最終話
捏造にもほどがある上に、ロヒアリム二人とも見たことのない人になってます。
「さて、と。ボロミアのことはファラミアに任せておけばいいとして、わたしはきみの具合を知りたいね」
セオドレドはエオメルのそばを離れ、一人掛けの椅子に腰を下ろして従弟の顔をじっと見た。
「わたしの・・・?」
王子の冷ややかな目つきに不安を覚えながら、エオメルは言った。
「具合、といわれましても。足はまだ少し痛みますが、特に何も・・・」
「あの時きみは、何故すっぱだかであんなところに転がってたんだ」
いきなりそう訊かれて、エオメルは頬に血が上るのを覚えた。
かれが黙っていると、王子がさらに問い詰める。
「きみはオークに暴行されなかったんだな?やつらの汚い爪に触れられたら、かなりの傷が出来るはずだが、そんな様子はなかったしな。じゃ、どうしてあんな格好で縛られていたんだ?服だけ裂いて、何もせず放っておくなんて不自然じゃないか」
「そ、それは・・・」
エオメルは、忌まわしい出来事を鮮明に思い出しながら、困惑して口ごもった。
どこのだれとも知れぬ男に犯されたとは、とても従兄に言えない。
セオドレドはエオメルの目を射抜くように見て言った。
「オークに襲われる前、きみはボロミアと寝てたんだろう」
「−−はあっ!?」
王子の言葉にエオメルは唖然として口をあけた。
「兄上ッ、起きて下さい!」
激しくゆすぶられて、深い眠りについていたボロミアは不明瞭な寝言をつぶやきながら目を覚ました。
「んん・・・なんだ・・・もう朝か・・・?」
しばたきながら瞳を開けると、部屋の中はまだ暗い。
そして燭台のゆらめく炎に金髪を照らされた弟がかれを見下ろしていた。
「どうした・・・ファラミア」
半分寝ぼけたままボロミアが言うと、ファラミアはかれの毛布をバサアッとひきはがして床に投げ捨てた。
「なっ何をする」
白の大将が驚いて身体を起こすと、弟君は兄にのしかかって両腕を捉え、寝台に押し付けた。
「・・・ファラミア、なんだいきなり・・・驚かせるな」
弟が性急に愛の行為を求めてきたのだと思ったボロミアが、照れた笑いを浮かべる。
「兄上、オークに陵辱されたそうですね」
突然弟にそう言われ、白の大将は驚きの表情を浮かべた。
「いや、それは・・・ファラミア、誰がそんな話を?」
「セオドレド殿下が。兄上、苦しい思いをなされたのですね。これからはわたしがあなたを全力でお守りしますから」
ファラミアはそう囁きながら兄に覆いかぶさり、その白い頬に口づけた。
「ファラミアわたしはもう」
平気だ・・・と言いかけたボロミアをさえぎって、弟君はきっぱり言った。
「これ以上ローハンに留まるのはお辛いばかりだと思います。明日、ゴンドールに向けて発ちましょう」
「明日?何を言ってるのだ、おまえは今日着いたばかりではないか。そんなに急ぐ必要がどこにある」
「いいえ、兄上。わたしはもう決めました。夜が明けたら出立するのです。道中は兄上の体調に合わせて移動しますから、心配いりません。・・・帰りましょう。わたしたちの白い塔の都に」
弟の言葉に、ボロミアがなおも反論しようとする。
「それでは慌ただしすぎる」
ファラミアは兄をじっと見つめて問いかけた。
「忌まわしい記憶のあるこの地に、まだ留まりたいと仰るのですか。なぜです」
「それは」
兄が言いかけるのを遮って、弟君は、地の底から響いてくるような低い声で呟いた。
「・・・兄上。それとも、なんですか・・・嫌なことをすべて忘れさせてくれるほど、楽しい思い出をくれる相手がこの国にいるとでも言うのですか」
一方、ローハンの世継ぎの寝室では、口をあいたままの従弟の前で王子が自らの推理を開陳していた。
「だからきみはあんな格好で転がっていたんだ。縛られた上に、袋なんかかぶせられて、ボロミアはそういうのが好きなのか?意外と変態なんだな。それともきみの趣味なのか。とにかくそんなことをしてたら、オークと戦うどころじゃないだろうなあ。捕まって犯されるのもさもありなんというところだ。きみが無事だったのは、ボロミアがきみを庇って自らケダモノどもに身体を差し出したからか?崇高な犠牲的精神というわけか?」
