有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせは2型糖尿病を改善する
最新疫学研究情報No.83
米国のルイジアナ州立大学の研究者ティモシー・S・チャーチ博士らによって、「有酸素運動と筋力トレーニングの両方の運動を組み合わせることで、2型糖尿病患者のヘモグロビンA1c(※1)値が改善される」との報告がなされました。
研究者は、ルイジアナ州在住のデスクワークをしている糖尿病患者(※2)262人(*平均56歳・女性が6割を占める)を対象に、「筋力トレーニング(*3日/週)のみのグループ73人」「有酸素運動(*体重1kgあたり12kcalの消費量/週)のみのグループ72人」「筋力トレーニング(*3回/週)+有酸素運動(*体重1kgあたり10kcalの消費量/週)のグループ76人」「全く運動をしないグループ41人」の4グループに分けて9か月間調査を行いました(無作為割付)。
調査の結果、両方の運動を組み合わせたグループにおいて、ヘモグロビンA1c値が改善したことが明らかになりました。筋力トレーニングのみ、有酸素運動のみのグループでは、ヘモグロビンA1c値にあまり変化は見られませんでした。しかしこれらのグループは全く運動をしないグループと比較して、胴囲や体脂肪量が低減したことが確認されました。
研究チームは、「今回の研究により、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせたグループは、ヘモグロビンA1c値が改善しただけでなく、血糖降下薬の使用が減少したことも明らかにされた。一方、全く運動をしないグループの投薬量は増加した。こうした結果は両方の運動の組み合わせが、糖尿病患者にとって有益であることを示唆している」と結論づけています。
※1ヘモグロビンA1c(エーワンシー)とは、血糖値の高い状態が続いているときに、血液中のヘモグロビンとブドウ糖が結合してできる糖化タンパク質の一種です。この数値を測定することによって血糖が上手にコントロールされているかどうかを知ることができます。ヘモグロビンA1c値は、過去1~2ヵ月の平均血糖値を表し、最近では通常の検査による血糖値よりも重要視されています。
※2今回の調査では、ヘモグロビンA1c値が6.5%以上(平均7.7%)の糖尿病患者を対象にしています。
出典
- 『Journal of the American Medical Association Vol.304 2010年11月24日号』