮を振り下ろしたのだった。 「ひッ・・・あっ、痛ぅッ!」 何度も鞭打たれてわたしはのたうち、皮膚の裂ける痛みに悲痛な声をあげた。
そのすぐあとに従兄がエドラスに帰ってきたので、わたしは動揺した。 セオドレドに呼び出され、身体を求められる。 それを拒む口実は見つからなかった。 そして密会場所の廃屋で、従兄に傷ついた肌をさらすことになってしまったのだった。 すぐに背中の条痕に気づいた王子が「どうしたんだ、これは・・・」と驚いた声を上げた。 わたしには答えることが出来ない。 鞭の傷をじっと凝視され、指で触れられて確かめられる。 いたたまれない思いに身体が震えた。
やがてセオドレドはわたしの顎を掴んで上向かせ、「くそ−−こんなことをされて、おまえは愉しんだのか。わたしと寝るよりも良かったか?」と嫉妬にかすれた声で言った。 王子の秀麗な顔が歪んでいた。 そしてわたしを寝台に突き倒してのしかかって来た。 引き裂くように衣服を剥ぎ取られながら、わたしは目を閉じてそれ以上の従兄の怒りを招かぬように、従順に身を投げ出していた。 四肢を捻じ曲げられた無理な体勢で、セオドレドのペニスが深々とねじ込まれる。 苦痛に目の前が真っ赤に染まるほど容赦なく打ちつけられて、身体が砕けてしまいそうだった。
やっと終わったときには全身が引き攣るように痛かった。 セオドレドも呆然と宙を見つめて、荒い息を吐いている。 しばらくたってようやく呼吸を整えた王子は、まだ臥せったままのわたしの背中の鞭傷に指を這わせてきた。 「・・・遊びが過ぎるんじゃないのか」 そうたしなめるように言う。 だがその口調にはあきらめの響きが混じっているようだった。
不安を孕んだ日々が過ぎていく。 南方からの黒い瘴気は、ゴンドールを越えてこのマークにまで吹きこんできている。 アイゼンの川岸で起こった大規模な戦闘はセオドレドの第二軍団に大きな打撃を与えた。 悪鬼どもを鎮圧したものの、王子の部隊は多数の負傷者を出し、悄然とエドラスに引き上げてきた。 帰館したセオドレドは、国境付近の集落の住民たちも巻き込まれて怪我をした者がいると告げ、医療チームの派遣が必要だと説いた。
第二軍団と入れ替わりに、わたしの部隊が医師団と共に西マークに向かうことになったのだが、何故か軍議の席でグリマが「わたしも一緒に行く」と言い出した。 とりたてて反対する者はいなかったが、陛下だけは「おまえが居なくなると困るのう」と弱々しい声で異議を唱えた。 「民間人に負傷者が出たと聞いては、放っておけません。ローハンの民すべての健康がわたしの願いでございます。すぐ戻りますのでお許しを、セオデン陛下」 慇懃に申し出る蛇の舌に、陛下は「そうかすぐ戻るのか」と頷いて従軍を許可した。 そのやりとりをセオドレドは無言で見守っていたが、会議が終わって解散するときに「ふん、たまには役に立て」と侍医に向かって言い捨てた。 背を向けて部屋を出て行く王子の後姿を、蛇の舌の色の薄い瞳がじっと見つめていた。
  
−−風の強い夜だった。 今夜の逢引場所に向かって、夜道を急ぐ道すがら、セオドレドは「このままでは我が国は疲弊するばかりだ。ゴンドールに使者を送っても、何の音沙汰もないし」と暗い声で言った。 「モルドールの黒い影が、中つ国すべてを塗りつぶそうとしているようだ。だが、わたしにはどうする術もない・・・」 そう呟く王子の顔にも疲労の色が濃い。 暗い廃屋のベッドの上でわたしたちは抱き合い、時を惜しんでもつれあった。 白い冴え冴えとした美しい貌に手を添えて、わたしは「お疲れではないですか」と従兄の体を気遣った。 「そういう時こそ、その気になるんだってこと、知ってるだろう?」 王子は忍び笑い、唇を触れ合わせてきた。
「きみに会えて嬉しい」 わたしをきつく抱きしめてかれが言う。 「きみが好きだ・・・」 いつになく甘く囁かれて、痛みにも似た幸福な疼きが胸の奥に広がっていく。 明日にはまた離れ離れになってしまうわたしたちだった。 「ああセオドレド−−わたしの王子・・・」 従兄の張り詰めた皮膚にすがりつきながら、わたしはかれの熱心な愛撫に身を任せて陶酔の声をあげ続けていた。
  
