手掌多汗症
多汗症
そんなに暑いわけでもないのに、手のひらや足の裏、中には顔面やわきの下にたくさん汗をかく病気があります。それを手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)といいます。
一般に言う「汗かき」というレベルではなく、ひどい場合には手のひらから汗がポタポタと滴り落ちます。「字を書こうとしても紙を濡らして破いてしまうので、テストが受けられない」「ノートがとれない」といった悩みを抱える方も多く見られます。しかし、多汗症が「病気」であるという認識が広まったのは、実は最近のことです。
これまで多汗症の患者さんの多くは、受診しても「気の持ちようです」「気のせいです」などと言われるだけでした。しかし、多汗症は精神的な病気ではありません。乳幼児期にはすでに症状が現れており、物心がついた時にはすでに自分は多汗症だったという人がほとんどです。何故このように人より多くの汗をかくのかということは分かっていません。
汗の出るしくみ
汗には、暑いときに体温調節をするために出る「温熱性発汗」と、精神的な緊張によっておこる「精神性発汗」があります。手のひらや足の裏に出る汗は「精神性発汗」です。自律神経の「交感神経」が興奮すると汗が出てきます。
精神的な緊張は交感神経の興奮につながります。手掌多汗症の患者さんたちは刺激がそれほど強くなくても交感神経が興奮して汗が出ます。
汗の出る度合い
当院では、自覚症状により以下の4段階に分類した指標(HDSS:Hyperhidrosis disease severity scale)を用いております。
- 1 まったく気付かない、邪魔にならない。
- 2 我慢できる、たまに邪魔になる。
- 3 どうにか耐えられる、しばしば邪魔になる。
- 4 耐えがたい、いつも邪魔になる。
多汗症の治療について
現在、多汗症の治療としては主に以下のものが行われています。
※当院で対応可能な治療は、以下のうちの ①、⑤、⑥ です。
① 内服治療
プロ・バンサインというお薬があります。その他に精神安定剤なども使うことがありますが、あまり効果は見られません。
② 外用(塗り薬)
塩化アルミニウムローションで汗腺にふたをします。市販されていないため、置いてあるところが限られます。グレード2以上の場合効果のないことが多いようです。
③ イオントフォレーシス
「ドライオニック」という器械が市販されています。インターネットなどからの自費購入になります。効果のない人もいます。
④ ボツリヌス毒素注射
現在、顔面けいれんや痙性斜頚の治療に希釈したボツリヌス菌毒素の注射が使われています。この注射を汗のたくさん出る部位にうちます。
保険がききませんので、自費診療です。外国から直接輸入しなければならないので、当院では行っておりません。
美容形成外科などでシワ取りに用いられており、そういった施設で行ってくれるようです。
約4~5ヶ月で再発しますのですっと注射を続けなければなりません。
⑤ 星状神経節ブロック
神経ブロックの項で少し説明しましたが、「喉仏」のすぐ外側にある交感神経のかたまりに局所麻酔薬を注射する方法です。
一時的に交感神経を遮断しますので、薬剤の効いている間、手の汗は止まります。
この神経ブロックを左右10回ずつ程度繰り返して行うことで、手や顔面の汗が減ります。
⑥ 胸腔鏡下交感神経遮断術
胸腔内に内視鏡を挿入し、交感神経幹を見ながら切断するかもしくはクリップなどで遮断する低侵襲手術です。
手掌の多汗症に対しての効果は90%以上。
腋窩や顔面に対しては70から80%ぐらい。
足底に対しても20%程度の効果があります。
副作用として他の部位から汗が出てくる代償性発汗があります。
※現在は大分大学医学部附属病院にて院長がお手伝いする形で実施しております。