少女ザン番外4 シィーとネスクリ

| 目次

  2 非スパ 途中   

「いい加減にしろ!」
 蛇の怒鳴り声に、クーイを含めた怖い物見たさに集っていた野次馬は、仰天した。「去る者まで追う必要はない!!無駄に殺すな!」
「そうだよねえ…。」
 クーイは呟いた。「何でシーネラルって、逃げようとした人まで追いかけるんだろ?」
「殺すのが楽しいから?」
「そうなのかな…。」
 顔は知らないけど、近くにいた人の言葉に、クーイは唸った。シーネラルはそんな人に思えなかった。
「あの猫、まだ生きてるのに食べてた。盗賊とどっちが悪いの?」
 女の人の声がしたので、クーイはさらに吃驚した。『俺だって、ちょっと気持ち悪いのに、女の人って、こんなシーン見られるの?それに、お尻をぶたれるんじゃないのかな…。』
「よく分からないが、猫はいい奴じゃないな。」
 別の男の人が答えていた。クーイはちょっと複雑な気持ちになった。

 『やっぱり蛇には関わらない方が身のためだな。』生かして帰す事の意味が分からないのに、蛇が怒鳴っているのを聞いて、シーネラルはうんざりした。こっちだって、蛇に言いたい事があるのを我慢してるってのに。人には人の流儀がある。戦闘時、お互いに干渉しないのが礼儀。それなのに、蛇は五月蝿かった。そんな奴は無視するのが一番。シーネラルは、盗賊がどんどん減っていって、好みの鼠で遊べそうなので、それに集中する事にした。
 鼠は一番最初に逃げそうになったので、足を使えなくしておいた。シーネラルが食べ始めたら、この鼠はどんな表情を浮かべるのだろう。すぐに死なないように気をつけなければ。そう考えた途端、シーネラルの腹が鳴った。彼は急ぐ事にした。

 ネスクリはどんなに怒っても、無駄なのに気がついた。猫は聞いてすらいないようだ。脱力しかけたが、盗賊はまだ残っている。あの猫を構おうとした自分が馬鹿だった事にして、存在を気にしない事にした。

 全てが終わった。シーネラルが誰一人逃がさなかったので、30人の死体が転がっていた。いや、29人だ。彼が目をつけた鼠は、彼に生きながら喰われていたのだから…。
 見物人はさすがに皆が気持ち悪かったらしく、手押し車を持ってきた肉屋とクーイ以外は消えていた。
 肉屋は、自分が殺した盗賊を一箇所に集めているネスクリに声をかけていた。値段の交渉でもしているのかな…とクーイは思った。金額が決まったのか、肉屋とネスクリが解体作業を始めた。シーネラルの行為には及ばないものの、これだって、結構胃に来そうだ。生きる為には食べなきゃいけないし、こういう作業に嫌悪感を抱くなんて、馬鹿のする事だけど…、それでも…。
 肉屋とネスクリが淡々と作業をしている側で、シーネラルは鼠を食べている。『俺もいつか、あんな風にシーネラルに食べられるのかな…。出来れば痛くないのがいいな…。』クーイは思った。シーネラルは鼠を犯した。お腹が空いている中で、気持ちが高ぶっていたかもしれないけれど…。『エグいって、ああいうのを言うのかな。あの人は、それさえ我慢すれば助かるかもって思ってた。』でも、シーネラルは、腹を割き、その中に顔を突っ込んだ。丈夫な妖怪である彼は、それでも死ななかった。

 内臓を食べている内に、鼠が死んだ。シーネラルは食べるのを止め、彼の霊体を待った。彼がそうしている間も、ネスクリ達は作業を続けている。
 彼はクーイがまだ居るのに気づいた。他の野次馬はとっくに消えたのに…。彼がついて来ないように、目の前で盗賊を殺した。そうすれば怖がって帰るだろうと思ったのだ。が、目論見は外れ、クーイは面白そうについてきた。
『帰ったらお仕置きだな。』
 クーイの赤く染まったお尻を思い浮かべていると、霊体があがってきた。声をかけようとしたが、ぞっとした顔をした彼は、あっという間に地獄の使者と消えてしまった。
「弁解させろ…。」
 怯えている表情が可愛くて犯してしまったから、謝りたかったのに。何も言う前にいなくなってしまうとは。「俺より地獄の方がましだってのかよ。」
「あの…。」
 顔を上げると、肉屋が立っていた。「貴方が殺した盗賊を買い取らせて頂きたいのですが…。」
「あれと、あれと、それと、これ以外は好きに持って行け。」
「有難う御座います。」
 シーネラルの指差し確認を見ていた肉屋は、嬉しそうに言った。当然、処理できる肉の方が多いのだ。見ていたらしいネスクリが、盗賊達の服を剥ぎ取り始めた。
「やるのは肉だけだぞ。」
 ネスクリが顔をしかめるのが見えた。





2005年05月03日

ネスクリの方が主役っぽいから、タイトルの2人の名前は逆って気もする。
| 目次
Copyright (c) 2010 All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-