食物繊維と大腸ガンには因果関係がないそうですが
Q&ANo.1
最近の研究では「食物繊維の摂取と大腸ガンには因果関係がない」との見解が出ていますが、どのように考えたらよいでしょうか?
最近の疫学研究では、確かに食物繊維の摂取量と大腸ガンとの間に因果関係がないという報告が数多くあります。しかしこうした研究は、食物繊維の摂取と大腸ガンとの間には、直接的な因果関係はないという可能性があることを明らかにしたものにすぎません。現代人が多食する「肉と食物繊維を組み合わせて摂取した場合に、食物繊維が大腸ガンを防ぐ効果を持っているかいないか?」を明らかにしたものではありません。
そもそも病気と食事の関連については、どこまでも複数の要因を組み合わせたトータル的な判断が必要とされます。「大腸ガンと食物繊維」という単一の因果関係を調べて効果のあるなしを論じても、本質的な結果を導き出すことはできません。欧米型の食事の特徴の1つは「肉食(高動物性タンパク)・低食物繊維」ですが、おそらくは「高動物性タンパク・低食物繊維」という組み合わせが、大腸ガンの発生に結びつくものと思われます。研究では、大腸ガンと食物繊維との関連についてのみ調査し、その間には因果関係がないということが明らかにされただけなのです。「高動物性タンパク・低食物繊維の組み合わせが、大腸ガンを発生させない」という結論に至ったわけではありません。
※英国リーズ大学の研究(International Journal of Epidemiology 2007年2月号にて発表)では、食物繊維を多く摂ると、閉経前の女性の乳ガン発症リスクが半減するという結果が出ています。乳ガンを発症した女性は、ガンを発症しなかった女性と比べて、タンパク質(*被験者のうち7割が肉食でしたので、主に動物性タンパク質であると思われます)の摂取が多く、食物繊維の摂取量が少ないことが報告されています。また同研究で「肉の摂取」が、乳ガンのリスクを上げることも明らかとなりました。(British Journal of Cancer 2007年4月号にて発表)