【廃墟マニヤ File061】
Aのカラオケボックス(静岡県)
(その3)
廊下を進もうとしたら、なんか危険な感じ。
反対側の方が少しマシな様子だったので、コチラから行ってみることにします(とはいえ、こんな段差ができてますけど……)。
各部屋のドアは鍵が掛かっている上、室内が暗いので中の様子がわかりません。
一部屋だけドアが開いていました! 中を覗いてみると、メチャクチャ狭い上に、間取りも変形で使い勝手が悪そうです(超広角レンズで撮影しているので、この写真は実際より広い感じに写っています)。しかも窓らしき部分には目隠しがつけられ、室内は真っ暗です。いったい、この建物は何だったのでしょうか?
そろそろタネ明かしをすると(ってタイトルでばれてますけど)、実はこの建物、前述のザ・ドリフターズを脱退したメンバーが引退後カラオケボックスを営業しようとして建てたものなのです。
そのメンバーの名前は“荒井注(あらい ちゅう)”……といっても知らない方が多いと思うので、M堂で購入したプロマイドを貼っておきましょう。下の方で建設作業員の格好をして座っているのが“荒井注”ですね(念のため、左上から順にいかりや長介、仲本工事、高木ブー、加藤茶です)。
この荒井注はドリフの中ではおっさんキャラで、ふてぶてしい態度で繰り出す「何だ、バカヤロウ!」といったギャグが当時大流行しました。小学生の間で「あらい」という名字の子は、みんな「注」とか「ハゲ注」というあだ名をつけられていたものです(まあ、加藤だったら「茶」、高木だったら「ブー」だったわけですけど……)。
この荒井注は1974年ドリフ脱退後、1991年になんと38歳も年下の女性と再婚。そして女性の実家のある伊豆に移住し、その頃ブームだったカラオケボックスを始めようとしてこの建物を建てました。
ところが、建物が完成してカラオケ機器を部屋に入れようとしたところ、建設業者の設計ミスでドアが小さくて入らず、その業者はトンズラ。結局、開店を断念するというコントのような事態になってしまったのです。この事件(?)は、結構ワイドショーなどでも取り上げられ、憮然とした表情でインタビューに答える荒井注を見て「引退した後もこんなに笑わせてくれるなんて」と感心したものです。
そのような話を聞いてから改めて見ると、確かにドアが少し小さいように感じませんか? まあ、当時のカラオケ機器が大きかったということもあるんでしょうけど……。
最奥から先ほど階段を上がってきた正面側を見るとこんな感じ。実はこのカットを載せた理由は……
向かいにウォータースライドのついたプールが見えるのですが、こちらも長く使われていない様子……というか完全に廃墟です。さらに写真には写っていませんけれど、すぐ上にあるホテルも休業中で、この界隈かなりの寂れっぷりです。荒井注の怨念でしょうか(笑)
このあと近所の人に聞き込みをしたところ、結局カラオケボックスはもちろん、他業種でも一度も営業することなく、2000年に荒井注が亡くなったため奥さんが手放して、現在は不動産屋の管理物件となっているそうです。
この記事を見て、天国の荒井注は「何見てんだよ!」と言っているかも……。
END
(2014.2)
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