終止形の使われ方
誰にもわかるコード進行 4



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おとずかい
  
フォークのこと


誰にもわかるコード進行

(1)進行方向を示す用語
(2)唱歌・童謡・フォーク・GSの終止形
(3)ドミナント終止とサブドミナント終止
(4)終止形はどんな意味を持つのか

参考 70年代フォークの終了形

 名前は終始(終了)でも実際ははじまりや中継ぎにも使われることはすでにふれました。
 また、唱歌の曲を例にサブドミナントよりドミナントの方が強く感じることにもふれました。
 ここでは和音の構成音がどのように緊張を解決するかを考えます。
(1)進行方向を示す用語
 ひとつの音階の中での移動方向が「上行」と「下行」と呼ばれ、
 隣り合う音への移動を「順次進行」(2度間隔)、3度以上の進行を「跳躍進行」と呼ぶのはすでに説明しました。
 西洋音楽では同じ音を1度と数えます。だから、隣りは2度です。
 和音は構成音が複数あるので、「二声部間」の進行用語が使われます。
 方向を示す、上行と下行は変わりありません。
 ●並進行:上下の声部が同じ方向に異なる度数で進行することです。
 ●平行:上下の声部が同じ方向に同じ度数で進行することです。
 ●反進行:互いの声部が逆方向に進行することです。集中したり発散するパターンですね。
 ●斜進行:一方が変化せず、他方が上下に移動することです。
 以上は「おとずかい」で図解していますが、和音の転回や不協和の解決で飛び出します。
(2)唱歌・童謡・フォーク・GSの終止形
 終止形は原則的に三つで、ポピュラーではもう一つ加わるのは「コードの基本パターン表」のとおりです。
 ほかには、強進行を使う「ツー・ファイブ」や「ツー・ファイブ・ワン」のほか、「偽終止」もあります。
 実例なしで語ってもピンとこないので唱歌・童謡・フォーク・GSで説明します。単位は曲数です。
機能 コード進行 唱歌 童謡 GS フォーク
@T・D・T C・G7・C 43 28 3 8
Am・E7・Am 0 12 12 18
AS・D・T F・G7・C 11 9 0 12
Dm・E7・Am 0 3 3 11
Dm・G7・C 5 11 6 19
BT・S・T C・F・C 0 7 0 0
Am・Dm・Am 0 1 2 2
CD・S・T G7・F・C 0 0 2 2
E7・Dm・Am 0 0 0 0
合計 59 71 28 72
サンプル数 66 88 65 167
 まず、サンプル数と合計を見てください。唱歌と童謡は合計が8割以上ですが、GSとフォークは4割程度です。
 GSとフォークは代理コードや借用コードを使った終了が多いからです。
 次に、色を付けた曲数が多い部分を見てください。唱歌・童謡・GSは@、フォークはAが多い。
 @とAはD・Tで終わるドミナント終止です。そして、BとCはS・Tで終わるサブドミナント終止です。
 唱歌は全部がドミナント終止ですね。童謡にはBがわずかにあります。でも、全体はドミナント終止です。
 なお、Cはクラッシクでは禁則なのでGSとフォークにしかでてきませんがごく少数です。
 *唱歌、童謡、フォーク、GSのはじめと終りの具体例は「音楽ガイド」に別々に掲載しています。
(3)ドミナント終止とサブドミナント終止
 終止形の4つを並べて比較はしません。それは和音の解説書が必ずふれるからです。
 ドミナントもサブドミナントも山を作る(緊張や展開を生む)ことでは同じですがその程度に違いがあります。
 大きな揺れでインパクトを与え、盛り上げ、それをどこで落とすかという作曲技術なのでしょう。
 ドミナント終止の優位性は音楽的には次の2点で説明されています。
  1 完全4度上行または完全5度下行するルート(根音)の進行が最も力強い感じを与える。
  2 長3度と短7度とによる不安定な三全音(トライトーン)が、反進行によって3度または6度の協和音程に解決。
 2の説明は長調の場合にはファとシの音程の不安定をシからドおよびファからミへ移動して解決させることです。
 ついでですが、ドミナント終止は反進行、サブドミナント進行は斜進行というのも覚えておいた方が良いでしょう。
(4)終止形はどんな意味を持つのか
 終止形が重要なのは、音楽はトニックに始まりトニックに終わるという大原則のほかに、
  @ドミナントからトニックに至る「ドミナント終止」、
  Aサブドミナントからトニックに至る「サブドミナント終止」、
 という緊張の解決で組み立てられていることです。
 かたい話をすれば不協和音をいかに協和させるかということです。
 ついでに言えばこの中間に「サブドミナント・ドミナント終止」があり、
 その他にクラッシクで禁則となる「ドミナント・サブドミナント」進行もあります。
 どこに山や谷を置くかは作曲家の判断ですが、そういうもので音楽は組み立てられています。
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 参考  70年代フォークの終了形
 以下の文章は「ひまじんの音楽ガイド」19に掲載したものを訂正しました。
 70年代の日本のフォークがどんな終わり方をしているかを整理しました。
 出だしは共通パターンがありませんでしたが、終わり方には共通のパターンがあります。
 サンプル数は60しかありませんのでこれが決まりだと誤解しないでください。

