おとずかい
第4章 音階と音程の本文
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音図解もくじ
1 音名・音階・音程 ●第4章のあらましへ戻る
2 音の並び・異名同音
3 五度圏を理解するための音程
4 転回音程
5 進行を表現する用語
6 長音階と短音階
7 3つの短音階を比べる
8 ♯や♭の攻略法
9 調号の早見表
10 音階と変化記号
第4章 音階と音程
この章は西洋音楽の文法に当たる部分です。音の定義から音と音の結びつきについての決まりです。
語学学習で退屈なのが文法のように無味乾燥で退屈な部分ですが、理屈で考えるとおもしろい分野です。
算数をやり直すように気楽に眺めてください。微分、積分、行列はありません。
1音名・音階・音程
ここは言葉の定義です。音のつく言葉がたくさん出ますが驚かないでください。
この他に音の高さを「音高(ピッチ)」といい、音の長さを「音価(ノート・ヴァリュー)」といいます。
定義もしないでこっそり使うのもシャクですね。そんなことを知るかと切れないでください。
(1)音名 【図4−1】
音名は音の呼び方のことです。
イタリア語と英語を覚えておけば十分です。日本式はクラッシック系の場合に必要です。
(2)音階
音階は幹音(♯や♭がつかない音)を階段状に並べたものです。上の音名順と同じです。
音階上の音を「階名」という場合もあります。
また、調が変わった時の音の呼び方に固定ドレミと移動ドレミで違いもありますが慣習的な用法にすぎません。
【注】参考になる読み物には最相葉月「絶対音感」(小学館)があります。西洋音楽になじむための涙ぐましい努力を笑えません。
(3)音階の構造 【図4−2】
幹音の間をさします。「ミーファ」と「シード」は半音です。ピアノの黒鍵(キー)を頭に入れておくと全音と半音の位置がわかりやすいでしょう。
(4)音程 【図4−3】
音程はある音を基準にした音と音の高さです。単位は度(デグリー)。1度から始まります。
@ユニゾン:同じ音の並び
Aオクターブ:主音どうしの音程。8度。
Bトライトーン(三全音):増4度と減5度
C完全、長、短、増、減の区分
(5)音階と音名 【図4−4】
ドレミファソラシドの並び方です。音名と階名を区別する人もいますがイタリア語と英語の区分にすぎません。
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2音の並びと異名同音
ようやく具体的な話が出てきます。ヘ音記号とト音記号なんて言葉を使うから混乱しますがF=へ・G=トを思い出せば良いわけです。
異名同音は平均律による考え方です。西洋音楽にはピタゴラス音律や純正律もありました。
(1)音の並び 【図4−5】
図解をながめてください。音符は示していませんが次のことは忘れずに。
すべてをいっぺんに覚えるのでなく主な音から覚えましょう。
@ト音記号はGから始まります。G=ソ=トです。高音部記号といいます。
Aへ音記号はFから始まります。F=ファ=トです。低音部記号といいます。
Bヘ音記号からト音記号までは上1(下1)線のド(同じものです)をはさんで連続します。
Cへ音記号の第1線はソ、第5線はラ、ドは第2間です。
Dト音記号の第1線はミ、第5線はファ、ドは下1線と第3間にあります。
(2)異名同音 【図4−6】
西洋音階の平均律では名前は違っても同じ音や調とされます。
ダブルシャープやダブルフラットも登場しますが理屈だけ覚えておけば十分です。
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3五度圏を理解するための音程
五度圏は「音楽ガイド」でしつこいくらいふれています。それがどのように成り立つかの説明は省略しますが、音程の数え方や音の進行パターンを知っておくことが欠かせません。
ここでは音程の補数関係や5度と4度の動き[いずれも完全音程です]を例にして説明します。
(1)音程の数え方 【図4−7】
基準音をどこに置いても同じです。
度数は1から数えます。0はありません。
度数は足し合わせて9になる「補数」の関係があります。
1+8=9 8+1=9
2+7=9 7+2=9
3+6=9 6+3=9
4+5=9 5+4=9
音楽の説明はこれを利用し、符号を無視して+と−で計算しています
5度上がる(+5)が4度下がる(−4)と同じになります
上記の関係も同じように考えればいいわけです。上がる下がるの言葉に惑わされないようにしましょう。
(2)5度移動と4度移動
変動を滑らかにするために「転回」を利用しています。転回は次にふれています。
@5度移動をプラスで並べる 【図4−8】
上り5度と下り4度は同じことです
●これは五度圏の♯系の並びです
A5度移動をマイナスで並べる 【図4−9】
下り5度は上り4度と同じです
1オクターブ上のドから始めます
●これは五度圏の♭系の並びです
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4転回音程
音程には完全8度内の音程にある「単音程」とそれを超える音程の「複音程」があります。
転回音程は、単音程の2音のいずれかを1オクターブ上か下に移して上下関係を逆さにすることです。
転回音程の考えから次の関係が出てきます
(1)転回音程と度数 【図4ー10】
原音程と転回音程は合わせて9度になる補数の関係がある。
(2)転回音程と完全・長・短 【図4ー11】
次のことは図4−3の音程を理解して納得できるので結論だけあげます。
@完全音程は転回しても完全音程のままである。
1度、4度、5度、8度が完全音程です。
A長・増は転回すると短・減に変わる。
2度、3度、6度、7度音程には長短があります。
4度には増、5度には減が完全音程以外にあります。
(3)音程の数え方の例外 【図4−12】
増4度・減5度は三全音=トライトーンで不安定な音階です。ファ〜シとシ〜ファを覚えておけば十分です。
