沼津の中にある伊豆
伊豆にあって沼津にないもの
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◆ どちらにもあるもの
西海岸や狩野川流域に限っても、沼津と伊豆の共通性は多い。一つは、「富士山」が眺められることだろう。伊豆スカイライン・西伊豆スカイライン・西海岸からそれぞれに特色のある富士山を眺めることができる。天城山より身近な存在なのかも知れない。
次は、「地震」と「台風」の被害だろう。地震は決して東海岸に限られたものではない。伊豆半島自体が一つのプレートであり、どこで起きても不思議でないという。台風に至ってはほぼ毎年通過して被害を撒き散らしている。
三つ目は、「ひもの」だろう。製法は違っても海に面した場所ではひものを作っている。そして、「言葉」が荒いのも似ている。雅やかさはなく、単刀直入だ。
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◆ 伊豆にあって沼津にないもの
だが、伊豆にあって沼津にないものがある。
その一つは、「温泉」だろう。伊豆半島は、東海岸・西海岸・狩野川流域のいずれにも天然の温泉があるのに沼津には見当たらない。
その次は、「わさび」かもしれない。沼津は富士山に近い割りに良水に恵まれていないようだ。水道の味は美味だが、水源は隣の清水町の柿田湧水だ。
三つ目は、大きな「滝」がないことだろう。天城の山々と違ってそれほど高い山もないから、浄蓮の滝や河津七滝(ななだる)のような豪快な滝はない。鮎壷の滝は長泉町(駿東郡)にある。
四つ目は、「鮎釣り」であろう。狩野川は鮎釣りで有名だが沼津市内では適地がない。黒鯛
やハゼは釣れても鮎は釣れない。「金山」もないし、ループ橋もない。食べ物にもないものはありそうだが、グルメでないので分からない。
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◆ 沼津にあって伊豆にないもの
伊豆は広くてまとめにくい地域だ。海岸部分と内陸部だけでなく、東海道が箱根を抜けて通っているから一層混乱する。三島宿は伊豆国だが、沼津宿は駿河国になる。宿場と助郷の関わりで見れば、海岸や内陸部と宿場とは住民自体に区別意識が生まれたに違いない。下田街道(往還)沿いにしても同じだろう。
三島と沼津はそれほど変わりがない。周辺部から人が集まるのを見越した商業、伊豆を観光資源としたみやげ物、あるいは工業の発展などは似ている。熱海も工業を除けば沼津や三島に似た面がある。
沼津にあって伊豆にないものを探すために、父や妹に電話をかけた。観光ガイドに登場する寿司や刺身は伊豆の方が多かった。誰もが答えた宿場町は三島があってボツだ。城下町というと、明治の初期に壊されているから、父も妹もイメージが湧かないようだ。私の大好きな栗煎餅や茶煎餅は伊豆に限らず、どこでも作っている。松並木だって、箱根から三島にかけてある。お茶は伊東でも作っていた。工場は、三島から大仁にかけて昔から進出していて、沼津に限らない。
結局思いついたのは、東名高速道路と車検場だけだった。いずれもクルマに関しているのが面白い。でも、考えてみると、違いでなくて一体とするものだろう。静岡県東部のクルマのナンバーが「沼津」だから、伊豆も駿河も混ざっている。違いを探すうちに、伊豆との共通性を確認することとなった。
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◆ まとめ
温泉・わさび・滝・鮎釣り・金山のいずれも満たす土地などわずかであろう。理想像や典型を持ち出して伊豆を語る気は私にはない。昔の国制とか歴史を持ち出し、過去の伊豆を美化したり批難するのも不毛であろう。
むしろ、伊豆と境を接する場所に、同化されたり反撥したものが生じたような気がする。そういう場所が沼津だと思う。伊豆と駿河の境にあって、漁業を通じた結びつきや狩野川を通じた結びつきが生まれ、生活や経済に組み込まれたことを確認するだけで充分ではなかろうか。
私は、沼津の中にある伊豆を確かめただけで、伊豆や沼津のすべてを語るつもりはない。 先頭に戻る