●Cメジャー(ハ長調)

 頻出するパターンはC−G7−C、F−G7−C、Dm−G7−Cの3つです。
 ダイアトニックコードを持ち出せばトニック(T)・ドミナント(X)・トニック(T)とサブドミナント(W)・ドミナント(X)・トニック(T)です。
 Dm(U)はWの代理コードですから2つのパターンになります。
 そして、最後の2つのコードに絞ればG7−Cがほとんどです。これを「ドミナント・ケーデンス」といいいます。ちなみにカッコ書きのローマ数字は「デグリーネーム」といいます。
 Cで始まってもCで終わらない歌もあります。
 ひとつはトニックの「代理コード」とされるEm(V)やAm(Y)を使うものです。Emで終わるのは「紙風船」、Amは「妹」・「なごり雪」・「竹田の子守唄」です。
 もうひとつが「逆進行」といわれるやつでG(X)でおわるオフコースの「愛を止めないで」が典型です。クラッシックでは禁則とされますがポピュラーでは普通に出てくるパターンでもやもやとした終わり方です。
 なお、Wの代理コードとなるUのDmは頻繁に使われますが、Xの代理コードとされるZのBm♭5が使われないのは減音程の異質なコードだからでしょう。
 ちなみに、Cメジャーのダイアトニックコードは、C(T)、Dm(U)、Em(V)、F(W)、G(X)、Am(Y)、Bm♭5(Z)です。mは短です。メジャーなのにマイナーが含まれるのに注意してください。

 AmーG7−C  今日までそして明日から
 Am−Dm−C  春夏秋冬

 C−G7−C   翼をください、翳りゆく部屋、たどりついたらいつも雨降り、僕の胸でおやみ、遠い世界に
 
 Dm−G7−C  ささやかなこの人生、あの頃の僕は、さらば青春、海岸通、白い色は恋人の色、今はもうだれも

 F−G7−C   終わりのない唄、涙は明日に、枯葉の中で、恋人もいないのに、ルージュの伝言、友よ、あの素晴らしい愛をもう一度

 F−C−F−C  はずれくじ


●Aマイナー(イ短調)

 短調には自然的短音階、和声的短音階、旋律的短音階の3種類があります。日本人が好む音階のようで音階(スケール)の解説ではあれこれ細かい説明がされますが無視します。
 AマイナーはCメジャーよりパターンが分散します。
 最も頻出するのがDm−Em(E7)−Amです。最後の2つのコードに絞ればEm(E7)−Amに集中します。Cメジャーで触れた「ドミナントケーデンス」ですね。
 おもしろいのは、Cメジャーでは見当たらなかったZ番目のGが出てくることと、サブドミナントのD(W)やその代理和音のBm♭5(U)からAmに至るパターンが見当たりません。
 Aマイナーの歌にはF(Y)がトニックのAmの代理コードに使われますがめったに出てきません。
 わたしはFをDmでごまかしていますがその必要がないのも嬉しい。そして、苦手なBmも使わずに済むのでAmへの移調も増えました。
 Amで始まる歌でも代理コードのFで終わるオフコースの「さよなら」もあります。掟破りのオフコースだけでなく他のフォークでも曲の途中でAmからF、あるいはFからAmというパターンもけっこうあります。
 意外なのはXで終わるNSPの「夕暮れ時はさみしそう」です。逆進行もあるのが音楽なんですね。
 ちなみに、Amのダイアトニックコードは、Am(T)、Bm♭5(U)、C(V)、Dm(W)、Em(X)、F(Y)、G(Z)です。
 同じコードでも調(キー)が変わればデグリーネームが変わることに注意してください。
 AmのキーにおけるCはV番目、FはY番目でいずれもトニックAmの代理コードです。短音階になっても代理コードの関係は変わりません。

 Am−E7−Am  四季の歌、無縁坂、私は泣いています  ※スリーコードの曲の定番です。
 Am−Em−Am  雨の物語
 Am−G7−Am  北国列車、わかってください

 C−E7−Am   22才の別れ

 Dm−Em−Am  ほおづえをつく女
 Dm−E7−Am  旅の宿、秋止符、ペテン師

 F−G−Am    君は悲しみの
 F−Em−Am   いちご白書をもう一度、あの唄はもう唄わないのですか
 
 G−E7−Am   季節の中で

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