「ちっ、違います!なにを馬鹿なことを」
ようやく我に返ったエオメルが反論しようとしたが、セオドレドはまるで聞く耳を持たず、さらに言い募った。
「きみはあんなにかれに憧れていたのだから、思いが叶って良かったな。二人きりになるなり、すぐそういうことになるとはわたしの想像の埒外だが。どちらから誘ったんだ、きみか?そうなんだろう?なんといっても惚れてるのはきみのほうだしね−−しかし、ボロミアは止めたほうがいいと思うが。そんな簡単に寝てくれる男に惚れたって、相手は蝶のように気まぐれだからね、きみは嫉妬に狂って苦しむのがオチだ。しかし思いが叶ったとはいえ、きみたちの蜜月はほんの短いものになってしまったな−−かれはこのエドラスでほとんど寝たきりで過ごした訳だし、ミナス・ティリスから本当の恋人が駆けつけて来たからには、きみはお役御免だからね」
「ほ・・・本当の恋人・・・?」
呆れて聞いていたエオメルだが、王子の言葉に瞳を見開いて尋ねた。
「ファラミアだよ。まったく、きみとかれはまるきり同じ目つきでボロミア見つめてるんだな」
「あのお二人が恋人同士だというのですか・・・しかし、実の兄弟であられるのに・・・」
眉を寄せて言う従弟に、王子が意地の悪い視線をあてる。
「ああ、ゴンドールには純朴なきみには理解できないようなことがいろいろあるんだ。かれらの父デネソールも混ざってくるしね−−あの一家は父親も弟も、ボロミアが完璧だという妄想にとり憑かれてるんだよな。ま、執政家のことはどうでもいいよ」
セオドレドはそう言って立ち上がった。
ローハンの世継ぎが従弟を眺めながら言う。
「きみは遊び人の男に手玉に取られた、可哀想な被害者ということなのかな・・・いやどう考えても、そんな可愛らしい代物じゃないな」
エオメルは可愛らしくなくて悪かったですね、と呟いた。
騎士軍団長は、セオドレドが勝手に脳内妄想を膨らませたのだとしか思えなかったので、すっかりバカバカしい気分になっていた。
とは言え、ボロミアと秘密の時間を過ごしたのも確かである。
そのことを従兄に話すつもりはなかった。
「殿下の仰ることは勝手な妄想です。事実と違います」
とだけかれは言った。
「妄想かどうか、確かめさせろ」
王子はそう言い、従弟に押しかかって衣服を引き剥がしにかかった。
「エオメル、全部脱いできみの身体をよく見せろ!」
「なっ何を・・・」
かれは掴み掛かってくる従兄の腕を押さえながら言った。
「わたしの身体を見たからってどうなるんです!殿下が勝手に思い込んでおられるボロミア殿とのことにしたって、八日も前のことですよ!いまさら何です」
指摘されてセオドレドがうっと詰まる。
だがすぐに「ボロミアの前では裸になったくせに、わたしには逆らうのか」と言いながら相手の腕をはらいのけた。
そして力任せに上着の布をビリビリ引き裂く。
エオメルの日に焼けた肌があらわになった。
「やめなさい殿下!」
セオドレドは従弟の上半身を寝台に押さえつけ、次に下衣を脱がせにかかった。
相手が足をバタバタさせて抵抗するので、動きを封じようと足を抱える。
「いッ、痛い」
王子につかまれたのはまだ完治してない左足だった。
激痛が走り、思わず身をすくめた隙に、下着ごと一気に引きぬかれて下半身をむき出しにされた。
「もうっ、いいかげんにしてくださいッ!」
そう叫びながらも、実際は仲の良い従兄弟同士でじゃれ合っているだけのような感覚がエオメルにはあった。
いかに言いがかりをつけられ、無体なことをされようと、かれは心から王子を敬愛している。
だからそう頑強に抵抗もせず、簡単に服を脱がされてしまったのである。
このまま、従兄の気の済むようにさせておけばいいのだろうか、仕方ないな・・・とかれは心の中で思っていた。
だがセオドレドが膝を掴んで拡げさせようとするのを、エオメルはさすがに身をよじって阻止しようとした。
「なんだ、今更わたしに見られたってどうってことないだろう!」
