遊園地

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  3 楽しいクリスマス2  

「ちゃんと出来たのか?」
 部屋に戻ると、お父さんが訊いてきた。
「うん。」
「そうか、じゃ、準備しなさい。」
 心臓がどくんっと痛いくらい鳴り、手に汗が滲んできた。また体が震えるのを感じた。姉はお父さんに見えないように気を使いながら、スカートの中に手を入れて、パンツを少し下ろす。それから、お父さんの側に行き、膝の上に横たわった。
「お・お願いします…。」
「いつも、そんな事を言わないじゃないか。」
「今日は反省してるから。」
「そうか。」
 覚悟を決めている間に、お父さんはスカートを捲り、パンツを膝の辺りまで下ろした。「やる事をやってから行ったんだし、楽しい時は時間を忘れるもんだ。だから、門限破りは今回だけ特別に許す。でも、下らない嘘は厳しくお仕置きだぞ!」
「う・うん…。」
 体が固くなった。目をきつく閉じて手を握り締めた途端、手が飛んできた。ビシッ、バシッ。「痛いっ。」
 初めから、とっても痛かった。いつもなら最初は弱いのに。それだけお父さんが怒っているんだと思えて、怖かった。
 手は、基本的に違う所へ飛んできたけど、2回。3回と同じ所を叩かれる事もあって、きつかった。反省してる気持ちを表そうと黙っているつもりだったけど、とても我慢できなくて、バシッ、バシッと打たれる度に声を上げていた。
「下らない嘘なんかついて!正直に言えばいいだろ!」
「いたっ、ごめんなさい!あん、痛い、痛い!」
「今日は、反省しても泣いても簡単には許さない。二度と下らない嘘なんかつけないようにしてやる。」
 お父さんの言葉に恐怖が倍増した。飛んで来る手はとても痛いし…。いつもなら、もう少し我慢できるのに、今日はもう涙が溢れてきた。
 泣き声がもれたが、お父さんは言葉通りに気にしてくれなかった。もう、我慢しようとか言う気持ちは吹き飛び、暴れたり、泣き叫んだりした。

「これ以上は手がもたないな。」
 お父さんの言葉に、姉は、激しく泣きながら、わたしはお尻がもたないと思った。「久しぶりに、ベルトを使うか…。」
 お父さんはたまに外人になると彼女は思った。遊園地の時の少年に対してもそうだったけど。もうぶたないでと言いたかったけど、それでは反省してると言った気持ちが嘘になる。必死でこらえて、お父さんがお仕置き用ベルトを取りに行くのを見ていた。
 少しして、お父さんが戻って来た。ベルトを見ると、逃げ出したくなった。でも、すぐにお父さんに体を勉強机に押しつけられた。
「じゃ、行くぞ。」
 一打目が飛んでくる。姉は悲鳴を上げた。「そんな殺されそうな声を出すな。」
 お父さんが困惑して言った。酷く打ちすぎたのかとお尻を見たが、そうでもない。
「痛くて…。」
「虐待してるって噂されたら困る。」
「大丈夫だと思うけど…。」
 お父さんは顔をしかめながらお尻をもう一度見た。
「やっぱりまだ許せないな。何とか、我慢しろ。」
「うーん。」
 そんな事を言われても…と思ったけど、お父さんは今のを返事と思ったらしく、背中を押されて、元の姿勢に戻された。ベルトは前と同じ強さで飛んできた。少し声が漏れた。

 それから何度も打たれて、やっとお仕置きが終わった。最後の方は声を上げる元気もなかった。お父さんは、彼女を寝かせると、
「明日の朝食の準備は俺とあの子達でやるから、お前は休んでていい。それと、明日から、3日間、外出禁止だ。」
「分かった。」
 お父さんはそれだけ言うと、部屋から出て行った。

 次の日の朝。お尻が痛くて寝られなかった気もするけど、朝が来たという感じがあるのだから、寝たらしい。枕元に、小さな包みがあった。
「えっ、これってもしかして…!?」
 お尻の痛みも忘れて、座りこんで、包みを開けた。「!!!」

「お父さん、お父さん。」
 ドタドタと走りながら、台所へ入ってきた姉に、お父さんは顔をしかめた。
「こらっ、少しは大人しくしろ。」
 女の子なんだから…では、性差別みたいで嫌だから、こんな言葉になった。
「前、一杯お尻ぶったじゃない!どうして…。」
「何の話だ?」
「どうして、ケータイ買ってくれたの?」
 今日は姉が西洋人になった。つまり、父に抱きついたのだ。「有難う!すっごく嬉しいよ!!」
「アルバイトして、電話料金を稼ぐと言ったし、お前は良い子にしてるから…。」
 お父さんは照れくさそうにしていたが、ふと厳しい顔になり、「でも、使いすぎたり、悪い事に使ったりしたら、お仕置きだからな。」
「大丈夫。ちゃんとする。お父さんが信頼してくれたんだから。」
 姉のはしゃぎように、弟達は、最初は戸惑い顔だったけど、嬉しい気持ちが伝染したのか、皆で笑いあった。

 夜はちょっと豪華に食べに出かけた。帰ってきてから、クリスマスケーキを食べた。今度の休みは何処かへ出かけようと話をした。
「また、遊園地に行きたいな。」
「そうね、今度はお父さんも観覧車に乗って、一緒にお母さんに会いに行こうね。」
「そうだ、父ちゃんも母ちゃんに会おうぜ。」
「遊園地には連れて行くけど…それは…。」
「父ちゃんは、母ちゃんに会いたくないのか…?」
 皆の責める瞳にお父さんは、ついに告白した。
「俺は…高所恐怖症なんだよ!諦めてくれ!」
 弟達は吃驚したが、姉は笑い出した。
「やっぱりね。前の時に怪しいと思ってたんだ。」
「お前、分かってて…。」
 普段と違う態度に子供達は弾けるように笑い出す。そうなると、お父さんも笑うしかなかった。
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