国境付近に派遣されたわたしの第三軍団と医師団は、川岸沿いに点在する集落をまわりながら負傷者の治療をおこなった。 幸い、そのあいだ一度もオークの襲撃には遭わなかったので、怪我人の数が増えることはなかった。 被害報告をまとめてエドラスに伝令を送ったり、足りない医薬品を取寄せる手配をしたりしているうちに、日々が慌しく過ぎていく。 同行してきたグリマは、たいして仕事をするわけでもなく姿を見せたり見せなかったりと、何か得体の知れぬ動きをしていたが、わたしは忙しさに取り紛れて気にする余裕もなかった。
数週間後、エドラスから伝令が届いた。 セオドレドの第二軍団が編成しなおされて、再びヘルム峡谷に本陣を置いたという知らせだった。 それによって第三軍団の国境警備任務は終了となった。 負傷者の手当てもほぼ終わっている。 わたしは部下たちにエドラスに戻る準備をするように告げ、野営地を引き払う指示を出した。
明日は黄金館に向けて出立しようという日の、夕刻のことだった。 食事を終えたわたしは川岸で愛馬に水を飲ませながら、彼方に見えるオルサンクの塔の黒いシルエットを見るともなしに眺めていた。 すると、ふいに駆け寄ってきた小さな影が、わたしのマントをつかんでひっぱったのである。 何だ・・・と思って見ると、それはまだ幼い少年だった。 「どうした?わたしに何か用か?」 そう問うと、男の子は訛りの強い言葉で「母が病気だ」と言った意味のことを訴えた。
薄暮の中でよく見ると、その子供は明らかに我が国の敵である褐色人の外見的特長を備えていた。 敵国といっても、国境付近ではそれなりに二カ国間での交流があり、血が混じりあう事も多い。 この付近の集落の中では、エオルの子とは肌や髪の色合いが異なる者も珍しくなかった。 「混血だな」 その声に驚いて振り向くと、いつのまにかグリマがわたしの背後に立っていた。 「どうせ親は褐色人だ、ほうっておけ」 そう言い捨てる蛇の舌を睨んでおいて、わたしは「どこから来た?その病人は近くにいるのか」と少年に尋ねた。 すると子供はわたしの身体をぐいぐいと押して、どこかに連れて行こうとするのだった。
「まてまて・・・わたしは医者じゃない。一緒に行っても役にたたんぞ」 わたしは男の子の腕を押さえながら蛇の舌を見た。 「グリマ、この子の親を診てやれ」 だが黒衣の侍医はそっぽをむいた。 「おれは顔を洗いに来ただけだ。そんな餓鬼になぞかまうな、面倒だ」 おまえはそれでも医師か、とわたしは蛇の舌を怒鳴りつけ、子供の母親の元に向かうことをしぶしぶ承知させたのだった。
野営地からすこし離れた、森林の中に粗末な小屋が建っていた。 わたしは馬を木立に繋ぐと、「この中か?」と男の子を振り向いた。 相手がコクリと頷いたので、壊れかけた木戸を開けて中を見た。 小さな窓が一つだけの小屋には人気がなかった。 わたしが中に足を踏み入れると、グリマも後について入ってきた。 「誰もいないようだが・・・」あたりを見回しながらそう呟いたとき、後頭部に強い衝撃を感じてわたしは昏倒した。
頭がガンガン痛んで眩暈がする。 何者かに身体を探られ、長剣を取り上げられるのがわかった。 気を失っていたのはほんの数刻のあいだだった。うめきながら意識を取り戻したわたしは、数人の男たちに取り囲まれているのに気づいた。 −−オークか・・・?! 思わず息がつまって全身に緊張が走る。 が、暗闇を透かして見た限りでは男たちは人間のようだった。 しかし状況から見て、敵に違いない。
わたしが横たわったまま様子を伺っていると、ひとりの男が何か言い、仲間の男がそれに答えを返した。 その聞きなれぬ言葉を耳にして(褐色人だ・・・!)と身体を硬くした。 友邦ゴンドールとは反対側の国境を接する隣国に住まいする、つねに我がマークに対して暗い憎しみを燃やしている敵国の人々である。 わたしはあの子供が罠だったことを悟った。
(どうする−−剣は取り上げられてしまった。隙をついて逃げられるか?相手は7、8人はいるようだが・・・しかし、近くにはわたしのエオレドの部隊がいる。大声を出して騒げば、助けが得られるかもしれない) 素早く考えをめぐらせていたわたしは、そういえばグリマはどうしただろうと思った。 この異変を部下たちに知らせてくれただろうか。 だが、すぐにわたしは思い出した。 何者かに殴られたとき、わたしの背後に立っていたのはその蛇の舌だけだったということを。