そう声を荒げる王子に「恥ずかしいですよっ」とかれは言い返した。
「くそう、ボロミアには平気で見せたくせに」
「見せてませんてば!」
言い争ううちに、王子はエオメルの足の間に身体を割り込ませた。
力任せに左右に拡げる。
「ああっ・・・」
エオメルは羞恥にあえいだ。
浴場や更衣室でなら、男同士で何を見られても気にならない。
だが、ベッドの上で全てを晒されるとなると、たまらなく恥ずかしい。
ああもう、好きなだけ見るがいい、とかれは全身真っ赤になりながらセオドレドの前に身体を開いた。
しかしエオメルは気づいていなかった。
自分を犯した見知らぬ男が、かれの身体に陵辱の痕跡を残していたことを。
従弟の白い内股の奥に、消えかけてはいたが、はっきりと刻まれた歯形を見つけてセオドレドは目を据わらせた。
その内出血の跡は、明らかに人間がつけたものだった。オークならば、もっと鋭い牙の跡が残る。
(まさか本当に、こんな証拠が見つかるとは)
情事の痕跡に、王子はひどいショックを受けた。
子どものときからその成長を見守り、内心、自分の所有物のように思っていた従弟である。
なのに他の男とセックスしたのか、と思うとセオドレドは絞り上げられるような胸の痛みを覚えた。
わたしに黙って、勝手にそんなことを−−もう、どうしてくれよう・・・。
王子はぎらぎらする目で従弟をねめつけた。
「あ〜ッ、ファラミアッ、ファラミア許してくれっ、ひぃっ、ああーーーっ」
一方、ゴンドーリアンたちの寝室では、エオメルとの情事を全て白状させられた白の総大将が、のしかかった弟に猛烈に突上げられながら悲鳴をあげていた。
「まったく、貴方って人はッ!ローハンに来るなりあんな若造に手を出して!セオドレドさまが教えてくれなかったら知らぬ顔で口をぬぐっていたのですね!なんて人なんだ!そんなに男が欲しいんですか!それならわたしが死ぬまで犯して差し上げますッ!」
ファラミアは相手が病み上がりなことも無視して、激しく腰をえぐりこんだ。
「はあッ、あァーッ、ああぁ〜〜〜ッッ」
甲高い声を上げながら、身体をのたうたせて揺さぶられるボロミアだったが、しかしこの二人にとってはいつものことなのである。
浮気も嫉妬も、かれらにとって刺激的な香辛料のようなものだった。
というわけで、執政家の兄弟は異国での夜をそれなりに愉しんでいるのだった。
しかしロヒアリムたちの部屋はより深刻な事態になっていた。
セオドレドはエオメルの長い金髪をわしづかみにして従弟の頭を引き起こすと、ビシッ!と強烈な平手打ちを食らわせた。
「何をするんですッ」
エオメルは頬を押さえて叫んだ。
王子が更に殴ろうと振り上げた腕を逆に掴んで、かれは怒りの声を上げた。
「いくら殿下のなさることとはいえ、殴られる覚えはない!」
「黙れ、この嘘つきが。おまえの虚言に罰を与えてるんだ」
「嘘つき、とはなんですか!わたしは嘘などついておりません」
そう言う従弟に向かって、王子は低い声で「歯形だよ」と言った。
「歯形・・・?」
不審な表情で問い返したエオメルは、腿の奥を指差され「ここに噛まれた跡がついている」と言われて、アッと顔色を変えた。
陵辱者が強く歯を立てたときの痛みを、かれはまだ覚えていた。
「まさか本当にボロミアと寝てたとはな。おまえはさんざんわたしの妄想だと否定していたが、こんなところまで噛ませておきながら、よくとぼけていられたものだ」
「ち、違います、それは・・・」
エオメルは動揺して口ごもった。
王子は従弟を憎々しげににらみ、「なんという裏切りだ。おまえは最低だな」と罵った
それを聞いてさすがにエオメルも、カッと頭に血が上る。
どこかの男に歯形をつけられたことは、自分の望んだことではなく、そもそも自分は被害者の立場なのに、と思ったのと、もう一つ、いくら主君の世継ぎで従兄にあたるからといって性生活にまで干渉されるいわれはない、とかれは腹を立てたのである。
「わたしが他の男と寝たからといって、だからどうだというんです!誰かと愛し合うのに、いちいち殿下の許可が必要なのですか。わたしは自分の情事をあなたに報告なんかしませんよ」
