子供が野菜を食べてくれませんが
Q&ANo.21
野菜をたくさん摂らなければならないということは分かりましたが、子供が野菜を嫌ってどうしても食べようとしません。何とか食べさせたいと思うのですが、どうしたらよいのでしょうか?
多くのお母さんが、「子供が野菜嫌いでどうしても食べてくれない」と悩んでいます。大人と比べ子供には野菜を敬遠する傾向があります。これまで肉料理と油料理を中心とし、砂糖漬けの間違った食生活を送ってきた子供は例外なく味覚異常を引き起こしています。そうした子供がすぐに野菜を好きになるようなことはありません。現在では野菜が苦手で、めったに食べないという大人も多く見られます。子供だけに野菜を無理強いすることはできません。
子供に野菜を摂らせようとする前に、お母さん自身が野菜を本当に「おいしい!」と感じているかどうか考えてみてください。お母さんが野菜をおいしいと実感できないかぎり、子供に野菜を食べさせることはできません。親が野菜のおいしさに感動していてこそ、子供にそのよさを伝えることができるものなのです。
先日テレビで、四国のある小学校の様子が放映されていました。その小学校の給食では、野菜の食べ残しがまったくないのです。現在の大半の小学校では、給食の野菜を残すことが当たり前になっており、野菜は残飯として大量に捨てられています。しかしその学校の生徒たちは、野菜を全部食べていました。実は給食には、子供たちが校内の菜園で育てた野菜が使われていたのです。
野菜づくりを通して子供たちの心に野菜に対する関心や愛情が芽生え、そうした意識の変化が子供たちを自然と野菜好きにさせたのです。本当に見事な“食育”だと思います。子供たちは野菜づくりをすることで、都会の子供たちに比べ圧倒的に多くの時間を自然と触れ合うことになりました。自然との触れ合いが、人間の持っている“健全な感性”を喚起するようになったものと思われます。テレビで見た子供たちはエネルギーに満ちあふれ、清らかに澄み切った感じがしました。現代の子供たちの野菜嫌いには、先進諸国に共通する快楽享楽主義・物欲肉欲主義といった文明病が大きく影響しています。文明病に侵されていなかった昔の子供や発展途上国の子供たちは、今の日本の子供たちのように野菜を毛嫌いすることはなかったのです。
子供の野菜嫌いの大きな原因の1つが、実は親の間違った食生活にあります。肉好きで野菜を敬遠するような親の姿を見て育った子供は、必ず野菜を敬遠するようになります。食育の大原則は「親の意識が変わる」ことなのです。親がなすべきことは、家庭での食育環境を少しでも整えることです。家庭における健全な食育環境づくりが、子供の野菜嫌いを克服する第一歩となります。子供に野菜を食べさせようと悩む前にまずは親自身が野菜を好きになり、そのおいしさに感動できるようになってください。すべてはそこから始まります。
※米国セントルイス大学の研究(Journal of the American Dietetic Association 2007年4月号にて発表)によれば、自宅の庭で採れた野菜や果物を定期的に摂っている幼児は、庭の野菜を摂ることのない幼児に比べて、野菜や果物を多く摂取していることが明らかになりました。また、庭の野菜を摂取している幼児は、(他の食品よりも)野菜や果物の味を好むことも確認されました。研究者は、「子供により健全な食べ物を食べさせるためには、庭や学校で野菜を栽培することを勧めます」と述べています。