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5進行を表現する用語
これは和音の進行を表現するときにも欠かせません。
(1)単一声部の進行パターン 【図4−13】
@進行の向き(音程の度数は問わない):2声間でも同じ
●上行(じょうこう):上向きの進行
●下行(かこう):下向きの進行
A移動する音程の度数の違い
●順次(じゅんじ)進行:2度間隔までの進行
●跳躍(ちょうやく)進行:3度以上の進行
(2)2声部間の進行パターン 【図4−14】
●並進行(へいしんこう):上下の声部が異なる度数で進行
●平行(へいこう):上下の声部が同じ度数で進行
●反進行(はんしんこう):互いの声部が逆方向に進行
●斜進行(しゃしんこう):一方が変化せず他方が上下に移動
6長音階と短音階
(1)長音階と短音階の関係 【図4−15】
自然的短音階は長音階の主音を3度下げたものです。
近親調の図解もあわせてごらんください。平行調や同主調は3度の上下移動です。
全音と半音の位置が変わることに注意してください
長音階の間隔は全・全・半・全・全・全・半ですが、
短音階の間隔は全・半・全・全・半・全・全になります。
(2)短音階は自然的短音階、和声的短音階、旋律的短音階がある 【図4−16】
元の図は「楽典♪音楽理論の基礎」から引用し、改変しています。
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7三つの短調の違い
6度・7度音が異なる
●自然的短音階(ナチュラル・マイナー):長音階と同じ音の並び替え=平行調
●和声的短音階(ハーモニック・マイナー):第7音を半音上げる
●旋律的短音階(メロディック・マイナー):上行は第6音と第7音を半音上げ、下行は元に戻す
(1)音程からみた音階の違い 【図4−17】
長調とは3度で異なり、短調間では6・7度に違い
長音階はすべて長音程(全音=白キー)で構成されています。
短音階は長音程と短音程(半音=黒キー)が組み合わされて構成されます。
(2)同じ短音階でも和音の構成が異なる 【図4−18】
和音は第5章でふれています。
和音の違いは音階によるものと構成音によるものとが重なります。
和音は3度違いの音を積み重ねるのでmや7は短音です。
(注)音階ごとのコードの並びは第5章でふれています。
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8♯や♭の攻略法
(1)2つの用法
@シャープ(♯)は半音上げ、フラット(♭)は半音下げる臨時的な変化記号です。
Aもう一つは音階全体を表すための「調号」キーとして♯や♭を複数付けます。
(2)調号がなぜこの位置にあるの 【図4−19】
シャープは「シ」、フラットは「ファ」という解説がありますが調号をよく見るとハ長調(Cメジャー)で見ればシャープはソ(G)ですがフラットはシ(B)です。
それではと各音階を眺めてみると次の規則性がありました。
●各長音階の最後のシャープは第7度音(階名でいえばシ)にあたる。
●各長音階の最後のフラットは第4度音(階名でいえばファ)にあたる。
だから、シャープのある位置の1度上のドが主音になる長音階となる。
あるいは、フラットのある位置の4度下のドが主音になる長音階となる。
ちなみに上の図はハ長調(C)から♯は5度、フラットは4度上がっています。
ということは、記号数1の場合でG長調とF長調なんですね。
(3)調性を示す♯と♭の並び 【図4−20】
すでに4(2)でふれていますが、9の調号早見表や五度圏図とあわせて確かめてください。
@シャープ系 【図4−21】
主音の移動は図4−8とあわせてごらんください。
Aフラット系 【図4−22】
主音の移動は図4−9とあわせてごらんください。
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9調号の早見表 【図4−23】
五度圏図は♯の7番目と♭の6・7番目を省略して表記されます。理由は異名同音だからです。
この表で網かけした部分が隠れていることにご注意ください。
この表は楽譜を眺めるときに利用してください。
五度圏 【図4−24】
五度圏はある音から完全5度(または4度)の上下進行を連続させてできる循環図です。4度図とも言います。
調号の系列、関係調の配置、和音の進行にも応用されます。
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10音階と変化記号
どの調のどこに♯や♭がつくのか戸惑う時があります。五線譜の♯や♭のある位置を思い出せばいいわけですがとさに思いつかないものです。
そんなとまどいを解消するために変化記号の位置を整理しました。
変化記号の数を数えるときは下のド(ラ)と上のド(ラ)は同じものです。
変化記号は♯・♭いずれも7つありますが実用性を優先して5つまでにしています。
音階は、長音階と短音階におのおの12あります。
(1)ABC順に並べたダイアトニック・スケール
音楽解説書は五度圏に基づく変化が中心になっていますが、ABC順の方が使いやすい時もあるので作成しました。
●長音階 【図4−25】
●自然短音階 【図4−26】
(2)五度圏を前提にしたダイアトニック・スケール
調性に基づく並びです。楽典や理論書に多い並べ方で、規則性がわかります。
@♯がつく音階はシの列をF→C→G→D→Aの順に5度上行して記号が増加。
A♭がつく音階はファの列をB→E→A→D→Gの順に4度上行して記号が増加。
B自然的短音階は長音階を並べ替えたものですから同じ規則性があります。
●長音階 【図4−27】
●自然的短音階 【図4−28】
お疲れさまでした。おつきあいありがとうございます。
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