グリマがわたしを敵に売ったのか−−その思いに慄然としていると、男たちがわたしの身体を抱えあげようとして腕を伸ばしてきた。 「離せ!」 相手の隙を狙うことも忘れ、思わず怒鳴りながら暴れると、数人がかりで酷く殴られた。 気が遠くなってぐったりしたわたしの口に布が詰め込まれる。 声を封じられた上、さらに腹に重い一撃を食らう。 ふたたび失神したわたしは、闇夜にまぎれて森の奥へと運ばれた。
かたい土の上に投げ出されたショックで気がつくと、あたりは既に日が暮れて真っ暗だった。 目は身体の痛みに霞んでいたが、月明かりに木立のシルエットが浮かんで見えた。 「う・・・」 思わず身体を起こそうとすると、複数の手が伸びてきて地べたに押し付けられた。 やはり、先程と同じ男たちがわたしを囲んで見下ろしている。 −−ここで殺されるのか・・・? わたしは様子を探りながら状況を把握しようとした。 (武器になるものは何もない・・・だが、ロヒアリムを簡単に殺せると思うな。必ず何人かは道連れにしてやる) 唇を噛み締めて悲壮な決意を固めていると、褐色人の男たちの手がわたしの身体を愛撫するようになでまわしはじめた。
「・・・?!」 殴打されるよりも嫌悪を催す敵の行為に、わたしはもがいた。 しかし手足をしっかり押さえつけられた上で、男たちはわたしのマントと胴衣、さらに衣服の上下をむしり取った。 わたしは口の中の布を吐き出して「何をする!やめろ!」と怒鳴った。 その布はすぐにまた口の中に押し込まれた。そして、その上から猿轡を噛まされる。 「ん・・・んぅ・・・!」 はだけられた肌の上を敵の指がいやらしく這い回った。
わたしは敵の意図を悟った。全身が悪寒に怖気立つ。 下着も脱がされると、わたしの性器は、確かめるように手を伸ばしてきた男たちによって乱暴に弄られた。 そしてかれらは身悶えるわたしの様子を見て嘲笑した。 足を抱えあげられて身体を折り曲げられ、押し開かれるとわたしの尻の谷間があらわになった。 すぐに秘所に指が侵入してきて、ぐりぐりと掻き回される。 男たちは卑猥な含み笑いをしながら、代わる代わるわたしの肛門を指で犯した。 ついには一度に三本も入れられて残酷になぶられ、あまりの恥辱に気が遠くなった。
わたしのうめきは布に吸い取られて、闇夜の中に、褐色人たちの荒い息づかいだけが聞こえていた。 やがて広げられて曲げられた両足のあいだに、男の一人がのしかかって来た。 がっちりと体勢を固定されているわたしには、逃れるすべがない。 固く勃ちあがったものが、押し当てられる感触に歯を食いしばって耐えた。 筋肉をぎゅっと締めて拒んだものの、その甲斐もなくずぶずぶと突き通されて奥まで埋め込まれる。 「ぐ・・・くっ、うぅ・・・ッ」 わたしは屈辱に打ち震えながら、見知らぬ敵国人の熱く脈打つものを受け入れた。 男が大きく腰を使い始めると、まわりの者たちが歓声を上げて囃し立てた。
「んっ、ぐうッ、んうっ」 肉体の痛みよりも、敵に屈服させられ蹂躙される苦痛がわたしを苛んだ。 (いやだ−−殿下!セオドレド・・・!) 愛する者の名前を胸の奥で唱えると、涙が流れた。 男の動きがひときわ荒々しいものになり、やがて奥深くまで突き入っていたものがびくびくと大きく揺れて、わたしの中に熱い液体が注ぎ込まれた。 陵辱者が性器を引き抜いて離れると、すぐに別の男が取って代わる。 肉をぐいっとこじ開けられて、再びペニスが侵入してきた。
(あッ・・・あぁッ) そして同じように激しい突きあげが始まる。 だが前の男の精液が潤滑剤になったのか、今度の男の性器はわたしの内壁をスムーズに往復できるようだった。 敏感な内壁をこすられ続けているうちにわたしのものは勃起し、先端から汁を滴らせた。 それに気づいた男たちが、次々に手を伸ばしてきた。 勃ち上がったペニスを乱暴にねじり上げられ、睾丸を強く握られる。 「ぐッ、うぁ!」 身をよじってくぐもった悲鳴をあげると、褐色人たちがげらげら笑う。
