囲い込みの種類とスイッチングコストFCF利回り光通信の投資損益
株主からお預かりしたお金光通信とバフェット・パートナーシップ

バフェット・パートナーシップ時代の株主への手紙株は儲かるという世論
長期投資家の長谷川滋利氏

パーシャル・オーナー


ホーム投資入門ショートコラムポートフォリオ株の本バリュー投資塾レポート


ショートコラム(2025年6月)

■長期投資家の長谷川滋利氏(2025年6月29日)NEW!

個人的にも長期投資家として一目置いている、メジャーリーガーとして活躍された長谷川滋利氏のインタビュー動画(前半後半)をたいへん興味深く拝聴しました。私的なメモは下記のとおりです。

●バークシャー・ハサウェイなどの米国株を持っていた
●5年前に売り、今はほとんどキャッシュポジション

●ウォーレン・バフェットが師匠だと勝手に思っている
●『スノーボール』がバイブル

●投資やバブルの歴史を学ぶところから始めてほしい
●『バブルの歴史』という本がおすすめ

●企業を10年単位で見ている
●BSE問題(狂牛病)でマクドナルドの株価が暴落したときに買った

●マーケットをこのまま放っておけばハードランディングになる
●トランプ大統領の掻き回しによりソフトランディングの可能性が出てきた

●長期投資家は長生きしないと意味がない
●健康法は16時間断食、7〜8時間睡眠。アルコールも昨年から止めた

娯楽性の強い番組に出演していることを踏まえたうえで、その場の雰囲気に配慮しつつ、自分の主張を通している点はさすがです。

私には長谷川氏が「読書に勤しみ、好きなことを楽しみながら、マーケットの歴史が繰り返すときを静かに待っている」ように受け取れました。


■株は儲かるという世論(2025年6月25日)NEW!

1959年2月に書かれたバフェット・パートナーシップ時代の「株主への手紙」から引用します。

私は市場全体を予測しようとは考えていません。私の努力は、割安な証券を見つけることに注がれています。

しかしながら、株式投資で利益が得られるという世論の広範な信念は、最終的には問題を引き起こすと考えています。

もしそうなれば、たとえ割安な証券であっても、価格(私の見解では本質的価値ではない)は大きな影響を受けると予想されます。

まるで昨今のマーケットを語っているような文言です。当時のバフェット氏は28歳ながら、投資哲学のコアに関しては既に完成されていたのかもしれません。

引き続き、この時代の「株主への手紙」を読み進めていきます。


■バフェット・パートナーシップ時代の株主への手紙(2025年6月20日)

若き日のウォーレン・バフェット氏の投資について記されている貴重な文献をご存じでしょうか。バフェット・パートナーシップ時代の「株主への手紙」です。

この「株主への手紙」はアイビービジネススクールのサイトで閲覧できます(PDF直リンク、152ページ)

もともと英語があまり得意でないこともあり、グーグル翻訳を頼りにこの「株主への手紙」を読み進めていきました。

ようやく日本語化を終えて自分なりのまとめに入る段階で、追加の情報を得るためグーグル検索を行ったところ、こともあろうに『バフェット伝説の投資教室:パートナーへの手紙が教える賢者の哲学』がヒットします。

バフェット・パートナーシップ時代の「株主への手紙」をまとめた書籍の翻訳本です。

そんな経緯から今は、初めから本書のことを知っていればという後悔の念と、バフェット氏が直々に執筆した原文に触れられた満足感の入り混じった複雑な心境です。

私のような手間をかけたくなければ『バフェット伝説の投資教室:パートナーへの手紙が教える賢者の哲学』を読まれることをおすすめします。

なお本書に関しては、このショートコラムを読まれている方からもご連絡をいただきました。Aさんありがとうございます。


■光通信とバフェット・パートナーシップ(2025年6月17日)

かつてIRに消極的だった光通信も、今では個人投資家向けオンライン説明会を開催するようになりました。

ユーチューブにも動画がいくつかアップされており、その中で個人的にいちばん興味深かったのは、執行役員の末吉章寛氏が純投資方針についてバフェット流であることを明言している、2024年12月2日に開催された説明会です。

われわれはウォーレン・バフェット氏の投資方針を参考にしてバリュー投資を実施しています。安定した事業、強固な財務基盤、割安という三つの要素を併せ持つ企業がわれわれの投資先です。

ここでのポイントは、果たして”いつの”バフェット氏を参考にしているかです。昨今のバフェット氏は、出来高が少ない、時価総額が小さい、流動性がないという問題で放置されている割安銘柄への投資(いわゆるシケモク投資)を手がけていません。

光通信が参考にしているのは、おそらく1960年代のバフェット氏ではないでしょうか。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったバフェット・パートナーシップの時代です。

バフェット・パートナーシップ(BPL)がスタートした1957年の年初に100ドルを投じていれば、1969年には2,895ドルまで増えました。一方、同期間のNYダウ(Dow)は100ドルが253ドルに増えた計算です。驚くべきことに、NYダウに対して10倍超のパフォーマンスを達成しています。

これだけの成果をあげたにも関わらず、バフェット・パートナーシップは1969年末に解散しました。米国市場全体が高騰したうえに、当時のバフェット氏が得意としていたシケモク銘柄が消滅してしまったからです。

その後、1970年に入って米国市場は低迷し、「株式の死」と呼ばれる時代を迎えます。ここでバフェット氏は投資方針を転換し、市場を独占していたマスメディアや広告代理店(現代のグーグルに相当)の株を破格の安値で大量に仕込み、今日に至る礎を築きました。

