囲い込みの種類とスイッチングコストFCF利回り光通信の投資損益

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ショートコラム(2025年6月)

■光通信の投資損益(2025年6月8日)NEW!

光通信決算説明資料の投資損益累計から勝率と損益比率(リスクリワードレシオ)を計算してみると、驚異的な結果が導き出されました。

勝率86.2%、損益比率12.4倍はありえない数字です。

●勝率86.2%=294社÷341社

●損益比率12.4倍=約24億円÷約1.9億円
●1社当たりの利益額約24億円=利益7,058億円÷294社
●1社当たりの損失額約1.9億円=損失91億円÷47社

光通信の株式投資に関して、徹底的に研究するのもありかなと思いました。

光通信の投資損益累計


■FCF利回り(2025年6月5日)NEW!

英国のウォーレン・バフェットと称され、その道では知られているバリュー投資家のテリー・スミス(Terry Smith)は著書『Investing for Growth(成長のための投資)』にて、株価評価にFCF利回り(free cash flow yield)を用いています。

自ら運用するファンドスミス(Fundsmith)では、FCF利回りが長期金利に比べて高く、他の投資候補のFCF利回りに対して高い場合にのみ投資を行っています。

●FCF利回り(%)=FCF÷時価総額

千年投資の公理』では評価ツールのひとつとして、キャッシュリターンという名称でFCF利回りを紹介しています。倍率でなく利回りを使うのは、ベンチマークである長期金利と直接比較できるためです。

●FCF利回り(%)=(FCF+純利息)÷企業価値

●純利息=支払利息−受取利息

●企業価値=時価総額+有利子負債−現金同等物

ちなみに足元の長期金利は概ね下記のとおりに推移しています。

●日本10年債:1.5%
●日本30年債:3.0%
●米国10年債:4.5%
●米国30年債:5.0%

我が国の長期金利は、さらなる上昇余地がありそうです。 個人的には米国30年債をベンチマークとして、5.0%を上回るFCF利回りが望ましいと思っています。


■囲い込みの種類とスイッチングコスト(2025年6月3日)

モルガンスタンレーの興味深いレポート「article_measuringthemoat(堀の測定)」に、囲い込みの種類とそれに伴うスイッチングコストがまとめられています。

(1)ブランドロイヤルティ:心理的な愛着、新ブランドへの潜在的な不満

(2)互換性:新システムが既存システムとうまく連携しない可能性、統合コスト

(3)契約:早期解約料、契約破棄に伴う法的費用、割引の喪失

(4)ロイヤルティプログラム:蓄積された特典の喪失、新規アカウント設定の手間

(5)データ:データの転送・変換にかかるコストとリスク

(6)地理的:移転コスト、物理的な所在地変更に伴う手間、地域的なメリットの喪失

(7)学習曲線:新しいシステムを習得する必要がある、初期の生産性低下と追加トレーニングが必要

(8)ネットワーク効果:ネットワークメンバーへのアクセス減少、ビジネス関係の喪失、新プラットフォームのユーザー基盤縮小の可能性

(9)検索コスト:代替手段の検討にかかる時間、費用、労力

5月31日付けのショートコラムB2BとB2Cでも述べたとおり、この手の競争優位性を持つ会社はB2Bビジネスに多く見受けられ、B2Cビジネスでは非常に少ないです。

ちなみに5月27日付けのショートコラム銘柄分析シートの事例にあげたオービックは、スイッチングコストの塊と言っても過言ではありません。

この分野に明るい人材の少ない(あるいはまったくいない)中堅中小企業が、日常業務に欠かすことのできないオービックのソフトウエアを他社製に置き換えるのは相当な困難を伴うからです。上記では2番目、5番目、7番目、8番目、9番目が該当します。

スイッチングコストの高さに起因する競争優位性が、オービックの売上総利益率77.8%、営業利益率64.6%、ROIC111.3%(2025年3月期)という驚異的な数字を生み出しているのです。



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