少女ザン

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  番外1 シィーとトゥー6 M/m  

6シィーに質問

 シーネラルはトゥーリナと一緒にお風呂に入っていた。シーネラルはトゥーリナの体を洗ってやっていた。彼はちっとも大人しくしていないが、シーネラルは全く気にしない。
「ねえ、シィー。どうして、シィーの体は傷だらけなの?」
「ずっと戦ってきたから。」
「戦うと傷がつくの?」
 シーネラルは頷きながら、トゥーリナの背中を泡のついたスポンジで軽く擦る。「お湯でしみる?」
「古い傷だから、何も感じない。」
 トゥーリナが立ち上がり、抱きついてきた。肩越しに背中を見ている。
「お尻凄いね。」
「鞭で打たれたから。」
「鞭って痛い?」
「とても。」
 答えながら、腕を擦る。泡まみれになってきたトゥーリナは、シーネラルの背後に回った。
「尻尾が曲がってるよー。これも怪我?」
「生まれつき。」
 トゥーリナを引っ張って、胸やお腹を擦る。
「腕と足はどうして機械なの?」
「仕返しされた。」
「それって、なーに?」
「ある人を殺したら、その人の兄が怒って、俺を滅茶苦茶に切った。」
 目を丸くして、固まってしまったトゥーリナの足を擦る。「俺はその人が嫌いだから殺したけど、その人の兄には関係ないから。」
「ふーん。…シィーは、嫌いだと殺すの?」
「貴族だったら殺すけど、その他の奴は多分殺さない。」
 シャワーをトゥーリナにかけて、泡を流す。「全部落ちた。風呂に入れ。」
「届かないよー。」
 シーネラルはトゥーリナを抱き上げると、湯船に浸からせた。「あったかい。」
「熱くないのか。」
「熱くない。」
 シーネラルが自分の体に取り掛かると、トゥーリナがまた口を開いた。「どうして、鞭でぶたれたの?」
「孤児院から、何度も逃げようとしたから。」
「嫌なとこなの?」
「…地獄だ。」
「それって、怖い所?」
「恐ろしい所。」
 シーネラルは暗い声で答えた。封印しておきたい記憶が甦りそうになった。しかし、無邪気な声が、それを消した。
「今は怖くないね。」
「そうだな。」
 シーネラルは笑った。

 次の日。普段は寝てばかりいるシーネラルに、トゥーリナが飛びついた。
「ねえ、シィー、遊んでよー。」
「…。」
 返事なし。トゥーリナはシーネラルの耳を引っ張った。中を覗き込んで、匂いをかいだ。
「くさっ。」
 普段はあまり触らせてくれないので、ここぞとばかりに耳の毛をいじる。それに飽きると、ふさふさの尻尾に手を伸ばす。撫でたり、毛を引っ張ったりしたが、シーネラルは目覚めない。「むー。起きて、起きて。」
 トゥーリナにはシーネラルの上に乗っかると、彼のお腹の上で飛び跳ねた。だんだん楽しくなってきて、起こすという目的を忘れて、何度も何度も跳ねた。見かねた絵美は注意しようかと思ったが、シーネラルが無反応なので、様子を見ることにした。
 着地位置を間違えたトゥーリナは、シーネラルの大事な所を思い切り踏んだ。さすがのシーネラルも飛び起きた。
「トゥーリナぁっ!」
「シィー、ごめーん。」
 慌てて逃げようとしたけど、あっという間に膝の上に寝かされて、お尻をうんと叩かれる羽目になった、トゥーリナだった。「あーっ、いだー、ごめんなさーい。」

 真っ赤になってしまったお尻を撫でて、トゥーリナは泣き疲れて眠ってしまった。それを見つけたシーネラルは、ため息とともにトゥーリナをベッドに運んだ。
「シィー…遊ぼ。」
「起きたらな。」
 寝言に答えながら、布団をかけてやるシーネラルの顔は、結構幸せそうだった。



2005年04月19日
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