キャラにした兄弟シリーズ

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3 M/m

 4 弟が翼を持つ



「ねー、お兄ちゃん、お仕事楽しいね。」
「……。」
「次は何処へ行くのかな? 第一者様の近くに行ってみたくない?」
「……。」
「第一者様ってどれくらい強いのかな? あの山壊せると思う?」
「……。」
「お兄ちゃんは、大人になってもこの仕事を続けたい?」
「……。」
「耳が聞こえなくなったの?」
「……。」
 弟はため息をつきました。兄は無言で仕事をしています。おじさんにちょっと怒られたくらいでは変わらないようです。つまらない彼は、つい、仕事の手を休めて、兄の腕を引っ張りました。すると、今まで無視を決め込んでいた兄が急に、彼を振り返り、腕をぐいと引き、よろけた彼を押さえつけました。
「お兄ちゃん、構ってくれないんだもん!」
「仕事中に構うのは、あいつ等だろっ。」
 兄は家畜達を指差して怒鳴りました。
「仕事中じゃなくたって喋ってくれないじゃない……。」
 小さく呟く彼を無視して、兄は弟の裸のお尻をぶつのでした。「あーん、痛いーっ。ごめんなさあいっ。」


「後悔しないね? 二度と元には戻れないんだよ。」
「いいよ。」
「結構痛いんだ。」
「僕、痛いのは平気。前にお兄ちゃんが鞭で酷くぶったから。あ、今はしないよ。」
「……じゃあ、本当にいいんだね?」
「お願いします! ……あ、でも。」
「止めるかい?」
「僕、お金がないです。」
「かまわないよ。気にしなくていい。」
「じゃ、お願いします!」
「それなら、全てお脱ぎ。」
「上だけじゃないの?」
「糊でつけるのとは違うんだよ、坊や。」
「はい……。」
 少年は仕方なく、老婆の言う通りに全裸になりました。


 彼は、翼を欲しいと思っていました。空を飛べる人が羨ましかったのです。空を飛べたらお兄ちゃんの役に立つかも知れないし。でも、生まれ持っていない物を付けるのには、特別な力を持つ魔女の所に行く必要がありました。まだ子供の彼には無理な相談です。しかし、なんだか不幸な彼に神様の誰かが同情してくれたのか、旅の魔女に会う事が出来ました。彼女は少しの間だけ遊牧民達と一緒に旅をして守ってもらい、そのお礼として、遊牧民達にその不思議な力で、奇跡を行なっていました。


 弟は魔女へ翼を欲しいと頼みました。魔女は、願いを叶えてくれました。
「うわーいっ、ありがとっ。おばあちゃんっ。」
 少年は魔女に飛びついて、皺だらけの顔にキスの雨を降らせました。
 嬉しそうに走り去る少年を見た彼女は苦笑しました。偉い魔女様におばあちゃんとは……。気を使われないのは久しぶりでした……。

 
「お兄ちゃんっ。見て見てっ。」
 面倒そうにこちらを振り返る兄に、少年は得意げに微笑みます。「凄いでしょっ。」
 兄もたまたま側にいたおじさんも呆然と目を見開き、口をぽかんと開けました。少年の背には、漆黒の翼が……。
「この馬鹿野郎っ!何考えてるんだっ!!」
 久しぶりに思いっ切りのびんたが少年に飛びました。今回、おじさんは何も言いません。
「一緒に喜んでくれると思ったのに……。」
「喜ぶわけないだろっ。子供のくせに勝手なことをしやがって。」
 兄は地面にあぐらをかくと、膝を叩きました。
「お仕置きするの……?」
 兄は無言です。少年は仕方なくお尻を出すと、兄の膝にうつ伏せになりました。兄の平手が弟の小さなお尻を強く打ち据えます。大きな音がします。ちょっとやそっとじゃ許してもらえそうにありませんでした。
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