学校のお話
14 学校の内情 途中
学校見学を終えて、トゥーリナのお城へ帰ってきた。居間に入る。皆は思い思いの位置に行く。
「今度は人間界の学校へ行こうな。」
ザンが言った。子供達が歓声を上げる。学校の話に興味がなさそうに見えたネスクリは、それを聞いて、気になったような顔をした。
「どの学校に行くんですか?わたしは小学校が一番いいと思うんですが…。」
百合恵が言った。
「和也が行っているところでいいだろ。」
トゥーリナが答えた。和也は何となく、話がかみ合っていない気がした。
「いえ、そうじゃなくて、小中高大のうち、どれに行くのかと思って。」
「何それ?」
ターランが不思議そうに言った。ネスクリもちょっとだけ不思議そうだったが、他の皆はまるで意味の分かっていない顔をした。
「え?だから、小学校、中学校、高校、大学のうち、どの学校を見に行くのかなと思ったんです。」
「人間界って、そんなに沢山の種類の学校があるのかよ?」
ザンが皆の気持ちを代表したような言い方をした。
「あと、専門学校もあります。…妖魔界の中学校は、これに近いんでしたよね。」
百合恵は、中学校を出ていると紹介されたネスクリに微笑みかけた。「そうでしたよね?ネスクリさん。」
ネスクリは困ったような顔をした。和也と百合恵は、なぜ彼が困っているのか分からなかった。
「…その、…俺は、中学で、科学者・医者・軍事・経済コースを選択し、科学者を極めたが…。専門学校というのが何なのかは知らない。確かに、つい最近までは人間界にいたし、学校に通っている奴にとりついたこともあるが、俺は人間界のことを学ぶために行った訳じゃないから、そういうことは分からないんだ。」
和也は、ネスクリが凄い人らしいということだけ分かった。
「そうなんですか…。でも、今の話を聞くと、やっぱり中学校は日本の専門学校でいいみたい。」
専門学校で、科学者や医者の勉強が出来るとは思えないが、ひとつのことを専門に学ぶということに関して言えば、似ていると思っていいのだろう。
「あの…何でそんなに一杯、色んな勉強をしたの?」
和也は聞いてみた。
「科学者は父の命令で、後は、俺が生きていくのに必要になりそうだと思ったからだ。医者は怪我などの役に立つし、軍事は誰か偉い人の部下になった時の為だし、経済は父が商人だったからだが、科学者以外は軍事と同じ理由でもあるな。」
ネスクリの言葉が難しかったが、和也には、彼が自分の為だけではなく、人の為に勉強したのだということが分かった。
「凄いんだね。」
「頑張ったのは事実だが、見下されて腹が立ったのもある。」
「えっ?どういうこと。」
「ザン様達から聞いたと思うが、妖魔界の学校は、貴族や大金持ちなど、ある程度の地位にいる者達の子弟が通う。しかし、当時の俺はしがない商人の息子だった。」
ネスクリは口を閉ざした。それだけでは分からないので、和也が続きを言うのを待っていると、ソーシャルが言った。
「貴族達の中に平民がいたから、皆が嫌がったのね。そして、ネスクリさんはそんな皆を見返してやるのに、勉強を頑張ったってことね。」
偉そうなだけあって、ソーシャルはその感覚が分かるらしい。
「そう。努力の甲斐あって、一番にはなれた。だが、俺はより嫌われた。」
「どうして…? 一番って凄いことなのに。」
ディザナがショックを受けた顔をする。
「勉強が出来なければ、やはり平民だと馬鹿に出来ますわ。でも、そうではなかったので、貴族の方々の誇りが傷ついてしまったのです。…偉い人達というのは、面倒なんですのよ。」
アトルの答えに、和也とディザナは感心した。
「アトルとソーシャルは、勉強しなくてもいいんじゃねえのか。一を聞いて十を知るっつーか…。よく分かるよな。」
ザンがポツリと呟いた。学校のお話4話の時の和也と同じ感想を抱いたらしい。
「立場ゆえですよ。」
ジャディナーが言った。「ソーシャルはお姫様育ちをしているから貴族達の感覚が分かるし、アトルは奴隷だから、一般的な高い地位にいる者の振る舞いを知ってるんです。」
「成る程な…。」
ザンは頷いていたが、和也はそうかな?と思った。前の時のアトルは、奴隷でなくても分からないことを分かっていた。
『今の妖魔界の学校って、嫌な人が多いのかな…。』
校長先生はいい人だったのに…と和也は考えた。
「和也が行っている学校はどれなんだ?」
トゥーリナが言った。