つぎに男たちは、わたしを犯している仲間の腰の動きにあわせて、わたしのものをいたぶり始めた。 複数の指で強弱をつけて捏ねあげられ、揉みしだかれるとたまらず身体がうねってしまう。 誰かの指の腹で一番感じやすい先端をぐりぐり刺激されて、とうとうわたしは耐えられず、男たちの手に放出してしまった。 (はぁ・・・ッ!) 往かされた快感に身体がのけぞった瞬間、わたしの秘所は受け入れていた物をきつく締め上げたらしい。 わたしの中でうごめいていた男が「うぅッ!」と情欲の呻きを発して白濁をほとばしらせ、達した。そしてすぐさま待ちかねていた次の者が、男を押しのけて覆いかぶさってきた。
陵辱はいつ果てるともなく続いた。 全員に犯されて一巡りした頃には、もうわたしは抵抗する気力を失っていた。 口の中の布は唾液を吸ってどろどろになり、息が詰まりそうになった。 苦しがっているわたしに気づいた男が猿轡を取り外してくれたが、すぐにその口の中には相手のペニスが押し込まれたのだった。 肛門には絶え間なく敵国人の性器が挿入されていた。 そして何度も勃起と射精を強制されたわたしの性器は、痛みに痙攣している。
四つんばいに這わされ、犬のように後ろから犯されながら、髪を掴まれて顔を上向かせられたわたしは、口で別の男のものを咥えて喘いでいた。 わたしの中で何度目かの発射が行われ、背後の男が交代する。 新たに尻を抱えられ、一気に侵入してきたものは、今までの陵辱者たちのなかでも一際巨大だった。 「ああっ−−うぁッ」 先刻犯されたときにも、受けとめかねて思わず咽喉がかれるほど叫び声を出してしまった、一番若い褐色人のものに違いない。 何度も乱暴に使われて傷ついた部分を、雄大なペニスが容赦なく出入りする。 途中まで引き抜いては更にねじこむ動きが繰り返されて、わたしは悲鳴を上げた。 「あっああっ、やめてくれ・・・はぁッ、ひいッ!」 思わず咥えさせられていたペニスを外して叫んでしまうと、眼前の男がわたしの頬を殴った。 そして再び口での奉仕を強要される。
後ろの男がわたしの後腔が裂けるのもかまわずに激烈に打ち込みはじめた。 「うぁ・・・あぐぅ・・・ッ!」 あまりの痛みに身体が硬直する。 わたしは耐えられなくなって目の前の男を腕で突き飛ばした。 そして這いずって逃れようとした。 すぐに四方から他の男の手が伸びてきて、手足を押さえられる。 頭を引き起こされて更に殴られた。 「離せッ・・・いやだぁッ!」 どんなに声を振り絞ってもどうにもならない。 褐色人の巨大な武器がわたしを刺し貫き、切り裂いていく。 わたしには褐色人の言葉は片言しか分からない。だが、このときは、かれらが「藁頭がすごく痛がってる」と言ってあざ笑っているのが理解できた。
(助けて−−助けてください、セオドレド−−あぁッ・・・身体が引き裂かれてしまいそうです・・・!グリマ・・・グリマでもいい、わたしを今すぐ救い出してくれ・・・!) 何故、王子と共にわたしはあの男の名を呼んでしまったのだろう。蛇の舌がわたしを救いにくるはずがないと知っていたはずなのに・・・。 内臓の最奥までも達しようかという淫らな責め苦は、わたしをただの苦痛を感じるだけの肉の塊に変えた。 わたしは今まではかろうじて保持していた理性を完全に失って、褐色人の若い男に突き上げられながら泣き喚いていた。 「あッ、ああッ・・・もうイヤだあっ!んぁ・・・ッ、殺してくれ・・・!」 −−ローハンの世継ぎの高貴な唇が触れたわたしの肌を、さんざん苛み汚した男たちが、下卑た笑い声を上げながらむせび泣くわたしの姿を楽しんでいた。
結合を無理強いされた部分から、鮮血が滴り落ちる。だがもう、それもどうでもよかった。 「畜生っ!殺せぇーーーーーーーーーーッ!」 わたしは髪を振り乱しながら絶叫し、そうだ−−舌を噛み切ろう・・・と思った。 だが、舌を歯に挟んで噛み合わせようとした時、脳裏に思い浮かんだのは、たしなめるようにこちらを見つめる従兄の秀麗な面影だった。 (ああ−−殿下・・・殿下!どれほど恥辱にまみれようと、今一度あなたに会うまでは、死にたくない・・・!こんなところで、自ら命を絶つわけには行かぬ・・・!)
