New Arrival! 2

1 僕の気持ち1

「お仕置きだよ?」

 貴女の耳にそっと囁いたら、貴女はどんなを顔するだろう。

 

 僕と彼女が付き合い出して、3ヶ月が過ぎた。今までは、普通の付き合いだった。

 …胸に秘めた思い。

 彼女を愛してる。壊したくない。でも…。

 『貴女をお仕置きしたい。』

 想いが強くなる。

 勘違いしないで欲しい。愛しているからこそなのだ。欲の為ではないんだ。…まあ、少しはあるのを否定しないけれどね。

 

 忙しい二人。たまにしか出来ないデート。だから貴女ははしゃいでた。

「どうしたの?なんだか、君、いつもと違うみたいね。」

「ん?そう?」

 うん、違う。今日こそは貴女を…。前に、遊んだよね?一夜だけの火遊び。僕が知らないと思ってるらしいけど、偶然見たよ。僕が友達と飲み歩いていた時、貴女を。あの後何したの?嫉妬で狂いそうだったよ。

「なんかちょっと怖い顔ね。ストレス溜まってるのかな?」

「そんなの貴女の顔を見れば吹き飛ぶさ。」

「あら、有難う。」

 満足そうに微笑む貴女。そんな眩しい笑顔を見たら、決心が揺らいでしまう。…でも。

「そろそろ行こうか。」

「ええ、そうね。」

 伝票を手に立つ僕と貴女。

 

 ベッドに腰掛けた僕。パジャマに身を包んだ貴女は、床に座って僕の膝に頭を持たせかけて言う。

「泊まっていったら?」

「明日、早いから。」

「そう。」

 悲しそうな表情に、惹かれてしまう。…頑張れ、自分!今はみとれている場合じゃない。「ねえ、もう少し一緒に…。」

「うん。まだいられるよ。」

 嬉しそうに微笑む彼女。その笑顔は、泣き顔に変わるけど…。

 僕は彼女の耳に囁いた。

「お仕置きだよ。」

 座っていた貴女を抱き上げ、膝に横たえた。

「え?え?何する気?」

 ぱあんっと音が弾けた。「きゃ、痛い!」

 ぱあんっ、ぱあんっ。

 

 僕は貴女にじっと見られた。桃色に染まったお尻を撫でる手に、罪悪感が沸いてきて、ほっそりとしたその手をそっととった。

「…。」

 貴女に非難の表情はなくて、僕はほっとする。

「貴女は前に、男と歩いてた。あの日、僕は飲みに行ってて、楽しそうな貴女を見た。悔しかった。」

「…あれは…。」

「何?」

 言いかけて止めてしまう貴女の顔が少し気になって、続きを促してみる僕。

「ううん、何でもないわ…。ごめんなさいね。」

「…僕もごめん。だからって、暴力振るってもいいことにはならないよ。」

 そう…もっと上手くやりたかったのに。…最低だったかも…。

「いいわ。君を怒らせたわたしが悪いから。」

 ぎゅっと抱きつかれ、僕は少し報われた。

「ごめん、もうしないよ…。」

「えっ!?もうわたしには嫉妬しないだけの自信がついたのかしら?」

 悪戯っぽく笑う貴女。…もしかして?…いやいや、都合良く考えたら、今度こそ嫌われるぞ。

「僕達、まだこれからだから。」

「そうね。」

 

 僕は望みを叶えた。優しい貴女に包まれる僕。本当は頼れる男になりたいんだけど、まだまだ年上の貴女に、見守られるだけのようだ。

 

2 貴女の気持ち

 君から初めてのお仕置きをされてから、2ヶ月が過ぎたね。それから2回、通算3回目のお仕置きをさっき受けた。

 お尻がとても痛くて、わたしの涙が止まらない。でも、もう君はおろおろしない。わたしが泣き止むのをじっと待ってる。すっかり強くなった君。わたしは満足よ。でも、今は言えないよ。この気持ち。

 

 君はわたしに囁いた。

「お仕置きだよ。」

 あの時、わたしの時が止まったの。夢が叶う日が来るとは思っていなかったから。

 君を見上げるわたしの顔が無防備な幼い顔だったって、あの時の君は気付いたのかな。多分気付いてないよね。だって夢中でわたしのお尻をぶっていたもの。

 

 わたしが叩かれたいキーだって、君は少しも勘付いていないよね?君が叩きたいカーだったなんて、わたしがこれっぽっちも想像しなかったように。

 今は強い君。でも、もし君が、ノーマルなわたしを叩いているのに悩む日が来たら、打ち明けるよ。

 

 泣き止んだわたしを抱き締める君。暖かな腕に、わたしの心は落ち着いていく。言ってしまいたいけど…けど、言えない。君の心変わるの怖いから。

 君が思っているほど、わたしは大人じゃないって知ったら、君はもっと自信を持てるのかな。年下ってこと、わたしは何も気にしてないけど。

 

 初めてお仕置きされた理由、君の勘違いだったって、いつかばれる日が来るのかな。あの時歩いてた相手は弟だったのよ?

 急に君が休みの日に、わたしも休みが取れたから、喜び勇んで電話かけたら、

「ごめん、友達と約束したんだ。」

「そう、急だったものね。」

「ほんとにごめん。いつか必ず埋め合わせするよ!」

 君は喜んでた。我が侭言って困らせた方が可愛いかったかもね。でも、そんな性質じゃなくて。

 やけ食いでもしようかしらと考えてたら、弟が転がり込んできた。

「ねーちゃん、わりぃ。二万貸して。あると思ってたら、財布空っぽでさ。」

「貸すのいいけど、付き合いなさいよ。今日暇なの。」

「はいはい。また女だからって差別でもされた?可愛い彼にでも慰めてもらえばいいのにさ。」

「余計なことを言うと、貸さないわよ。」

 仕方ないなと言う弟と、わたしは町に繰り出したのよ。

 

「もう、しちゃ駄目だよ。貴女って、時々子供のようになるね。」

「そんなわたし嫌?」

「貴女の別の一面は、心地いいよ。それだけ、僕達が深くなってるってことだから。」

 ほっとするわたし。

「君の別の一面も見たいわね。」

「そうだね。」

 

 今のままで幸せだけれど、このままでいられるのかしら。

 

3 僕の気持ち2

 時々不思議になるよ。お仕置きだよとその形のいい耳に囁くと、ほんの少しだけ嬉しそうに染まる頬。ねえ、貴女はもしかして叩かれたいキーなのかな?そうなら、僕の心は楽になるんだけど。それとも、これは僕のそうだったらいいと思うただの願望?

 嫌われるのが怖くて、貴女の怒る顔を見たくなくて、僕はただ黙ってる。

 

「この頃、鬱?」

「どうしてそんなことを聞くの?」

「君、暗いよ。」

「誰にも話せない、深い深い悩みがあるんだ…。」

「わたしにもあるわ…。」

 貴女の切ない顔が僕の悩みを吹き飛ばす。

 

 そして。

 

 僕達は深く結ばれた。話し合ってみると、笑い種だった。お互いがお互いに不安がっていたなんて。僕達は、もう心置きなく、スパライフを楽しんでいる。

 それでも、幼い僕は、貴女を可愛い彼女のようには守れない。だからこそ、年上の人が彼女なのかな?

 

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