我が国の株式市場には、1960年代の米国市場同様に、出来高が少ない、時価総額が小さい、流動性がないという問題で放置されている割安銘柄が数多く残されています。そう遠くない将来、米国にならってこれらのシケモク銘柄が消滅するのであれば、相当なリターンを見込めるはずです。たぶん光通信の「中の人」も同意見ではないかと思われます。

今の私は光通信が投資している銘柄の調査に加えて、バフェット・パートナーシップの投資手法に関しても少しずつ調べています。時間がいくらあっても足りない状況です。

【バフェット・パートナーシップのパフォーマンス】

バフェット・パートナーシップのパフォーマンス


■株主からお預かりしたお金(2025年6月12日)

ワンキャリアに光通信の新卒入社1年目2名へのインタビュー記事「僕たちが選んだのは、コンサルでも、リクルートでも、ベンチャーでもなかった。光通信が仕掛ける、経営幹部キャリアの魅力」が掲載されていました。

この中から私の琴線に触れた文言を引用します。

株主からお預かりしたお金を運用させていただいていますので、事業のリターンや損失がダイレクトに戻ってくる点で、現実感が違うと思います。

新卒入社1年目の社員から「株主からお預かりしたお金を運用させていただいています」という言葉が出てくること自体に驚きを禁じ得ません。入社後すぐに、このことを徹底的に叩き込まれているのではないでしょうか。


■光通信の投資損益(2025年6月8日)

光通信決算説明資料の投資損益累計から勝率と損益比率(リスクリワードレシオ)を計算してみると、驚異的な結果が導き出されました。

勝率86.2%、損益比率12.4倍はありえない数字です。

●勝率86.2%=294社÷341社

●損益比率12.4倍=約24億円÷約1.9億円
●1社当たりの利益額約24億円=利益7,058億円÷294社
●1社当たりの損失額約1.9億円=損失91億円÷47社

光通信の株式投資に関して、徹底的に研究するのもありかなと思いました。

光通信の投資損益累計


■FCF利回り(2025年6月5日)

英国のウォーレン・バフェットと称され、その道では知られているバリュー投資家のテリー・スミス(Terry Smith)は著書『Investing for Growth(成長のための投資)』にて、株価評価にFCF利回り(free cash flow yield)を用いています。

自ら運用するファンドスミス(Fundsmith)では、FCF利回りが長期金利に比べて高く、他の投資候補のFCF利回りに対して高い場合にのみ投資を行っています。

●FCF利回り(%)=FCF÷時価総額

千年投資の公理』では評価ツールのひとつとして、キャッシュリターンという名称でFCF利回りを紹介しています。倍率でなく利回りを使うのは、ベンチマークである長期金利と直接比較できるためです。

●FCF利回り(%)=(FCF+純利息)÷企業価値

●純利息=支払利息−受取利息

●企業価値=時価総額+有利子負債−現金同等物

ちなみに足元の長期金利は概ね下記のとおりに推移しています。

●日本10年債:1.5%
●日本30年債:3.0%
●米国10年債:4.5%
●米国30年債:5.0%

我が国の長期金利は、さらなる上昇余地がありそうです。 個人的には米国30年債をベンチマークとして、5.0%を上回るFCF利回りが望ましいと思っています。


■囲い込みの種類とスイッチングコスト(2025年6月3日)

モルガンスタンレーの興味深いレポート「article_measuringthemoat(堀の測定)」に、囲い込みの種類とそれに伴うスイッチングコストがまとめられています。

(1)ブランドロイヤルティ:心理的な愛着、新ブランドへの潜在的な不満

(2)互換性:新システムが既存システムとうまく連携しない可能性、統合コスト

(3)契約:早期解約料、契約破棄に伴う法的費用、割引の喪失

(4)ロイヤルティプログラム:蓄積された特典の喪失、新規アカウント設定の手間

(5)データ:データの転送・変換にかかるコストとリスク

(6)地理的:移転コスト、物理的な所在地変更に伴う手間、地域的なメリットの喪失

(7)学習曲線:新しいシステムを習得する必要がある、初期の生産性低下と追加トレーニングが必要

(8)ネットワーク効果:ネットワークメンバーへのアクセス減少、ビジネス関係の喪失、新プラットフォームのユーザー基盤縮小の可能性

(9)検索コスト:代替手段の検討にかかる時間、費用、労力

5月31日付けのショートコラムB2BとB2Cでも述べたとおり、この手の競争優位性を持つ会社はB2Bビジネスに多く見受けられ、B2Cビジネスでは非常に少ないです。

ちなみに5月27日付けのショートコラム銘柄分析シートの事例にあげたオービックは、スイッチングコストの塊と言っても過言ではありません。

この分野に明るい人材の少ない(あるいはまったくいない)中堅中小企業が、日常業務に欠かすことのできないオービックのソフトウエアを他社製に置き換えるのは相当な困難を伴うからです。上記では2番目、5番目、7番目、8番目、9番目が該当します。

スイッチングコストの高さに起因する競争優位性が、オービックの売上総利益率77.8%、営業利益率64.6%、ROIC111.3%(2025年3月期)という驚異的な数字を生み出しているのです。



メール | プロフィール | アクセス統計 | 特商法表記 | このサイトについて | リンク集

最終的な投資判断は、みなさまご自身でなさるようお願いいたします。リンクの一部にアフィリエイト広告を含みます。
Copyright (C) 2003-2025 パーシャル・オーナー by 角山智