コラム
想像膨らむ御座候
あれは三十数年前、私がヘアサロンで働き出して間も無い頃のことです。オーナーとお客様が「御座候、とても美味しいですよね。」ってよく話題になっていたのを覚えています。
見習いで、まだまだ助手ばかりだった私はそれを横で聞いては、頭の中に御座候はとても美味しいものなんだいうことが段々とインプットされていきました。その想像はというと、それはそれはもう壮大な大きさに膨れ上がっていってました。
「食べたことないのなら今度買って来てあげるね。」とオーナーは言ってくださいました。そして、すごくすごく楽しみにしていました。
それからしばらくして、「御座候買ってきてあるから休憩の時間に食べなさいね。」と。いつもに増してその日の休憩時間は、たまらなく待ち遠しかったのを覚えています。いよいよです、あの御座候を食べられる時がやって来たのですから。
期待はもうマックスです。がしかしテーブルの上にあの御座候は見当たりません。そこには太鼓饅頭が置いてあるだけなのです。尋ねた私にオーナーは「なんだと思ってたの?」そうです私は、御座候というの名前ばかり先行して、いったいどんな物なのか全く知らなかったのでした。
でも、その御座候はやっぱりとても美味しかったのはいうまでもありません。
今現在、私の店でも、お客様と「御座候、とても美味しいですよね。」ってよく話題になっています。