律動が凄まじく高まり、男が獣のような声を上げてわたしの中で果てた。 わたしは激痛に息をすることも出来ず、地面に顔をつけてがくがく震えていた。 だが、若い褐色人の大きいものが引き抜かれた後も、血に塗れた部分には、また別の男によって猛々しい欲望を刻みつけられるのだった。 (・・・セオドレド・・・!) ただ従兄の名前だけに縋りながら、わたしは敵国の男たちの蹂躙に身を任せ、長い夜を耐えていた。
気がついたときには、日が高く上っていた。 わたしは、陵辱現場の森の中で目を覚ました。他に人の気配はなく、足元に衣服が散らばっていた。 −−殺されなかったのか・・・? 奇跡のようだとわたしは呆然とし、苦痛をこらえながら身体を起こした。 立とうとすると、ナイフで刺されたような鋭い痛みが脊髄を駆け上がり、下半身に灼熱が走り抜けた。 「うッ−−くそッ・・・」 わたしは手近の木にすがりながら立ち上がって、服を拾った。
太陽の方向を頼りに、部下たちの待つ野営地に向かって痛む身体を庇いながら歩いて行き、途中、川で水浴びをした。 夥しく流れた血と、男たちの精液がわたしの下肢を汚していた。 それに、身体のあちこちに陵辱の痕跡が残っている。 冷たい水で洗い清められたわたしは、長いマントをしっかり身体に巻きつけて帰っていった。
午後になってようやく野営地にたどり着いた。
安堵のあまり、泣き出したくなったが、部下の手前わたしは平静を装った。
昨夜わたしが急に姿を消したので、どんな騒ぎになっているかと思ったが、部隊はごく平穏に撤収の準備をしている最中だった。 そして、よく見ると部下の数が半数ほどに減っている。
「−−おい、やけに数が少ないな。他の者はどうした?」 部下の一人を捕まえて尋ねると、「今朝ほど、半数の者がグリマ殿と一緒にエドラスに向かって出発しました。残りの者は、夕刻までに発つ予定でエオメルさまの帰りを待っておりました」との答えだった。 「・・・グリマがわたしの帰りを待てと?」 「はい。昨夜、エオメルさまは南側集落の警備に出かけられて、そちらで休まれるとのことなので、帰りは昼ごろになるだろうとグリマ殿が・・・」 わかった、もういいとわたしは部下から離れ、自分のテントに入って強い酒を一口飲んだ。 昨夜、あの子供と一緒にいたときに木に繋いでおいた愛馬は、ちゃんと戻っていた。
やはり、グリマの差し金だったのか−−とわたしは煮えたぎるような怒りを覚えながら、新しい胴着を取り出して略式の軍装に着替えた。 −−わたしとセオドレドの関係に気づいて、制裁を加えたということか・・・? それにしても褐色人と通じているとは、あからさまな売国行為ではないか。 わたしは身体に刻まれた恥辱の記憶を振り払おうと、また酒を飲んだ。 そして、黄金館に帰りついたら、その場で蛇の舌を殺すことを決心した。
日が傾き始めた頃、わたしたちは野営地を引き払って出立した。 黄昏の時分には、ヘルム峡谷に入れるだろう。 峡谷で一夜を過ごして、翌日エドラスに向かえばいい。 そして−−峡谷に行けば、セオドレドに会えるのだ。 わたしの従兄、わたしが愛するローハンの王子。
褐色人から受けた陵辱の事実を、わたしは包み隠さず殿下に話そうと思っていた。そして、グリマとのこともすべて告白するつもりだった。 今まで隠し通していたわたしの不実と裏切りを、もう何もかも吐き出したい。 その上で、ひざまずいて王子の許しを請うのだ。 だがあるいは・・・かれの怒りはわたしへの愛情を凌駕してしまうかもしれない。 そのときこそ、わたしは自らの命を王子に捧げることになるだろう。 従兄の剣に討たれて死ねるなら、わたしは満足だ。
