ふわふわ君

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  番外3 お城へ行く1  

「さっさと準備して来いよ。」
 トゥーリナは言った。「皆待ってるんだからよ。」
「俺は行かないって言ってるだろ!」
 ラークは大きな声を出した。
「俺が来いって言ってるんだぞ?無視する気なのか?」
 トゥーリナの言葉に、ラークは呆れ返って言った。
「…あんたなあ…。村の皆に対等に接して欲しいなら…、その、俺様性格を何とかしろ!」
「なんだよ、その“俺様性格”って。」
「世の中は自分を中心に回ってるって、考える性格の事だ。」
「俺はそんな考え持ってない。」
「持ってるだろうが。」
「持ってねーよ。」
「じゃあ、何で俺が野菜売りに行くって、あんた、決め付けてるんだ?」
「俺とお前は友達だからさ。」
 トゥーリナは当然といった顔をした。
「確かに、あんたのお陰で俺は、立ち直った。が、あんたと友達になった記憶はない!」
 ラークはハッキリと言った。
「じゃあ、お前は俺が一人で、野菜を売りに行けって言うんだな!?」
 ラークの言葉に怒ったトゥーリナを見た一人の若者が、おずおずと、
「…トゥーリナ様、僕達も行きますから…。」
「俺は、もうただの村人なんだ。様をつけるな!」
「ひぃっ、ご・ごめんなさい…。」
「脅すなよ。そんな態度をとっていたら、いつまでも対等になんてなれないって、何回も言ってるだろ。」
 ラークが若者を慰めながら言った。
「ふん!」
 トゥーリナは顔を背けた。「そんな事より、さっさと用意して来い。」
「俺は行かねー。甘ったれてないで、さっさと行って来い。」
 ラークはその場を去ろうとした。諦められないトゥーリナは、やり方を変える事にした。
「ケルラ、お前、お城を見たくないか?」
 ラークの耳がぴくっと動いた。立ち止まって、二人を見る。
「お城?」
 ケルラがトゥーリナを見上げた。トゥーリナは彼をひょいっと抱っこして、続ける。
「そうだ。お城はなあ、大きくて、綺麗で…。」
 語られるお城の話に、ケルラは目を輝かせている。トゥーリナはラークを横目でチラッと見た。
「汚いぞ、ケルを買収するなんて!」
「何言ってるんだ?俺はただケルラに城について教えているだけだぞ。なあ、ケルラ。」
「にゃ。」
 トゥーリナに微笑みかけられたケルラは、にこっと微笑み返す。そして、父を見た。「お父にゃん、お城、見たい。」
 ラークは苦虫を噛み潰したような顔をした。そして、ケルラを抱っこして撫でた。息子には優しく微笑みかけ、トゥーリナをギロッと睨むと、家へ向かって歩き出した。
「急げよなー。」
 トゥーリナはその背に向かって、手を振った。

「ったく、あのガキ!」
 ラークはぶつぶつ言いながら、旅支度をしている。良く分かっていないケルラは、ラークに体を擦りつけながら、お城、お城と歌っている。「ケル、邪魔だから大人しくしてろ。」
 ラークはそういうと、ケルラを抱き上げて、ソファの上に寝かせた。ケルラは丸くなった。
 箪笥の前に行ったラークは、トゥーリナへの不満を更に呟きながら、着替えを出した。それを仕舞いながら、不機嫌な彼は尻尾を振っていた。それを見たケルラは、我慢できなくて、父の尻尾に飛びついた。
「ケル…。」
 ラークは屈み込むとケルラをくすぐり始めた。ケルラが笑い声を上げる。「良い子に出来ない奴は、くすぐりの刑だー。」
「お父にゃん、ごめにゃ。にゃ、にゃ。ごめにゃなさい。」
「どうだ、反省したか?」
 ラークがくすぐるのを止めた。笑い疲れたケルラは大人しくなった。が、すぐ起き上がって、ラークにじゃれつく。ひょいっと抱っこされた。「ケルー。ちったあ、大人しく出来ないのか?」
「にゃん。」
「正直だな。」
 ラークはため息をついた。ケルラが頬をぺろぺろ舐めてきた。彼は舐め返した。ケルラは嬉しそうに笑っている。
「支度は出来たかぁ?」
 トゥーリナが家に入ってきた。「何だ、まだ途中かよ?」
「おー、いい所に来た、無責任男。」
「何だと、誰が無責任なんだよ。」
「ケル、奴の尻尾にじゃれろ!」
 ラークはケルラを下ろすと、お尻をぽんっと叩いて追い立てた。ケルラは言われるままに、トゥーリナの尻尾にじゃれついた。
「おっ、おっ、何だ、何だ?」
「にゃん、にゃん。」
 意味を理解したトゥーリナは、尻尾をケルラが喜びそうな動かし方をした。二人が遊んでいるうちに、ラークは準備を整えた。ラークは、息子を呼んだ。
「ケル、こっちへ来い。」
 遊ぶのを止めて、ケルラは父の側へ走って行く。
「何だよ、今いい所なのに。」
 トゥーリナが不満そうな声を出した。
「靴を履かせてやらないとな。」
「ああ、そうか。」

「じゃ、行ってくるからな。」
 トゥーリナはリトゥナを軽く抱き、頭を撫でた。「俺達が居ない間、皆と協力して村を守るんだぞ。」
「はい、お父さん。」
 リトゥナは槍を構えて見せると、父はニッと笑い、言う。
「頼もしいな。」
 リトゥナは頬を染めて照れくさそうにした。
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