その憎らしい言い方にセオドレドはますます激昂した。
「なんだと・・・よく言ってくれたな。そうかおまえはボロミアだけでなく、以前からいろんな男と寝てるんだな?今までにどのくらいの男を咥え込んだんだ、お前の身体は」
王子の言葉を、エオメルは「下劣だ」と吐き捨てた。
セオドレドはエオメルの肩をぐっと握った。
「なら、いますぐわたしがおまえの使い心地を試してやろうか。好きなんだろ?犯られるのが。そうだ、縛って欲しいのか?」
エオメルは視線に軽蔑を込めて相手を見た。
そして「絶対に嫌です」と厳しい口調で言った。
「あなたに犯されるくらいなら、舌をかんで死にます」
ほんの少し前の、王子にキスされていた時なら、そのまま求められたら許していただろうに・・・との思いもあり、エオメルの内心は悔しいような情けないような訳の解らない感情に翻弄されていた。
従弟に激しく拒否されて、王子は顔を歪ませた。
「ああそうか、わたしだっておまえと寝てやるほど相手に困っているわけじゃない」
と怒りの声を上げる。
二人はそのまましばらく睨み合ったが、ふいにセオドレドが立ち上がって戸口に向かう。
そして扉を開きかけたところで従弟を振り向いて言った。
「すぐに戻る。そこにいろ、逃げるなよ!」
「逃げるもんか!」
エオメルは王子に叫び返した。
ほどなくして戻ってきた世継ぎの王子の手には、見事な拵えの大剣が握られていた。
セオドレドが持ち出してきたのはセオデン王所有の名刀、ヘルグリムである。
王子が従弟に見せつけるように剣を鞘から抜いて、頭上に差し上げた。
刃が燭台の炎に照らされて鈍く光る。
さすがにエオメルはそれを見て凍りついた。
まさか、セオドレドに剣を突きつけられようとは思ってもみなかった事態だ。
自分はこのまま手討ちにされるのだろうか−−このような、ささいな下らぬ誤解が原因で・・・とかれは放心して従兄と剣を見比べていた。
「エオメル、わたしの寝台から降りて床に跪け!」
高飛車に命令され、眉間に深いしわを刻んだエオメルは半裸の姿のまま、言うとおりに床に膝をついた。
王子が従弟の男らしい顔に刃をつきつける。
「古の名刀ヘルグリムだ−−切れ味は最高だぞ」
従兄の貌に邪な笑みが浮かんだ。
「この剣をおまえの身体で試してやる」
その言葉を聞いたエオメルは、あまりの無念さに泣けてきた。
「何を泣いてるんだ」
大きな瞳を涙でいっぱいにした従弟を、王子は鼻で笑った。
「マークの軍団長ともあろうものが、剣に怯えて泣くとはな」
セオドレドの嘲りに、エオメルはキッ!と相手をにらんだ。
「わたしは怯えてなどおりません!わたしにとっては死も恐れるに足らぬもの。ただ、わたしが消えたら最早この国には世継ぎの君の愚かさをたしなめる者がいなくなる。それを嘆くがゆえの、涙です」
王子は見下ろしてにらんだ。
「ふん、生意気な口をきく・・・臣下の身分で僭越な。わたしが愚かだと?おまえなどに、そんなことを言われる覚えはない。実に不愉快だ−−よし、そこになおれ」
セオドレドはエオメルに自分に背を向けて座るよう指示した。
唇をぎりりと噛み締め、目を閉じたエオメルの背後で、王子が大剣を構えた。
だが、セオドレドはそのままヘルグリムを振り下ろすことはせず、素早く鞘に戻して刃を隠してしまった。
そして剣を逆に抱えると、従弟の背中をドン!と蹴飛ばして、その身体を前のめりに倒したのである。
反動で、引き締まった尻が突き出された格好になる。
「!?」
その尻の肉を素早くつかんで開かせ、その中心部に向かって、王子はヘルグリムの太い柄をぶち込んだ。
「XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX〜〜!!!」
声にならぬ絶叫をあげ、エオメルの身体が跳ね上がる。
「なななななにをををををーーーーーッ、なにをするんですかあーーーーーッ!」
セオドレドは片手で従弟の胴を抱こみつつ、もう片方で剣の持ち手部分をぐいぐい突っ込んだ。
「だから、このヘルグリムをおまえの身体で試してるんじゃないか」