−−でも、わたしには分かっていた。かれがわたしを許してくれるに違いないことを・・・。 愛馬の背に揺られながら、今わたしが欲しているのは、王子のしなやかな腕に抱かれることだけだった。 セオドレドと抱き合い、口づけを交わして、肌を触れ合わせたい。 そしてわたしの身体をかれの愛撫で清めて欲しい。 日が沈む頃、薄暮の向こうに峡谷の岩肌が見えてきた。
もうすぐ従兄に会える・・・わたしは苦しいほどの胸の高まりを覚えながら、城門に向かって崖を駆け下りて行った。
  
メドゥセルドの王宮に帰り着くと、玉座にはくたばりぞこないが座っていた。 「おおグリマか、よう帰ってきた」 嬉しそうなしわ枯れ声を上げるセオデンに、おれは片膝を突いて一礼した。 さっさと部屋に引っ込んで寝てしまえ、耄碌じじいが。 その王座はいずれこのおれのものになるんだから、何時までもおまえに座っていられると、不愉快だ。 「陛下、もう日が暮れました。部屋にお戻りになって休んでください。よく眠れる薬湯をさしあげますから」 おれがそう言うと、セオデンは「そうじゃな、おまえの薬はよく効くからのう」と言って立ち上がり、近習に支えられながらよろよろと歩き出した。 そうそう、とっととベッドに入れ。そして眠ったら二度と目を覚まさなくてもいいからな。 おれはセオデンの後について歩きながら、「エオメルはもうヘルム峡谷に入っただろうか」と考えていた。
ヘルム峡谷に行っても、そこにおまえの求める王子はいない。
おれはとっくにおまえの裏切りに気づいていた。 おまえがセオドレドと交わす熱い視線を嫌と言うほど見せつけられて、分からぬ筈がないだろう。 だが、おれはおまえにそんな自由を与えた覚えはない。 勝手にセオドレドと乳繰り合うなどもってのほかだ。 エオメル−−おまえは、その金髪の一筋までこのおれの物だ。 おれの所有物であるはずのおまえが、おれを蔑むクソ生意気な王子に抱かれて、忍び笑っているとはどういうつもりだ。 廃屋の中でセオドレドに抱かれて、おれが見たことのないような顔で喘いでいるおまえを見たときには、おれは怒りに胸が張り裂けるような思いがした。
太陽が地平線の向こうに沈んでいく。 そして明日になれば、運命の朝が来る。 セオドレドは、おまえが森のなかで眠りこけているあいだに、アイゼンの浅瀬に向けて出撃して行った。 今頃は激しい戦闘が行われている最中のはずだ。 そしてそこには、サルマンが組織したウルク=ハイの決死隊が待ち受けている。 奴らに与えられた使命はただひとつ−−王子を討ち果たすことだけだ。 セオドレドは死ぬだろう。それは逃れようのない定めだ。
夜が明けた頃、おまえは帰らぬ王子を捜してアイゼンの浅瀬に向かうだろう。 そしてそこで見出すのは、息絶えたセオドレドの惨めな姿だ。 おまえはその目で王子の死を見届け、この蛇の舌を裏切った代価を思い知るがいい。 そして虚ろな死骸をメドゥセルドまで運んで来い。 セオドレドの死を国民全部に知らしめるために。
そのときまで−−おれはこの黄金館で待っている。
20041205up
終わりです!長らくお付き合いしてくださって、ありがとうございました。ぺこり。
これを書いてて、セオドレドに冷たい蔑みの視線で見下され、「○○を○○しろ」(お好きな言葉を当てはめてください)と命じられてプルプル震える兄貴・・・がわたしの萌えのコア部分なんだということに気づきましたvvvって酷。
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