ふわふわ君

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  番外5 お城へ行く3  

 トゥーリナは、少し開けた所へ出た。立ち止まると、盗賊達の興味を引く程度に殺気を放ち、追ってきた者達が姿を見せるのを待った。
 6人、現れた。その中の一人が、彼の顔を見て、訝しげな表情を浮かべた。近くに居た者がその様子を不思議に思い、彼に訊いた。
「どうした?」
「あいつの顔を何処かで見た気がする…。」
「ただの村人の顔に記憶が?」
 その会話を聞きつけたトゥーリナは、もう誰も出て来そうにないと感じ、言った。
「俺の顔に見覚えがあるって?」
 皆が、彼とその男を交互に見た。
「確かに何処かで…。」
「くくくく…。」
 トゥーリナは笑いながら、右手で左側の前髪をかき上げた。「これなら、思い出すんじゃないか…?」
 数人がはっとし、男が叫んだ。
「第二者トゥーリナッ!!」
「正解。最近よぉ、善人やってるから、血に飢えてるんだ。誰か、この渇きを癒してくれよ。なぁ?」
 トゥーリナが、盗賊達を殺さない程度の強い殺気を放ちながら、1歩前に進むと、皆が、てんでばらばらに逃げ出した。彼は一人に目をつけると、相手の前に回りこんだ。最初に、彼がトゥーリナではないかと疑った男だ。彼はへたり込んだ。

 ひゅっ。振り下ろされた棍棒を間一髪、飛んでかわす。着地地点に拳が繰り出され、蹴りを返す。背中を剣で切り裂かれそうになって、慌てて屈み、ついでに足払いを食らわせた。
 ラークは、3人同時に相手していた。棍棒使いが強く、苦戦していた。相手にもそれぞれそれなりにダメージを負わせていたが、自分の傷の方が重い。これでは負けてしまう。ラークの背を汗が伝った。
 その時、とても強い殺気が森を駆け抜けていった。トゥーリナが放った物だ。
「な・何だ…?」「こんな強い奴、居たか?」「何者?」
 3人組みの気持ちがそれた。ラークも気を取られそうになったが、すぐにトゥーリナの物だろうと気付いて、隙を付いて、一番弱そうな、剣使いに襲いかかった。彼の渾身の一撃を受けた男が倒れた。二人がっはっとして、ラークを見た。二人の体に殺気がみなぎった。

 どさっ。男が倒れた。トゥーリナは口元を拭うと、微笑んだ。
「お前が一番旨そうだと思ったんだ。でも、まだ足りないな。」
 そう、トゥーリナは血が飲みたかっただけだった。第二者の頃は、皆がこぞって飲ませてくれたので、毎日新鮮な血にありつけた。でも、村人になってからは、満足出来るだけの血がなかったのだ。
 トゥーリナの言い方は悪かったが、彼には殺すつもりなんて毛頭ないのである。それでも、元・第二者の名が持つ力を考えれば、気を失った男を責められないだろう。
「さて、次はどいつにするかな?」
 一人では物足りないので、トゥーリナは、目を閉じて気を探った。
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