暴れる身体を押さえながらせせら笑う。
「なんだ、本当に斬られるとでも思っていたのか?わたしはそんな芸のないことはせん。はじめからこういう楽しいことをするつもりでいたぞ」
「やめてください!やめてえーッ」
叫ぶ従弟に、さらにいやらしい口調で囁くセオドレドである。
「だっておまえは、わたしにやられるのが嫌だと言ったじゃないか。では、このマークの国宝、ヘルグリムならどうなんだ。王の剣を身の内に感じるのはどのような気分だ?光栄で目も眩みそうか?そこらの男よりずっといいだろう」
そして柄をぐりぐり回して撹拌した。
「ぃやああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜ッ」
「うるさいなあ、エドラス中が起きちまうだろ!」
そう言って根元までずぶっと突き入れる。
一瞬エオメルの身体が硬直し、次に今まで以上に激しく暴れ始めた。
セオドレドは剣が抜け落ちないよう苦労しながら、従弟を叱責した。
「暴れるんじゃない!そんなに動いたら怪我するぞ。腸壁が破れてもいいのか?死ぬぞ!悲惨だぞ〜その死に方は」
とくに「死ぬぞ」の部分を強調して言ったせいか、エオメルは大人しくなり、顔を床にべったりつけて呻いた。
「い・・・やだ・・・抜いてください・・・痛い・・・」
王子は聞く耳持たず、柄の抜き差しを繰り返し続けた。
途中まで引き抜き、もう一度ぐい、とめり込ませる。
そのたびにエオメルが「ひぁっ」と声を上げ手足を突っ張った。
いかに親しい間柄といっても、こんな間近で従弟の秘部を観察するのははじめてである。
王子は薄紫の部分が無理にこじ開けられ、硬い金属を受け入れさせられているさまを凝視した。
締まった肉に柄が出入りする淫らな光景に、セオドレド自身の劣情も高まっていく。
「んぁあ・・・いやだぁ・・・」
従弟が涙声で哀願している。
王子はすぐにも剣を引き抜き、自分のものを突っ込んで思うがままに犯してやりたい衝動に駆られた。
でも、先ほどエオメルに拒絶されて腹を立てていたので、わざわざ入れてやるのも業腹だ、と耐えた。
騎士軍団長の普段は目つきの鋭い精悍な顔は、涙に濡れてぐちゃぐちゃになり、ついには子どものようにしゃくりあげはじめた。
「あーあ、そんなに泣くんじゃないよ、バカだな」
セオドレドが行為を止めもせずに言うと、エオメルは「バカはあんただぁ」と甲高く喚いた。
「抜けったらぁ抜けえ〜〜〜〜〜ッ、バカ王子ぃ〜〜〜〜〜ッ」
数え切れないほど柄を突き入れるうちに、傷をつけてしまったらしい。
従弟の後腔が出血しはじめたのに王子は気づいた。
さすがにまずいと思ってようやく抜いたが、エオメルはただ身体を震わせて泣いているばかりである。
セオドレドは犬のように這いつくばったままの従弟の腕を掴んで引っ張りあげると、ベッドに放り投げた。
エオメルが仰向けにぐったりと横たわる。
相変わらず泣き続けている顔を撫でてやろうとすると、激しく振りはらわれたので王子は苦笑した。
そして従弟の性器に手を延ばした。
異物に犯された刺激からか、それは半分頭をもたげていた。
こすり始めると、ペニスはすぐ固さを増した。
「あ・・・アァッ・・・」
従弟のあげる声が明らかに快感を伝えるものだったので、セオドレドはその先端に口を寄せて舐めた。
「ヒあぁっ、やだあッ・・・そんなことするなぁッ〜・・・」
そう言ってエオメルは首を振ったが、別に抵抗するでもなく、大股開きで寝転がったままである。
「嫌だな、いつのまにかこんなにデカくなっちゃって・・・」
王子は従弟のものをしげしげと見て呟き、口に咥えた。
「んぁっ」
舌を絡めて丁寧に舐めあげてやると、ペニスが露を滴らせてびくびくと脈動する。
「ああ・・・ッ、んうッ」
従弟は切なげなよがり声をあげて、身体をしならせた。
「・・・おまえがこんなに淫乱だとは気付かなかったよ」
王子は悔しそうに呟いた。
この様子では、従弟は本当に自分の知らないところで何人もの男たちに抱かれているに違いない、と王子は邪推し嫉妬に胸が焼かれる思いを抱いた。
実際はただ、素朴なエオメルの脳があまりの刺激に耐えられず、ちょっと壊れてしまっただけなのだが。
王子が従弟のものを咽喉の奥まで飲み込み、歯でズイッと扱く。
「ぁああああああ〜んッ」
エオメルは喘ぎながら両手で王子の頭を抱えて、激しく腰に押し付けた。
「なんだ、そんなにいいのか?」
セオドレドが咥えたまま尋ねると、エオメルは何度も頷いて「いい〜〜!」と答え、自ら腰を動かした。
「ふん、じゃあこっちは?」
そう言って後ろの穴に指を突き入れ内部をぐりぐり擦ると、「はァッ」と従弟がよがり、身体を仰け反らす。
「そうか、後ろにももっと欲しいんだな?よし、今すぐくれてやる!」
セオドレドは今度は躊躇なく身体を起こして自分のものを露出させた。
そしてエオメルの足を左右に大きく広げて体勢をとらせ、一気に挿入した。
「あああぁ〜〜〜〜ッ」
「う、熱いな・・・それに、きつい」
これが、エオメルの抱き心地か・・・と妙な感慨ふけりつつ、柄で傷つけてしまったことを考慮して、初めはゆっくり腰を遣っていたセオドレドだった。
だが従弟自身がもっと激しい抽送を求めて自ら尻を突上げてくるのに巻き込まれ、いつしか力任せに責めまくっていた。
相手と繋がる部分を梃にして揺さぶりながら、王子は快感にうめいた。
エオメルのほうも、先刻からあられもない声をあげて喘ぎのたうっている。
さらに、従兄に犯されながら自分で性器を握って、自慰に耽る始末だった。
寝台が壊れるのではないかというくらいの激しさで、ロヒアリムたちは絡み合い、王子が従弟を一際大きく揺すり上げた瞬間に同時に達した。
そしてまだまだ元気な二人は、すぐさま二回戦を開始して夜が更けてもなお、淫らな声を黄金館に響かせるのだった。
翌朝、エオメルはひどい倦怠感を覚えながら目を覚ました。
目の前には敬愛する従兄の見慣れた寝顔があった。
安らかに寝息をたてる世継ぎの王子の貌は、相変わらず整って美しく、賢そうである。
思わず微笑みかけたかれは−−ズキズキと痛む尻の違和感に、昨夜の出来事をすべて思い出したのだった。
緑の旗がはためくエドラスの城門を駆け下りていくと、ちょうどゴンドールの一行が出発するのに間に合った。
騎士軍団長は、白い馬に相乗りした執政家の兄弟を見上げて叫んだ。
「もう、御立ちになるのですか・・・!」
ファラミアがマークの青空のような瞳をかれに向ける。
「ええ。エオメル殿、いろいろ世話になりました。ご挨拶は出来ませんでしたが、セオドレド殿下にもよろしくお伝えください」
弟君はそう告げると、すぐに馬首をめぐらせてエオメルに背を向けた。
ファラミア背中に、マントにくるまったボロミアが疲れた表情でもたれていた。
弟に抱きつくようにして座り、身体をゆだねている。
白の大将の翡翠色の視線が、エオメルの顔上をすっと通り過ぎた・・・と思うまもなく、ファラミアが出立の号令をかけた。
ゴンドールの一行がどんどんかれの前から遠ざかっていく。
(ボロミア・・・!わたしは忘れません、誓いの言葉を・・・)
エオメルは突然現れた弟君に、まるで風のようにさらわれて行ってしまった愛する人の名前を、心の中でいつまでも呼び続けていた。
そのころエドラスの厩舎では、何者かにボコボコに殴られて意識を失った世継ぎの王子が、素っ裸のまま藁にまみれ馬に蹴られているところを、騎士たちに発見され大騒ぎとなっていた。
20040801up
(;;゚Д゚)<わたしのキャリアと人格を否定する動きが! まったくだ・・・ごめんなさい殿下。
セオドレド
やっと終わりました〜ばったり。
書いてるほうはとても楽しかったですがこんなもん公開していいのかな・・・とちと不安に。
ところで、エオメルとファラミア、セオドレドとボロミアが恋のライバル、みたいな展開は考えてないです。みんなできゃあきゃあ仲良しなのが好きです。
モドル<< ⇒その後続編を作りました。キリオンの返礼をどうぞ。
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